希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

刀祢館正明著『英語が出来ません』は面白いです

朝日新聞記者(元編集委員)の刀祢館正明さんが、新著『英語が出来ません』(KADOKAWA、1,870円)を出されました。

刀祢館さんからは何度も取材を受け、本書でも取り上げられているご縁でお贈りいただきました。

実に面白い本です。

読み始めたら止まらないくらい、グイグイ引きつけられます。

文章がとても読みやすい。

しかもジャーナリストならではの視点から、日本の英語教育が抱える問題点、日本人と英語との格闘、そして英語に翻弄され続ける哀しい姿が描かれています。

日本人と英語の係わりの本質的な問題を考えさせられます。

「大学入試にTOEFLを」をめぐっての、教育再生本部長だった自民党遠藤利明衆議院議員と僕との朝日新聞紙上での論争(2013年5月1日)も全文収録され、問題点が浮き彫りにされています(34-47ページ)。

例の「大学入試に英語民間試験導入」問題はここから始まったのです。

あの記事の直前に、僕は鳥飼玖美子さん、大津由紀雄さん、斎藤兆史さんと「4人組」を結成し、大学入学共通テストへの民間試験導入に反対する取り組みを始めたのでした。

コロナ前は毎年、各地で講演・シンポジウムを開催し、4冊のブックレットを出版。

『史上最悪の英語政策』(2017)を出され、今回の刀祢館さんの本の推薦文を書かれている阿部公彦さん(東大)も合流してくださり、民間試験導入問題の危険性が徐々に浸透していきました。

すったもんだのあげく、結局2019年11月に萩生田文科大臣は導入「延期」を表明、そして2021年に「中止」に追い込まれました。

「大学入試にTOEFLを」などと言いだした遠藤さんたち政治家は、どう責任を取るのでしょうか。

責任を文科省に押し付けて、政治家はだれも責任を取りません。

だから素人政治家が専門知を要する教育政策に首を突っ込んではダメなのです。

などということを、刀祢館さんの本を読みながら考えました。

読みやすく、しかも鋭く問題点をえぐり出している『英語が出来ません』を広くお勧めします。

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