希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

教育実習を体験して(4)

教育実習から戻った学生からのメッセージ(その4)です。
一部の固有名詞などは削除させていただきました。

毎回思うのですが、みんな一回り大きくなって帰ってきます。
現場から学ぶことはとても大きいですね。

そして教員である僕自身が、彼/彼女らのレポートから大いに学びます。
その学んだ成果を英語科教育法の授業に活かしたいと思っています。

教育実習を体験しての後輩へのメッセージ

◆教育実習の内実
私は母校の高等学校で3週間、教育実習をしました。
取得したい免許は中学と高校の「スワヒリ語+英語」です。

HR担当は2年6組で、2年生全8クラスのうち4クラスを担当し、合計6コマの授業をさせて頂きました。
同じ内容の授業もあったので、実質3回分の授業準備を行いました。
授業内容に関してはReadingが4回とGrammarが2回です。

◆教えることの難しさ

初めて集団に英語を教える立場に立って、以下の3点を痛感しました。

・教材研究の大変さ
・生徒から思いがけない答えや質問が飛び出してきた時に、適切な対応をする難しさ
・授業をどの学力レベルに合わせるかという難しさ

授業数が3週間で6コマというのは、比較的少ない方だと思います。
しかしながら教材は研究しても研究しても完璧ということはないので、実習中は寝る時間がほとんどありませんでした。

多くの英語科の先生方の授業を見学しましたが、同じ単元を扱う場合でも先生によって全く教え方が違いました。
一人でも多くの生徒が納得できる教え方や、授業を効率的に進める方法について色々と考えさせられました。
私の場合は、Readingでパズルをテーマにした章を扱ったので、家で実際に作ってみてそれを授業で披露したり、板書が多い授業では時間節約のために模造紙にあらかじめ重要事項を書いておき、授業ではそれを黒板に貼るだけにしたりと、工夫を凝らしました。

教師には、いつでも柔軟な発想や思考が求められるのだと思います。

注意すべき点は、生徒から「この単語を使っても良いですか?」「この英作はだめですか?」などの質問がきた時に、いい加減な返事をしないということです。

生徒から、時に思いがけない質問を受けます。
実習生はまだまだ知識が浅いので、分からないならハッキリと「調べておく」と言うべきですし、絶対に「多分それでも正解です」などと適当なことは言えません。
生徒からも信用されなくなりますので、それだけは心に留めておくべきだと思います。

最後に、指導教官とよく話をしたのは「どの学力レベルに合わせて授業をするか」です。
高校2年生は英語力に大分開きがあるので、教材を丁寧に解説しすぎると、授業に退屈する生徒が出てきます。
しかしその一方で解説を端折りすぎると、ついていけない生徒が出てきます。

指導教官からは「授業は、成績が中の上の生徒たちのレベルに合わせること」と指摘されました。
そうすれば授業がスムーズに進むという利点はありますが、成績下位層の生徒達は授業を聞いていてもチンプンカンプンでしょうし、彼らは自分達が教師に放っておかれていると感じるのではないか思います。

レベルを中の上に合わせる方針を取るのなら、それについていけない生徒には別途補習をするなどのフォローが必要であると感じました。

◆積極的に大学の話をする

実習生は生徒に大学で専攻している分野や、大学生活の話をすることも必要だと思います。
現役大学生の「生の声」を生徒に聞かせることは、教師にはできない、つまり実習生にしかできないことだからです。

私の場合はアフリカの言語であるスワヒリ語を専攻しているので、各クラスでスワヒリ語を使って自己紹介をしたり、英語との文法的な違いを説明したりしていました。

すると「将来アフリカに行ってみたい」「大阪大学の外国語学部志望です」という生徒が何人か個人的に話を聞きに来てくれました。

進路に悩んでいる生徒に対して何か参考になるような話ができれば、生徒は喜んでくれると思います。

◆生徒との関わり

私は3週間という限られた時間で、生徒とどうやって距離を縮めるか真剣に悩んでいました。
しかしながら、結局は「生徒と直接話す機会を積極的にもつ」ことが一番距離を縮める方法だと思います。
放課後の掃除の時間に教室に顔を出したり、球技大会などの行事では一緒にクラスを応援したりしました。

実習最終日に、HR担当クラスで挨拶をしました。
その際に、アフリカの紛争という自分の卒業論文のテーマや、アフリカに実際に訪れてみて感じたことなどを話しました。

すると放課後に「実習生の○○先生!!至急2年6組へ!!」というアナウンスがあり、何事かと慌てて教室へ向かうと、クラス全員の拍手に迎えられ、黒板には「夢をありがとう」というメッセージが・・・。
似顔絵入りの色紙と、文化祭で上映したクラスの自作ビデオを焼いたDVDを生徒さんから頂きました。
彼らがそのような粋な計らいをしてくれて、嬉しくて思わず泣いてしまいました。

私自身の高校生活は、勉強に苦しみ、部活との両立などで色々と悩みを抱え、決して順風満帆とは言えないものでした。
しかしその苦い経験が土台になって、今の自分があると肯定できたような気がして、とても救われました。

優しくてあたたかいクラスに感謝すると共に、教師という職業の魅力を感じました。
教師になって息詰まった時は、実習期間中の初心に戻ろうと思います。