希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

教育実習を振り返って

僕の授業を受けている大阪大学国語学部4回生の教育実習生より、レポートが送られてきました。
本人の許可を得て掲載いたします。

「教えることは学ぶこと」
ですね。ほんと。

僕も学ぶなあ・・・


1. 実習に関するデータ

実習期間:3週間
教科:英語(中学校)
担当クラス:2年B組 男子14名 女子12名 計26名
教育実習生数:2人(両方とも英語)


2. 次の中でいい授業だと思う順に並べてください。

a)つまらなくて、わかる授業
b)おもしろくて、わからない授業
c)つまらなくて、わからない授業
d)おもしろくて、わかる授業

これは、私が授業展開に関する講話で聞かれた質問です。
いろいろと意見があると思いますが、正解は d→b→c→aだそうです。

つまらないけれど、わかる授業。これは生徒にとって、知識の押しつけであり、とんでもないことだとか。
つまらなくてわからないほうが、今後おもしろいと思うことがあれば、どんどん理解を深めるきっかけになるので、希望があるそうです。

内容理解うんぬんより、まずは「楽しい」授業をして、興味を引き付けることが大事。
生徒たちも「授業が面白かったら、興味がわくから、自分でやるようになるもんなー」といっていました。
つまり、授業がつまらない、授業がわからないのは教師の責任だということで、これは実習中、常に心にとめておいたことです。


3. 授業を行う上で意識したこと

A) 楽しみつつ、何度も使って表現を覚えてもらうために、ビンゴや対話ゲームを取り入れてた授業を展開する。

たとえば、want to 動詞の原型という表現を覚えてほしければ、”What do you want to do tomorrow?”ビンゴゲーム。
ワークシートの9マスの中に、動詞の原型が入っており、自分でひとつ選び、Bの文を作っておきます。
ペアでじゃんけんをし、勝ったらA、負けたらBです。
Aさんは、Bさんの答えを自分のシートに丸をつけることができます。

A: What do you want to do tomorrow?
B: I want to ~.
A: That sounds like fun. Have a nice holiday!
B: Thanks. You too!

一列できた子は、ダブル、トリプルを狙うように促し、さらに賞品としていろいろな種類のシールを用意することで、盛り上がりました。

もうひとつ、例をあげておきます。不定詞(名詞的活用と副詞的活用)の復習。
A: Where do you want to visit?
B: I want to visit ○○.
A: Why?
B: To~.

○○には自分の行きたい場所、Toのあとはその理由を書きます。
たとえば I want to visit South Africa. / To see some soccer games.というかんじです。

一部の生徒たちは、本気で行きたい所を考えてしまい、「うーん、どこもない・・・」となりがちなので、教科書などから事例をひっぱってくるのもよいかもしれません。

インタビュー形式にして、友達に聞きます。そのあと、はやくたくさんの子に聞けてしまった子は、△▽(人名)wants to visit ○○ to ~.という文を作っておいてもらいます。

クラスの中で実力や理解度に大きな差があるので、授業中、いろいろ工夫する必要があります。
特にT2の先生やALTがいる場合、特に事前の打ち合わせを入念にしましょう。

B) 担当の先生の傾向をよく知ること。その先生のスタイルの中に、自分のやりたいことを上手に織り交ぜていくこと。

担当の先生の授業をお借りして、実習をさせていただくわけですから、やはり先生のスタイルをまったく無視することはできません。
生徒も今までのやり方と大きく異なると、戸惑ってしまいます。
私の担当の先生は、文法重視の方だったので、とにかくどんな場面でも今日覚えてほしい文法事項が盛り込まれているようにしました。(C参照)

C)トトロは万人に受ける・・・!?

江利川先生の授業で、私自身楽しかったので、トトロの英語版を実習でも使用することにしました。

ツタヤのレンタルが安い日に借りてきて、使えそうな場面を5か所ほど選び、英文におこしました。
比較的会話量が多く、ちょうどwant to 動詞の原型がでてくるシーン(お父さんが大学にいっている間、めいがさつきの学校にきて、一緒に授業を受けて、下校するところ。みっちゃんのセリフ。)があったので、授業ではそれを取り上げました。
先生の許可もいただき、生徒の反応もとてもよかったので、他の場面も何度か授業で使いました。

注! 古い学校のDVDプレーヤーは反応が遅かったり、プロジェクターとパソコンをつないでうつそうとしても、パソコンが固まったりするハプニングがあるので、映像教材を使うときは、環境をよく調べておきましょう。機械に強い先生と仲良くしておくのもポイントです。


D)「今日はこれだけは絶対覚えて帰ってほしい!みんなならできる!」という気迫を
  もって授業にのぞむ。

生徒たちは正直なもので、こちらが手を抜こうとすると、敏感に感じ取って、だれてしまいます。
「みんなわかっているかな・・・大丈夫かな・・・」と思って授業をすると、生徒も不安になってしまいます。
生徒がその時間、授業に意識をむけられるかどうかは、教師側の最初の挨拶と導入で決まると思います。
経験やテクニックがない分、私にできるのは気合を入れて授業をすること。
「みんなならできる。わかる。これを覚えて帰るんだよ!」と心の中で思ったり、実際口にだしたりして授業をすると、不思議と生徒たちもついてきてくれます。

4.その他
*板書の位置に注意 → 自分が書きにくいくらい、高いところにしておかないと、
後ろの席の子からは、みえません。
生徒の目線とノートに書く時間やスペースを、念頭に置いてください。

*自分がおもしろいと思う授業をしよう → 自分がつまらないと思うと、熱が入らないから。
やる気のなさは、生徒に簡単に伝染します。

*自分の中で合格ラインを決める → 「今日は○○君が手をあげてくれたらよし!」
                  「給食のとき▽▽ちゃんと話ができたらよし!」
など、自分の中に小さな到達地点を決めておくと、
                  気が楽です。完璧は目指さないこと。

*健康管理に気をつけよう → 実習中は体力勝負。よく寝て、しっかり食べて!
               徹夜は禁物。

*笑顔で過ごそう → どこにいても、誰かに見られています。(本当)
   
*いろいろな先生と話してみよう → みなさん、さまざまな経歴をおもちなので、お話を聞くだけで、勉強になります。タイミングを見計らって、どんどん質問!

*自分の中に、たくさん引出しをつくっておこう → 生徒や先生と話すときに、なんで
もネタがあるのはよいことです。

*担当したクラスの子と、1日1回は全員と話せるようにしよう
 →袖振り合うも多少の縁。話すことで見えてくるものがたくさんあります。
  男の子の場合、シャイなので、なかなか壁は低くならないけれど、そんなときは
  掃除や給食の時間を通して、だんだん仲良くなりましょう。信頼関係ができると
  授業もやりやすくなります。まずは自己開示から!

実習生の受け入れの義務は、学校側にはありません。感謝を忘れずに!!


補足:聞かれた質問の一部(1,2年生から)

20,30,40・・・でなんで-ty がつくんですか?

なんで13から急にteen になるんですか?

どうして the library なのに、the school とはならないんですか?

A cat, the cat・・・a とthe の違いがわかりません。

どうしてA Taro とはならないんですか?

なんどスペリングを書いても覚えられないのですが、どうしたらいいですか。

なんでbe動詞と一般動詞は一緒にいられないんですか。

戦闘服と木刀は英語でなんていうんですか。

チュパカブラのスペルを教えてください。

日本人なのに、どうして英語を勉強しなければならないんですか。

などなど・・・さまざまなことを聞かれます。
その場で答えられないときは、宿題にしてもらいましょう。

生徒の質問は、学びの宝庫だと思います。