希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(5)

「はじめに」で2つの基本原理(前述)を提示したあと、いよいよ「第1章 文の基本要素」でそれらの原理を適用させていく。

冒頭には「この章の課題」が置かれ、目指すべき目標が鮮明に示されている。
しかも、各章の末尾には「この章のまとめ」が置かれ、小活しながら次の章へ進む構成になっている。
親切だ。

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「S+Vの形が英文のもっとも単純な形である」として冒頭に置き、つぎにその発展形である「S+V+X」へと進む。

この第3の要素である「XがCであるか、Oであるかを見分けることは、英文解釈の上できわめて重要」として、その見分け方を詳しく説明している。

ただ、このあたりの展開は後年の『英文解釈教室』よりもあっさりとしている。

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例文、解説とも、後の『英文解釈教室』と比べると基礎的な事柄から展開している。高校用の教科書からも例文が採られている。
高校1年生から使える参考書を目指したのだろうか。

また、「日本語と比較しつつ考えてゆく」としている。
後年の伊藤の作品では、「英語→事柄→日本語」という流れをいっそう追求し、読解における日本語への依存をいかに削ぎ落とすか、という方向性が強まるのだが。
(ただし、日本語を必要な限りで有効に活用することを推奨している。念のため。)

たとえば『英文解釈教室』では、In the house stands・・・・という文の「Inという前置詞は、『・・・の中に』という意味をもつほかに、the houseが主語でないことを示す働きをしている」といった直読直解法を意識した鋭い記述が冒頭から出てくる。

11ページからの練習問題は10問付けられている。
いずれも2行程度の短いもので、基礎的な内容である。

(つづく)