希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

現役最後 2021年3月の私の講演・研究発表

定年退職前の3月は年休を消化して旅行でも行こうと思ったのに、ふと気づくと講演やら研究発表やらが一杯になってしまった。4月こそ・・・

 

320日(土)

日本英語教育史学会第282回研究例会 Zoomによるオンライン開催

14:00~17:00(私たちの発表は後半15:30頃から)

 

発表テーマ:「広島文理科大学『英語教育』(1936〜1947)における英語教育論」

上野舞斗先生(四天王寺大学)との共同発表。

 

要旨:

広島文理科大学英語英文学研究室/英語教育研究所編『英語教育』(1936〜1947年、全40冊+特輯号2冊)は、「英語教育」を冠した初の専門誌であり、研究論文、中等学校での実践報告、英語教育時評など、貴重な資料の宝庫である。この「忘れられた英語教育雑誌」の学術的価値と今日的意義を明らかにしたい。発表では、英語教育の論考に絞り、主要な執筆者、論考のテーマ、特徴的な内容について報告する。そのために総目次を作成し、執筆者や内容ごとに分類し、全体像を量的・質的に把握する。それを踏まえて、掲載頻度の高いテーマおよび英語教育史に関連する論考に焦点を当て、特徴を考察する。

 

問合せ:  日本英語教育史学会例会担当reikai(at)hiset.jp(at) を @ に変えてください。

学会ホームページ:  http://hiset.jp/

 

3月21日(日)

島根県職員組合の教育講座 13:00〜17:00

隠岐島文化会館+Zoomによるハイブリッド開催

 

講演「協同学習と英語教育をどうすすめるか」(江利川春雄)

 

コロナ禍だからこそ、仲間と関わり合い、豊かな人間性を育む協同的な(英語)教育をすすめましょう。各地の優れた実践から得たエッセンスを画像を交えてお話し、日々の授業づくりのために共有しましょう。

 

詳細は、

https://shimane-kenkyoso.jp/information/383

*申込みのメールアドレスに誤りがあり、正しくは kenkyoso@d5.dion.ne.jp のようです。

 

3月28日(日)

2020年度第3回和歌山英語教育研究会 14:00~16:00(13:40からアクセス可能) *原則Zoomによるオンライン開催

 

江利川春雄最終講義「英語教育における協同学習の意義・方法・課題」

 

これまでの私自身の英語教育との関わりをを振り返り、いっぱい脱線しながら、英語教育と協同学習への熱い思いを語ります。

 

参加費:無料(要予約: 3月25日(木)22:00までにお申し込み下さい )

詳細、申込みは、

https://sites.google.com/view/wakayamaenglish

事務局: waset2@gmail.com

 

3月30日(火)

第25回(2021)日本英学史学会東日本支部研究大会 Zoomによるオンライン開催

大会テーマ「学校英語教育の歴史(文部省設置150年記念)」

 

特別講演(13:30-14:50)

「文部省の英語教育政策史:英語教員養成・研修を中心に」(江利川春雄)

 

要旨:文部省設置150周年を記念して、明治以降の文部省による外国語教育政策を概観し、英語教員養成・研修政策に焦点をあててお話しします。特に、これまで未解明な点が多かった文部省主催中等英語教員講習の実態について、科研研究に基づく最新の知見を報告します。なお、主催者の意向をふまえ、私自身の研究史的な歩みを振り返るなどという「脱線」もしながら、あまり堅苦しくなくお話しできればと考えています。

 

会員以外の方で参加希望の方は、小島和枝先生までメールをお送り下さい。

kkojima@ner.takushoku-u.ac.jp

詳細は、

http://eigakushi.org/25taikai.pdf

 

 

鳥飼玖美子さんより新著『よくわかる英語教育学』ミネルヴァ書房,本体2500円)をお贈りいただきました。

「よくわかる」とあるように,とてもわかりやすい書き方をされており,註,文献紹介,索引も実に親切です。

なにより,内容がすごい。
入門用と甘く見るなかれ,中身は最先端を行く,きわめて内容の濃い,また実に刺激的な項目が盛り込まれています。
たとえば,CEFR増補版,AIと英語教育,協同学習,言語と権力,英語帝国主義,政治と経済主導の教育改革,オンライン授業などです。
私が読んでもワクワク・ドキドキですから,これから英語教育を学ぶ人たち,特に教員志望の学生たちにぜひ読ませたいです。
ということで,来年度も和歌山大学教育学部大阪大学国語学部で担当する英語科教育法のメインテキストにします。
ぜひ,お読み下さい。感動しますよ。

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謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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2020年度ゼミ生と

今年3月で和歌山大学を定年退職します。

好きな研究に専念したいところですが、後任補充がなく、ゼミ以外の科目を非常勤として引き続き担当します。

大阪大学国語学部の授業も継続となり、新キャンパスが楽しみです。

新型コロナによる環境の激変を新たな学びのチャンスと捉え、前進しましょう。

 

