希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(15)

新緑の美しい季節になりました。

明日からゼミの無人島サバイバル合宿(とは言っても、和歌山市の友が島)ですので、取り急ぎ伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読むの第15回目をお送りします。

今回は第9章 共通関係で、この後が最後の第10章 挿入と基本要素の識別です。

これに対して、『英文解釈教室』(1977)では全15章中、最後から2つ目がChapter 14 共通関係、最後がChapter 15 挿入の諸形式です。

つまり、『大系』と『教室』の最後の展開は同じ構成なのです。

ただし、『教室』では章立てを1.5倍にし、「共通関係」の前にChapter 12 比較の一般問題Chapter 13 比較の特殊問題を入れています。

拙著『受験英語と日本人』(研究社)にも書いたのですが、伊藤は『大系』では(1)S+V+[X+X]と(2)M+Hという2つの原理にもとづく体系性の構築に力点を置くあまり、自分の体系にうまく収まらない「比較」などについては、章立てはおろか、ほとんど記述していないのです(この点は入不二基義先生が鋭く指摘されています)。

比較構文は受験生にとって必要不可欠ですから、この点は学習参考書としては致命的な弱点ともいえるでしょう。

そうした弱点にもかかわらず、今回の「共通関係」などはたいへん鋭い洞察にあふれています。

9年後の1973(昭和48)年に刊行された多田正行『思考訓練の場としての英文解釈』(第1集)の第1章は因数分解型STRUCTURE」というユニークな始まり方をしています。

多田はその理由を「受験生の犯す誤訳の中の相当の比率を、この因数分解型構造の捕捉失敗の為の誤訳が占めているというのが、長年答案を見つづけての観察判断である」(3頁)と述べています。

この因数分解型STRUCTUREこそ、いわゆる共通構文のことです。

たとえばDemocracy is the government(n) of the people(a1), by the people(a2) and for the people(a3).という文の構造は、n(a1+a2+a3)というふうに因数分解の型として分析できます。

おわかりのように、こうした説明法は伊藤和夫の『新英文解釈体系』(1964)の第9章「共通関係」に(A+B+C)(A’+C’)という形ですでに見られ、『英文解釈教室』(1977)の14章にも引き継がれているのです。

さて、解説めいたことが長くなってしまいました。
例によって、容量の許す限り原文を掲載します(容量節約のため、不細工な切り貼りもありますが、お許し下さい)。

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