希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

2009-01-01から1年間の記事一覧

日本英文学会の謎

日本英文学会といえば、日本の英語界を代表する学会だ。 1917(大正6)年に、東大教授・市河三喜を会長として発足した東京帝国大学英文学会をルーツとする。→Wikipedia なにを今さら、「謎」などあろう。 ところが、このほど名古屋の古書店から入手した資料…

日本英語教育史学会1月例会

日本英語教育史学会 第227回月例研究会のご案内 *1月例会は学会会長のご発表です。 どなたでもご参加いただけますので、ぜひお越し下さい。僕も参ります。 日 時: 2010年(平成22)年1月10日(日)午後2時~5時 会 場: 専修大学神田キャンパス 7号館(大…

ダッチオーブンの魅力

ダッチオーブンにハマって数年たつ。 無骨で重い鋳鉄のなべ。 なのに、素材の持ち味を最高に引き出す優れものだ。 この暮れも鶏の丸焼きを作りました。 鶏のお腹にはニンニクを詰め、塩こしょうは多めに。 その間に、炭をおこしておく。 ナベとフタを充分に…

懐かしの英語参考書(3)東大生が作った『大学への英文解釈』

小田島雄志といえば、坪内逍遥に続いてシェイクスピアの全戯曲を翻訳した英文学者としてあまりに有名である。 →Wikipedia「小田島雄志」 でも、その小田島らが東大の学生時代にすごい英語参考書を作っていたことは、ほとんど知られていない。 その参考書とは…

懐かしの英語参考書(2)2つの高等英文解釈研究

日本語とは著しく言語的距離が離れている英語をどう理解するか。 この問題を解決するために、明治以来の先人たちが工夫し開発してきた技術が「英文解釈」法である。 コミュニケーション(というか英会話)中心の昨今は、旧式の「文法訳読式」とみなされ、す…

懐かしの英語参考書(1)『英語の基礎』(梶木隆一)

大学や学会の公務も終わり、年賀状も書いたので、久しぶりに本と遊ぶことにした。 で、庭の物置にしまい込んでいた古い英語参考書を虫干しすることに。 いくつかの段ボール箱を開けると、すっかりホコリをかぶり、湿気でカビの生えかかったものもあった。 「…

海軍予備校の史料

NHKが司馬遼太郎の「坂の上の雲」をドラマ化している。 原作を読んだとき、その歴史観(特に対朝鮮観)には大いに疑問を感じたが、テレビ・ドラマではどう描くのだろう。 主人公の一人は秋山真之だが、あの白い制服に短剣姿の海軍兵学校は戦前の男子には憧れ…

英語科における協同学習の原理と実践(10)主要参考文献

協同学習や「学びの共同体」創りに関しては、近年さまざまな文献が出ています。 ここでは、入手しやすいもので、本連載で参考にしたものを中心に著者ABC順に挙げます。 これ以外にもたくさんあります。「これはぜひ」と推薦されたい方はコメント欄でご紹介下…

英語科における協同学習の原理と実践(9)おわりに

この連載も、いよいよ本文の最終回です。(次回はブックガイド) これからの英語教育に求められることは、生徒が生涯にわたって学び続けることができるための学習の基礎・基本と、持続的な学習動機および方略を身につけさせることである。そのためには、小論…

英語科における協同学習の原理と実践(8)実践のまとめ

このブログ連載(6)(7)で展開してきたShow & TellやTriangle Discussionなどの活動をふまえて、英語科における協同学習の効果について、簡単にまとめておきたい。 高校における授業実践を通して、協同学習における効果を生徒の変容を中心に考察してきた。…

英語科における協同学習の原理と実践(7)Triangle Discussion

(1)に続き、和歌山大学大学院江利川研究室で協同学習について研究した中西佐江(和歌山県立高校教諭)の授業実践をもとに、事例研究をしたい。 今回は3人グループで3分間の英会話を持続させるTriangle Discussionである。 この活動は、NHKテレビの「わ…

英語科における協同学習の原理と実践(6)Show & Tell

英語科における協同学習(CL)を取り入れた実践例については三浦孝ほか『ヒューマンな英語授業がしたい!』(2006)をはじめ、徐々に紹介されるようになってきた。 和歌山大学大学院江利川研究室で学んだ中西佐江(和歌山県立高校教諭)は、それらのうち典型的…

英語科における協同学習の原理と実践(5)協同と平等の学校改革

協同的な学びを導入した学校では、教室が心地よい居場所となり、いじめも不登校も激減したとする報告が数多くなされている。 協同学習は、教室を教科学習だけの場から、多様な考え方・能力・個性を持った人と共に生きる場へ、つまり民主主義を学び合う場へと…

小学校英語への疑問に答えて

ゲストブックにポッピーママさんから小学校英語に関する3つの「疑問」をいただきました。 多くの人々が抱いている疑問かと思います。その趣旨は以下の通りです。 第一は、今のままでは、絶対に英語を使いこなせる日本人は育たないのではないか。 第二は、楽…

綾部保志先生のすごいエッセイ

『英語教育』12月号(大修館書店)の特集「 英語教育(大修館書店)12月号の特集「英語教師のための今日から役立つブックガイド」はとても面白い企画で、どの記事からも大いに学びました。 買いたい本が目白押しで、困ってしまいます。(^_^ なかでもスゴイと…

英語科における協同学習の原理と実践(4)基本原理(Part 2)