2021年元旦

江利川 春雄

広島文理科大学『英語教育』(1936〜1947)復刻

日本で初めて「英語教育」を冠した専門誌『英語教育』(1936〜1947年、全9巻40冊+別冊特輯号2冊)の復刻版第Ⅰ期1-5巻を、2020年11月、ゆまに書房より刊行することができました。
原本は、東の東京文理科大学(現筑波大学)と並び、英語教育研究の一大拠点だった広島文理科大学(現広島大学)の英語英文学研究室/英語教育研究所の発行です。
当初は月刊で市販されていましたが、戦時下での困難な状況の中、年4回発行の会員配布のみとなり、広島原爆による資料焼失も重なって「幻の英語教育雑誌」となっていました。
そのため、全巻を揃える図書館はなく、その質的水準の高さからも復刻が俟たれていました。
このたび、広島大学名誉教授の故・松村幹男先生の旧蔵書で私の所蔵分の欠号を補うことができましたので、完全復刻にこぎ着けることができました。松村先生の学恩に感謝申し上げます。
後半の第Ⅱ期分は、総目次、解題、索引を付して、2021年4月刊行予定です。
英文学・英語学・英語教育が三位一体となったユニークな雑誌で、質の高い論考に加え、調査報告、書評、座談会、人事記事など、実に面白いです。
ぜひご活用ください。

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復刻版『英語教育』第1期
内容の詳細・カタログ等はこちらをご覧ください。

 

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11月13日(金)、大阪府柏原市で久しぶりに講演します。

演題:「子どもが喜ぶ小学校外国語学習&活動と、英語を日本人が学ぶ意味」

日時:11月13日(金)19:00~21:00

場所:柏原市民プラザ6階(JR関西本線柏原駅」徒歩3分、近鉄大阪線「堅下」駅西へ徒歩10分)

ぜひ、楽しく交流しましょう。

 

 

日本学術会議新規会員任命拒否の撤回を求める声明(日本英語教育史学会)

 
日本学術会議新規会員任命拒否の撤回を求める声明
 
2020年10月11日
日本学術会議協力学術研究団体  日本英語教育史学会
会長 江利川 春雄
 
第25期日本学術会議の新規会員の任命に際し、日本学術会議が推薦した105名の新規会員候補者のうち6名に対し、内閣総理大臣は、何ら具体的な理由を示すことなく、任命を拒否しました。
 
この行為は過去の政府方針に反するものであり、政府による任命権の恣意的な運用に道を開く危険なものです。何よりも、日本学術会議の独立性・中立性を損ない、日本国憲法が保障する学問の自由を侵害し、研究者を萎縮させる不当な行為であると考えます。
 
私たちは内閣総理大臣に対し、今般の任命拒否を決定した理由を開示するとともに、速やかにその決定を撤回し、6名の候補者を会員に任命することを強く求めます。
 
(付記)この会長声明は日本英語教育史学会理事会の承認を得て発表するものです。

大谷泰照著『日本の異言語教育の論点』刊行!

大谷泰照先生から御新著『日本の異言語教育の論点:「ハッピー・スレイヴ症候群」からの覚醒』(東信堂、本体2,700円)をいただきました。

日本の異言語教育の論点 - 東信堂

深く共感・感動しながら最後まで読ませて頂きました。

 

この本は、大谷先生が積年訴えてこられた異言語教育論の集大成です。

とりわけ、日本の異言語教育(特に英語教育)が抱える問題点を考える上での根本的な観点である「言語・文化的環境」と「国の教育政策」に焦点を当て、対症療法ではなく原因療法に取りかかるべきだという主張が、豊富な資料(エビデンス)と明快な論理で説得的に展開されています。

感服しました。

 

その上で、責任を単に政府・文部(科学)省に求めるだけではなく、「教育、とりわけ異言語教育の最大の障害は、国の教育政策の欠陥よりも、むしろそのような教育政策に対する教育関係者の無関心そのものであると考えるべきではないか」(122ページ)と、おそらく身を切るような思いで、問題提起されています。

私自身、このことを言いたくても言えない、言うだけの理論的・実践的貢献ができていない、そんなモヤモヤ感を抱いていたのですが、大谷先生はきっぱりとおっしゃいました。

今の日本の異言語教育界で、誰をも納得させる形で、責任を持ってこの発言ができるのは、大谷先生だけではないでしょうか。

千鈞の重みがある言葉だと思います。

「民主主義の最大の敵は、専横な権力よりも、むしろそのような状況に対する一般民衆の無関心そのものである」(122ページ)。

これも重い言葉です。

安倍政権がなぜこれほど長く続き、安保法制、モリカケ桜疑惑、官邸主導による政府の私物化、果ては新型コロナへの無策を許してしまったのか。

私たちの側の責任と自己批判を問う重い言葉です。

 

もちろん本書では、教育関係者に声を上げにくくしている要因の一つである過酷な労働環境、それをもたらしている教育への公的負担の僅少さ、クラスサイズの過大さなどについても先生独自の調査結果も交えて、具体的に指摘しておられます。

マルクスは、労働者の自由な時間の獲得こそが社会改革運動の根本条件であると言いましたが、教師の法外に過酷な勤務条件(特に長時間労働)の緩和を本気で勝ちとるための闘いが重要であると、本書を読み改めて強く思いました。

 

このほか、言語的距離の問題や、日本英語教育史における長期波動論的なマクロ分析、姓名ローマ字表記の問題など、どれもたいへん読み応えがあり、考えさせられました。

 

また、これまで論文の形で読ませて頂いたものも、最新のデータを盛り込んで丁寧に改訂されており、大谷先生の学問的な良心を感じました。

 

心から推薦いたします。

ぜひお読みください。

 

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