何度か述べてきたように、「大学入試にTOEFL」は、グローバル企業の要求として財界関係者が基本方針を策定に関与し、政府与党に政策の実現を迫る形で推進しようとしてきました。
しかし、こうした動きは今に始まったことではありません。
では、こうした財界の英語教育要求は、いつごろから、どのような目的と内容で進められてきたのでしょうか。
TOEFLなどの外部検定試験にかかわる点を中心に、簡単に歴史を振り返ってみましょう。
結論的には、「入試にTOEFL」などの要求は、超国家企業による教育のグローバル化要求の一環であると同時に、教育の市場化・自由競争化、平等の破壊と格差によるエリート育成をめざす新自由主義教育政策が浸透する流れと軌を一にしてきました。
臨教審は、1986年の第二次答申で、中・高の英語教育が「文法知識の習得と読解力の養成に重点が置かれ過ぎている」と断罪し、「広くコミュニケーションを図るための国際通用語習得の側面に重点を置く」という方向を打ち出しました。
それを受けて、1990年代からの会話中心の「コミュニケーション重視」の学習指導要領が出されました。
これが、今日の「大学入試にTOEFL」の直接の出発点です。
1997年には日本経営者団体連盟が「グローバル社会に貢献する人材の育成を」を発表し、「今後はヒアリングやスピーキングといった、相手と直接コミュニケートすることに重点をシフトしていくべきである」として、全従業員にTOEIC、TOEFL受験の義務化、採用時の英語力重視などを主張しました。
この段階では外部試験の対象が「全従業員に」ですから、今から思えば、まだ緩いものです。
2000年3月には、経済団体連合会が「グローバル時代の人材育成について」を発表し、英会話重視、小学校英語教育、少人数習熟度別学級、教員採用試験へのTOEIC・TOEFL等の活用、英語教員への研修、センター試験でリスニングテスト実施など、その後の英語教育政策に大きな影響を与える政策提言を行いました。
「戦略構想」の大きな特徴は、生徒と教員に英語力の到達水準を外部検定試験で初めて設定し、数値目標管理を導入したことです。
また、ここでも高校入試および大学入試に「外部検定試験の活用を促進する」と明言しています。
2011年6月には、文部科学省の「外国語能力の向上に関する検討会」(吉田研作座長)による「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」が出され、これを基礎にその後の英語教育政策が進められました。
ここでも、外部検定試験の活用が次のように示されています。
ただし、大学入試改革については、「学習指導要領に準拠して4技能を総合的に問うタイプの入試問題の開発・実施を促す」としています。
2012年6月には、民主党政権の「グローバル人材育成推進会議」が審議のまとめ「グローバル人材育成戦略」を発表しました。主な内容は以下の通りです。
① 外部検定試験を活用した英語・コミュニケーション能力(理解力・表現力等)の到達度の把握・検証。
② 高校の生徒のTOEFLの成績や英検の実績等の公表を促進する。
③ 英語担当教員の採用の段階で、TOEFL・TOEICの成績等を考慮することや外国人教員を採用することを促進する。
④ 高校の新学習指導要領の趣旨を踏まえて、4技能をバランス良く問うタイプの入試への転換を大学関係者・高校関係者等で共同開発し、その普及・活用を促進する。
⑤ 一般入試においてTOEFL・TOEICの成績等をどのように評価・換算するかの標準的方法の開発・普及を推進する。
⑥ 大学の学生のTOEFL・TOEICの成績等の公表、特色あるカリキュラム(英語による授業、留学の義務化等)や授業方法(少人数教育、教員構成等)等を促進する。
② 高校の生徒のTOEFLの成績や英検の実績等の公表を促進する。
③ 英語担当教員の採用の段階で、TOEFL・TOEICの成績等を考慮することや外国人教員を採用することを促進する。
④ 高校の新学習指導要領の趣旨を踏まえて、4技能をバランス良く問うタイプの入試への転換を大学関係者・高校関係者等で共同開発し、その普及・活用を促進する。
⑤ 一般入試においてTOEFL・TOEICの成績等をどのように評価・換算するかの標準的方法の開発・普及を推進する。
⑥ 大学の学生のTOEFL・TOEICの成績等の公表、特色あるカリキュラム(英語による授業、留学の義務化等)や授業方法(少人数教育、教員構成等)等を促進する。
こちらは政府関係者が作った政策なので、まさにTOEFLなどの外部検定試験のオンパレードです。
ちなみに、「グローバル人材育成推進会議」が審議のまとめと同じ日(2012.6.4)に、平野文部科学大臣が「社会の期待に応える教育改革の推進」を発表しています。
その意味で、戦後民主主義教育が築き上げてきた「国民教育」が危機に瀕しています。
子どもたちを決して幸せにしないからです。
TPPや憲法改正が多くの日本人を決して幸せにしないように。