協同学習の原理 (Part 2) 前回の続きです。 (4)卓越性 一人の力では到達できないような高いレベルの課題を設定し、目標達成のためのコミュニケーション力と、助け合いによる人間関係力を共に成長させる。 その理論的背景には、ヴィゴツキーの「発達の最近…

英語科における協同学習の原理と実践(3)基本原理(Part1)

協同学習の基本原理 (Part 1) 協同学習とは、一人では達成困難な高いレベルの課題に対して集団で協同的に取り組むことによって、学習者同士が学び合い・高め合う学習形態である。 協同学習は人種的偏見や学力格差を克服する方法として、米国などから世界に広…

英語科における協同学習の原理と実践(2)いまなぜ協同学習か

いま、なぜ協同学習が必要なのだろうか。 まず、時代の変化が背景にある。 1960年代の高度成長期のような画一的な大量生産を特徴とする「産業社会」から、時代は「高度知識社会」へと変化した。 高度の総合的な知識、多様な人々とのコミュニケーション能力、…

英語科における協同学習の原理と実践(1)習熟度別の問題点

この1カ月は激動の1カ月だった。 遠足2回にライブにブログに、おまけに論文を4本書いた! もう、へろへろです。 1. もうじき発売の大修館書店『英語教育』12月号に「もしも教科書検定制度がなくなったら」 2. 日本英語教育史学会の機関誌に「英語通信教…

ゼミ通信Lalala 12月2日

まいちゃん、ゼミ通信をありがとう。 君の都道府県名を英語で表現する模擬授業はとても盛り上がって楽しかったです。 和歌山はPeace song mountain 愛媛はLovely princess なお、ゼミ通信にあるように、紀州経済史文化史研究所(「紀州経済学史研究所」では…

明治期の小学校英語教授法研究(4)

枩田與惣之助(まつだよそのすけ)が遺した小学校英語教授法の稿本『英語教授法綱要』(1909:明治42年)の翻刻と考察。その第4回目。 第4章の小学校英語教育の目的論へと進む。 平成の今、小学校英語教育(外国語活動)をめぐって混乱している。 例の事業…

明治期の小学校英語教授法研究(3)

枩田與惣之助(まつだよそのすけ)の稿本『英語教授法綱要』(1909:明治42年)の翻刻と考察 第3回目です。 小学校教員を養成する愛媛県師範学校での講義プリント。 いよいよ小学校英語教育史の記述へと入る。 第二章で日本における小学校英語教育の法令的な…

明治期の小学校英語教授法研究(2)

枩田與惣之助(まつだよそのすけ)『英語教授法綱要』の翻刻第2回目。 著者の枩田與惣之助は明治末期から昭和戦前期に、英語教育者、英語教授法研究者、道徳教育者、旧制中学校及び師範学校の校長として教育現場の第一線で活躍した。 枩田は1882(明治15)年…

明治期の小学校英語教授法研究(1)

小学校英語というと平成の発明品のように誤解している人も多いのではないだろうか。 ところが、実際には明治期からかなりの小学校で行われていた。 開設率の全国平均はピーク時の1930年代で10%程度だった。 (詳しくは、江利川春雄『近代日本の英語科教育史…

ゼミ遠足:神戸六甲・有馬温泉癒しの旅

秋のゼミ遠足「神戸六甲・有馬温泉癒しの旅」に行ってきました。 心配された雨も上がり、青空が出てきて、めでたし、めでたし。 なんば駅に集合し、阪神御影(みかげ)駅からバスで六甲ケーブル下へ。 ケーブルは左右にガラスがなく、紅葉がとてもきれいに見…

院生と有田川町清水に

院生3人と「和歌山の桃源郷」有田川町清水に遠足。 快晴に紅葉が美しすぎた。 帰りは生石(おいし)高原。 すすき野が美しい。 次回は学部ゼミ生との「神戸六甲・有馬癒しの旅」 よく学び、よく遊ぼう! 人生は一回きりなのだから。

ライブ御礼

11月21日(土)、和歌山大学の学園祭で僕らのオヤジ教員バンド「先コウ花火」がライブをしました。 応援してくれたみんな、ありがとう! 学生たちがとってもノッてくれて、すっごく楽しかったです。 ステージには興奮した学生だけでなく、来場の子どもまで上…

ゼミ通信 Lalala 11月18日号

森さん、素敵なゼミ通信をありがとう。 今回のゼミは僕がインフルエンザ予防接種のため冒頭で抜けたけど、ちゃんと英語の歌と「弾丸インプット」の指導法を自主的にやってくれたみたいで、嬉しいです。 平山君の模擬授業では、よい授業をするためには英語学…

明日のライブ時間変更

いよいよ明日11月21日-22日は和大祭。 午前9:30から12:00まで、軽音楽部と僕ら教員バンド「先コウ花火」のライブがあります。 フリマも多数出展しますので、ぜひご参加下さい。 で、昨夜連絡が入り、学生バンドの曲数が少ないので、僕らの演奏時間を30分か…

質の高い学びを創る

学力問題の本質は学びの「質」である。フィンランドの教育改革の成功の鍵は「質(quality)」と「平等(equality)」の同時追求にあった。 佐藤学氏(東大)のこの言葉に深く共感する。 佐藤学氏の3年間の指導を受けて「学びの共同体」創りを進めてきた和歌山大…