希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

本年度最後のゼミ

1月27日(水)、本年度最後の学部ゼミが行われました。 少数言語問題から見た中等英語科教育の問題点 3年生2人によるプロジェクト研究発表「少数言語問題から見た中等英語科教育の問題点」は、たいへん気合いが入ったもので、年度末を飾るにふさわしいもの…

もしも教科書検定制度がなくなったら

大学入試センター試験の「追試」とともに、2010年の1月も終わろうとしている。 今日の追試では、受験者5名に対して、学長と全学部長以下30人を超すスタッフで対応した。 駐車場管理の担当者は、寒風の中、ずっと立ち通しだった。お疲れさま! さて、1月も…

懐かしの英語参考書(19)高村勝治『解明 英文解釈』

1月は1年で最も忙しい月だ。 年度末の授業に加え、院生の修論指導に学生の卒論指導。 それも終わり、今日は授業もなかったので年休をとった。といっても、明日土曜日に実施される推薦入試業務の代休だが。 おかげで今日は、今年1年の研究計画を文章化し、…

懐かしの英語参考書(18)2つの『チャート式英文解釈』

○ 鈴木進・今関敦著『チャート式シリーズ 英文解釈』(1972) ○ 荒木一雄編著『チャート式シリーズ 構文中心 新英文解釈』(1978) 英語に進出したチャート式の実力 「チャート式」と聞いて、「ああ、むかし使ったな」と思う人は多いだろう。 赤と黄色を基調…

懐かしの英語参考書(17)河村重治郎・吉川美夫・吉川道夫『新クラウン英文解釈』

河村重治郎・吉川美夫・吉川道夫『新クラウン英文解釈』(三省堂、1969) 三省堂を代表する英語参考書の名著 三省堂(さんせいどう)といえば、1881(明治14)年創業の歴史ある出版社。英語の辞書や教科書の分野でも定評がある。 その三省堂の英語分野でのト…

明治期の英語入試問題(現物)

明治37年高等学校大学予科入学者選抜者試験問題 英文解釈の参考書の歴史をたどっているが、こうした参考書を研究する際の前提条件がある。 入試問題の変遷史である。 すでに見てきたように、日本では「英文解釈」の参考書が発達し、その技術が研ぎ澄まされて…

懐かしの英語参考書(16)芹沢栄『英文解釈法』

工芸品のような完成度のロングセラー 芹沢栄『英文解釈法』(金子書房、三訂版1958) 大好きな参考書だ。 眺めているだけで惚れ惚れする。「美しい」のである。 表紙は金子書房らしい黄色基調の簡潔なもの。 美しいのは中身だ。 229問ある例題がすべて1ペー…

懐かしの英語参考書(15)原仙作『英文標準問題精講』

出典研究の第一人者による頻出問題の宝庫 いよいよ大御所の登場だ。 原仙作『英文標準問題精講』(略して「原仙の英標」)といえば、1933(昭和8)年の初版以来、英文解釈分野では受験生のアイドル(?)的参考書だった。(写真左は1954年版、右は1982年版…

「英文解釈」という用語の登場

懐かしの英語参考書(12)で、日本で最初に「英文解釈」と銘打った参考書が梅澤壽郎『英文解釈法』(1905:明治38年)だと紹介した。 しかし、「英文解釈」自体はそれ以前から教えられていた。 いつ頃から「英文解釈」という用語が登場したのだろうか その謎…

懐かしの英語参考書(14)宮崎孝一『英語長文解釈の完全研究』

「長文解釈」と銘打った唯一の参考書 戦後の大学入試英語の一つの傾向は、長文化したことである。 そのため、早くは1950年代初めから、これに対応した参考書が出ていた。第6回で紹介した佐山栄太郎『最新英文解釈』(1951)や、第2回の成田成寿『高等英文…

東後勝明監修『必携 英語発音指導マニュアル』(北星堂 2009)

田邉祐司先生(専修大学)が、東後勝明監修・御園和夫ほか編集『必携 英語発音指導マニュアル』(北星堂、2009、本体3,500円)を贈ってくださいました。 田邉先生をはじめ、総勢20人による労作です。→Amazon とても良くできた本なので、ご紹介します。 発音…

伊藤和夫の命日に

ある先生の論文を読もうと思って書斎に入ったら、伊藤和夫の『予備校の英語』(研究社、1997)が目にとまった。第一級の英語教育論で、大好きな名著だ。 そう言えば、研究社の月刊誌『現代英語教育』に伊藤和夫特集があったことを想い出した。 あった。1997…

受験英語と参考書研究の意義:お見舞いへのお礼を兼ねて

複数の方から、コメント欄やメールでお見舞いをいただき恐縮しています。 ありがとうございました。 タミフルの劇的な効果で、思ったよりもずっと楽に過ごせます。 入試委員長として、これからの時期は休めませんので、「早めにかかってよかった」と思ってい…

懐かしの英語参考書(13)荒牧鉄雄『現代英文解釈』(三省堂)

