希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

文科省は子どもの被曝限度を下げるべきです。

無人島ゼミ合宿から戻りました。
ライフラインが寸断されても生き抜いていける。
ゼミ生たちは、そんな実感を持ったのでした。

さて、その詳細は後日とし、急いで言わなければならないことがあります。

東京電力福島第一原発事故への対応に関して、文部科学省原子力安全委員会(名前からしていかがわしい;「規制委員会」でなければ意味がありません)は、福島県内の児童と生徒の被ばく限度を年間20ミリシーベルトという不当に高い数値を設定しました。

これを直ちに撤回させて、年1ミリシーベルトの基準を児童・生徒には適用させなければなりません。
英語教育以前の問題として、早急に子どもたちの安全(年1ミリでも絶対安全とはいえませんが)を守らなければなりません。

この問題に関して、私の友人でもある神戸大学の山内知也教授(放射線物理・ 放射線計測)が、文部科学省原子力安全委員会に対して、子どもの被曝線量を早急に引き下げるよう申し入れました。

原子力放射線に関しては、いわゆる「御用学者」が無責任な発言を重ねる中、山内さんのような気骨のある研究者が行動を起こしていることを知ると、救われた気がします。

以下に申入書を紹介します。

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                             2011年4月21日
      児童・生徒の被ばく限度についての申入書

文部科学省学校健康教育科 電話 03-6734-2695/FAX03-6734-3794
原子力安全委員会事務局  電話 03-3581-9948/FAX03-3581-9837

        山内知也 神戸大学大学院海事科学研究科 教授

 大学で放射線を教授している者として申し入れます。

 福島第一原発事故への対応に関して、福島県内の児童と生徒の被ばく限度を年間20ミリシーベルトにされておりますが、子供が浴びる線量としては不当に高いものです。撤回して年1ミリシーベルトの基準を児童と生徒には適用してください。

 既に半減期が30年であるセシウム-137が全体の被ばく線量を支配する段階にはいっており、これからは被ばく線量は数年の単位ではほとんど低下しなくなります。したがって年20ミリシーベルト相当の被ばくが何年も継続することになります。

 ICRP(国際放射線防護委員会)が過去にまとめた報告類でも(ICRP-publiction36)、生徒の被ばくを禁じており、18歳未満の生徒については放射線を使った実験を意図的に行う場合でも年間の被ばく限度を公衆の被ばく限度の10分の1にするように勧告しています。
 
 それは子供の放射線感受性が大人よりも高く、被ばくの影響が出る期間も長いからです。

 ICRPが3月21日に公表した見解(ICRP ref: 487-5603-4313)でも『放射線源が制御下におかれた時には汚染された地域が残るだろう。その地域を捨てるのではなくて、そこに住み続けることを人々に許可するために必要となるあらゆる防護手段を提供することが場合によっては出てくるだろう。この場合について委員会は、参考レベルとして、長期的な目標としての参考レベルは一年あたり1 mSvに低減させるとしながらも、年間1mSvから20mSvの範囲の中から選択することを勧告する』。(ICRP 2009b 48から50節)。

“When the radiation source is under control contaminated areas may remain. Authorities will often implement all necessary protective measures to allow people to continue to live there rather than abandoning these areas. In this case the Commission continues to recommend choosing reference levels in the band of 1 to 20 mSv per year, with the long-term goal of reducing reference levels to 1 mSv per year (ICRP 2009b, paragraphs 48-50).”

とあります。

 子供の被ばく限度を20ミリシーベルトでよいとはしていません。ここではあくまで1ミリシーベルトを目標としています。1から20までの範囲であれば、子供に対しては1ミリシーベルトを選択すべきです。早急に見直して下さい。

 このままでは疫学調査に出てくるような実際の被害が福島の子どもたちの間に生じます。

以上

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なお、山内教授のパワーポイント資料福島原発で起こっていること」は以下から入手できます。


セシウムによる被ばくを特別に扱わなければならないことを意味しており、特に内部被ばくの危険性が、現在のICRPモデルではまったく不十分にしか表現できていないことを証明している。」(スライド61)ことなどが詳細に書かれています。