希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

『英語ノート』廃止、見えない展望

2011年度政府予算が成立し、小学校用の『英語ノート』の廃止が正式に決まった。

この4月から小学校では外国語活動が必修化されたばかり。
『英語ノート』を主たる教材として授業プランを立てている先生も多いだろう。

まさにそのタイミングで、来年度から『英語ノート』は使えない。
これでは授業準備に気合いが入るまい。

問題は廃止した後だ。
現場の声を反映させ、『英語ノート』を超える教材を保障するならわかる。
しかし、政府予算で「小学校外国語活動の教材整備事業」として計上されたのは、たったの約1億7200万円。小学校1校あたり7千円ほど

ちょうど昨日(4月29日)神戸英語教育学会でお話ししたのだが、文部科学省の英語教育関連予算は、自公政権下ですら年6~10億円はあった。
それが、民主党政権になってからは2億円程度に急落した(昨日の配付資料より。原資料は菅正隆『日本人の英語力』開隆堂、2010)。

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民主党はいったい何を「仕分け」したのか。
アメリカ軍基地関連の「思いやり予算」など、仕分けすべきものを仕分けせずに、教育予算を削る。
いったいどこに顔を向けた政治なのか。

この乏しい予算で、文科省は『英語ノート』に代わる新教材を作成し、配布するという。
しかし、こんななさけない予算でまともな教材ができるはずがない。
教材の中身は現時点で白紙。2012年度まで1年を切る中で、熟慮された教材は期待できない。
(中学用の教科書を作るには4年はかかる。)

成美堂・小学校英語メールマガジン〔Volume 27; April 28th, 2011)に載ったインタビューによれば、文科省の担当者は「ウェブ化を含む教材」を考えているようだ。

しかし、小学校現場の劣悪なネット環境を考えれば、はたして使い物になるのか。
『英語ノート』のときも、あっという間に文科省のサイトがパンクした。

ALTの予算も大幅にカットされ、ますます担任に負担がのしかかる。
しかも、そうした日本人教員を研修するための予算も組まれていない。

予算的な裏付けのない方針は「政策」とは呼べない。
空虚な精神主義は現場の疲弊を加速させ、教育を破壊する。

予算を付けないなら、小学校での外国語活動必修化を中止すべきだ。

学校現場をもてあそぶのは、もういいかげんにしてほしい。