先日のセンター試験の監督があまりにキツかったのか、体調を壊した。 念のため医者に行ったら、なんと新型インフルエンザにかかっているとのこと。 1月22日(金)まで出勤停止。なんと! 卒論の追い込み時期に、学生にはたいへん申し訳ない。 噂のタミフルを…

懐かしの英語参考書(12)梅澤壽郎『英文解釈法』

「英文解釈」と銘打った最初の本 日本で最初の英文解釈の本は何だろうか? 英語教育史の研究者の間では南日恒太郎の『難問分類英文詳解』(ABC出版社、1903:明治36年6月26日発行)が有名だが、それ以前にもたくさんの英語参考書や英文解釈の本があったこと…

英文解釈から見える英語教育の「退化」:お返事を兼ねて

修士論文指導と卒業論文指導と入試委員長の仕事でバタバタしているうちに、たくさんのお便りをありがとうございました。お返事を兼ねて、少し書かせてください。 tok*se1さん、ポッピーママさん、やまぐちさん、奈良さん、お便りありがとうございました。 「…

懐かしの英語参考書(11)竹原常太『新英文解釈法』

統計的・科学的な手法を取り入れた画期的な英文解釈書 竹原常太(1879~1947)は、畢生の大作『スタンダード和英大辞典』(1924)の著者として英語教育史の業界では有名だ。 この辞書は、彼が米国留学中から集めた用例をもとに編集した辞書で、1つひとつの…

懐かしの英語参考書(10)青木常雄の英文解釈書(その2)

英文解釈の完成をめざすハイレベル参考書 青木常雄の英文解釈参考書(その2) 今回は単著の『英文解釈の研究』培風館、1955(昭和30)年9月20日初版発行、写真は1960(昭和35)年4月20日の初版第16刷。1962(昭和37)年には改訂版も出ている。 「本書は先に…

懐かしの英語参考書(9)青木常雄の英文解釈書(その1)

3連休は英語教育史学会の論文審査委員会、理事会、研究例会、飲み会で東京。 戻るとすぐに、月刊『英語教育』3月号のために寺島隆吉先生の『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』(明石書店)の書評を書く。先ほど編集部に送った。ふー。…

懐かしの英語参考書(8)太平洋戦争下の『英文分析解釈法』

明日から3連休。 なのに、この3日とも日本英語教育史学会の月例会や役員会に出席するため上京・・・。 →例会案内 その前に、大急ぎで紹介したい英語参考書がある。 太平洋戦争下の1942(昭和17)年7月に刊行された甲斐一郎著『英文分析解釈法』(建設社)である…

エリゼミ通信 2008.12.9

門ちゃんの体調不良で遅れていましたが、12月9日のゼミ通信LaLaLaが届きましたので、アップします。 今年のゼミは1月6日の卒論指導から既にスタートしました。 正月休み返上(?)で執筆した人も多かったようです。 ポイントは、先行研究をそのまま取り込ま…

懐かしの英語参考書(7)深澤由次郎『応用英文解釈法』

戦前の英文解釈参考書が続いたので、今回は戦前に出版された英文解釈参考書史上「最大・最強」の本を紹介しよう。 深澤由次郎著『応用英文解釈法』(1918〔大正7〕年7月4日初版、有朋堂書店発行)である。 同書は1923(大正12)年の関東大震災によって絶版…

Fenderのアンプ

自宅での練習用に、ギター・アンプを買い換えた。 Fender Frontman 15R 小さいながら、実に良く鳴る。 ディストーションの歪みも充分で、リバーブの効きもいい。 とりわけ、同じFenderのTelecaster(写真左)と組み合わせると、特に高音部の美しさが抜群だ。…

懐かしの英語参考書(6)佐山栄太郎『最新英文解釈』

戦後の長文化に対応したハイレベルの英文解釈書 佐山栄太郎といえば、2008年に復刊された山崎貞の名著『新々英文解釈』の改訂者として記憶されている方も多いと思う。 しかし、佐山自身の英文解釈参考書については、今ではあまり知られてはいないのではない…

懐かしの英語参考書(5)柴田徹士『英文解釈の技術』

大阪大学教授で『アンカー英和辞典』(1972;学研)の編集主幹だった柴田徹士は努力の人だ。 柴田は1910(明治43)年に香川県に生まれ、10人きょうだいの長男として昼間は家業の豆腐屋を手伝いながら、夜間の商業学校を卒業。2年後の1930(昭和5)年に難関…

懐かしの英語参考書(4)高梨健吉『英語の構文150』他

英語参考書は、日本人の英語力を養う上で大きな役割を果たしてきた。 なのに、「日陰者」扱いだ。 図書館にもほとんど保管されることなく、使用者の記憶と共に消えていく。 だからこそ、記録にとどめておきたい。 2010年も、どんどん紹介していく。 本年は、…

本年もよろしくお願い申し上げます

新年明けましておめでとうございます。 昨年は「平等と協同」の教育に向け、扉が少し開いた年となりました。 この扉を押し広げ、希望に満ちた1年にいたしましょう。