希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「外国語教育の4目的」の50年(5)

9月29日は、和歌山大と福井大の連携によるフォーラム「成長し続ける教師を育てる-制度と支援のあり方を考える」が開催され、たいへん充実した1日でした。 生涯にわたって学び続ける教師を育てるためには、大学における教員養成は4年間だけで終わり、あと…

「外国語教育の4目的」の50年(4)

第3回で紹介した1970年の「改訂4目的」をめぐっても、のちに批判的な検討が加えられました。 私がこの「4目的」を初めて目にしたのは、大学院生だった1990年ごろでした。 学部では社会科学を専攻していたこともあり、第1目的の「外国語の学習をとおして、…

「外国語教育の4目的」の50年(3)

第1回で述べたように、英語教師たちの長い議論の末、1962(昭和37)年に「外国語教育の4目的」が確立されました。 3年後の1965年には、ユネスコの公教育会議が「中等学校の外国語教育に関する各国文部省への勧告59号」を提出し、その中で外国語教育の目的を…

「外国語教育の4目的」の50年(2)

「ロイ・オービソン」さんから、本質にかかわる素晴らしい書き込みをいただきました。 コメント欄は500字が限度ですので、こちらで私見を述べさせて頂きます。 臨時教育審議会(1984-87)以降の新自由主義・市場主義的な教育改革(改悪)のなかでも、英語科…

「外国語教育の4目的」の50年(1)

誰のための、何のための外国語教育なのだろうか? 聞く、話す、読む、書くといった技能を伸ばすだけで、学校教育としての外国語教育は目的を達成できるのだろうか? もし技能習得だけでいいのであれば、街角の英会話学校とどう違うのだろう? 教育基本法(19…

英語科協同学習に関する研究会(10月6日・和英研)

9月21日はゼミ生の卒業式(前期)でした。 梅ちゃん、本当におめでとうございます! Facebookにも載せましたが、とってもめでたい感じを顔で表現しました。 さて、和歌山英語教育研究会の第3回例会は、中学校英語科における協同学習の実践をふまえた研究発…

2010年度の英語教育界を振り返る(5)

「2010年度の英語教育界を振り返る」も第5回、いよいよ最終回です。 こうして過ぎ去った日々の記憶と記録をたどってみると、今日に通じる様々な問題の萌芽や源泉が見えてきます。 ずっと提起され続けてきたのに、いまだに解決していない、しようとしていない…

2010年度の英語教育界を振り返る(4)

9月15-16日の広島市での学会出張から帰り、すぐに新著『協同学習を取り入れいた英語授業のすすめ』(仮題)の2校を終えました。 11月発売予定ですので、最後の追い込みをがんばります。 同時並行に、日本における外国語教育政策の研究も進めているのですが…

秋の安芸の宮島

9月16日に広島で開催された日本英語教育史学会に学生・院生と出席してきました。 よく学び、よく遊ぶがだいじ。 なので、学会のもう一つの魅力は、飲み会と観光! ようやく秋の気配が漂うなか、安芸の宮島・厳島神社に行って来ました。 海に浮かぶ朱塗りの本…

2010年度の英語教育界を振り返る(3)

ゼミで嬉しいニュースが続きました。 50倍を超す公務員試験に挑んでいたD君が、みごと合格を決めました。 難関だった東京大学大学院教育学研究科の入試に、本日、A君が合格を決めました。 日本英語教育史を専攻する予定です。 みんな巣立っていくのは寂しい…

福島県の子どもの甲状腺検査で36%に異常を発見、なのに!

福島県、子供の甲状腺検査で36%に、異常を発見 前編 福島県、子どもの甲状腺検査で36%に異常を発見。 なのに、福島県立医大の山下俊一教授(副学長)らは具体的な情報を隠し、再検査を妨害し、データ利用を強制するなど、福島の子どもを被ばくの実験材料にし…

2010年度の英語教育界を振り返る(2)

「2010年度の英語教育界を振り返る」の2回目です。 6月 小学生の11%が英会話教室に 「英会話などの語学教室に行っている」と回答した子どもは、小学生が約11.2%、中学生が7.2%、高校生が1.5%で、英語学習に励む小学生の多さが目立つ。 2010年6月に発表…

2010年度の英語教育界を振り返る(1)

未来の英語教育の良くするためには、これまで何が行われてきたのかを正確に把握する必要があります。 その意味で、大修館書店の雑誌『英語教育』10月増刊号に毎年載っている「英語教育日誌」は貴重です。 2009年度分までは、長らく伊村元道先生(元玉川大学…

伝説の傾いたラーメン店「まる豊」探訪記

和歌山ラーメンの伝説のお店「まる豊」をご存じでしょうか? 失礼ながら、掘っ立て小屋のようなボロい建物で、築67年。 傾き角度は12度を超えます。 そのため、玄関は自然の「自動ドア」で、開けると、あとは重力で勝手に閉まるのです。 紀ノ川に近いため、…

パウロ・フレイレの「希望」論

本ブログ「希望の英語教育へ」は、2009年9月1日が誕生日ですから、やっと3歳になったところです。 可愛い盛りとも言えますが、要するに未熟です。 でも、未熟であることは、今後に豊かな可能性を秘めているということです。 よね。(^_^ 「希望」というのは…

批判的英語教育学へ

競争と格差の「新自由主義教育政策」に抗する上で,「批判的教育学」(Critical Education)の知見は欠かせない。 この分野では,以前にも紹介したが,マイケル・W・アップル,ジェフ・ウィッティ,長尾彰夫編『批判的教育学と公教育の再生:格差を広げる新自…

格差に抗し,全員を伸ばす英語教育へ(7)

「格差に抗し,全員を伸ばす英語教育へ」と題したこの連載も,今回でひとまずお開きです。 でも,このテーマに関しては本来は「終わり」はありません。 格差や差別がなくなるまで,闘いに終わりはないからです。 競争と格差,1%の幸福と99%の不幸を招く「…

格差に抗し,全員を伸ばす英語教育へ(6)

本日9月1日,ブログ開設3周年を迎えました。 これからも,どうかよろしくお願い申し上げます。 さて,外国語(英語)教育に関係する新学習指導要領の特徴と問題点について,簡単に述べたいと思います。 (1)小学校の新学習指導要領 2011年度から外国語活…