希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

福島「除染」の困難さ

9月27日のニュースによると、福島市は、市内全域の放射線量を大幅に減らすために、11万世帯すべてを対象に徐染を進めるとした計画をまとめ、発表したそうです。

しかし、「除染」は決して容易なことではありません。
「除染」したから安全だと安易に宣言して、かえって住民を被爆させるおそれがあります。

実際、「除染」によって放射性物質が集まり、かえって放射線量が高くなる場所ができてしまいます。
そうした深刻な実態が明らかになりました。

「国際環境NGO FoE JAPAN」と「福島老朽原発を考える会(フクロウの会)」の依頼により、友人の神戸大学大学院海事科学研究科の山内知也教授(写真:「フクロウの会」ブログより)が、9月14日に福島市渡利地区の放射能汚染レベルの調査を行い、その調査結果報告書が9月20に公開されました。

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放射能汚染レベル調査結果報告書 渡利地域における除染の限界』と題する山内教授の報告書がPDFファイルで公開されています(11ページ)。
  http://www.foejapan.org/energy/news/pdf/110921_2.pdf

同報告書冒頭の「概要」の部分を以下に引用します。

概要:2011年9月14日、福島市渡利地区において空間線量の計測を実施した。「除染」が行われたということであったが、6月の調査において最も高い線量を記録した側溝内堆積物には手が付けられておらず、地表面における空間線量は当時の2倍に上昇していた。

「除染」のモデル地区としてある通学路がその対象になったが(「除染モデル事業実施区域」)、その報告によると平均して7割程度(約68%)にしか下がっておらず、空間線量も1~2 μSv/hに高止まりしている。

今回の調査においてもその通学路の周辺において20 μSv/hを超える非常に高い線量が地表面で計測された。コンクリートやそれに類する屋根の汚染は高圧水洗浄によっても除去できておらず、住宅室内における高い線量の原因になっている。

除染の対象にはされなかった地域の水路や空き地、神社、個人宅地内の庭で高い線量が計測され、最も高い線量は地表で20 μSv/hを記録した。本来の意味での除染はできていない。


以上の調査結果をうけて、両調査依頼団体は、連名で以下の声明を発表しました。
  http://www.foejapan.org/energy/news/110921.html

声明では、以下のことを国、福島市福島県に求めていきたいとしています。

1.調査により、国が特定避難勧奨地点の検討に際して行った詳細調査を行っていない箇所において、高い線量が観測されたことから、国は、渡利地区全域を対象として、さらに詳細な調査を行うこと。

2.除染モデル事業の効果は限定的であった。周囲を山林で囲まれた地形の特性から、雨により放射能が拡散する効果は期待できず、逆に周囲の山林から、常に放射能を含む土壌が供給される。豪雨により線量が下がるのではなく、逆に上がるという環境では、側溝の泥すくいといった除染は一時しのぎに過ぎない。除染作業は短期に効果がでるものではない。以上から、十分な効果がでるまで、子どもたちを優先して避難させること。

3.屋根にこびりついた放射能の影響により、室内の線量が高い場合もある。室内もきちんと測り、現実に即した線量計算を行うこと。

4.今回の測定でも、家の庭先などで、伊達市南相馬市で設定された、子ども・妊婦の避難勧奨基準を超えるケースがみられた。これらについて、直ちに、子ども・妊婦基準を決めた上で、避難勧奨の指定を行うこと。

5.渡利地区では、1cm線量が異常に高い値を示す箇所が随所に見られた。これはこの地区全体の土壌汚染に起因すると思われる。チェルノブイリの経験も踏まえ、避難勧奨の指定に際しては、1cm線量や土壌汚染についても基準に加えること。

6.周囲の山林の汚染土壌が雨のたびに流れ込むというこの地域の特性を考慮し、渡利地区全体を一括して特定避難勧奨「地区」として指定すること。

7.最後に、現在の特定避難勧奨地点設定の基準(年間20ミリシーベルト)は、日本の既存の法令と比較して(注)、あまりに高すぎる基準であるためこれを見直し、住民が避難にあたって賠償や行政サポートを受けられる地域を幅広く設けること。

*「フクロウの会」ブログに、調査時の写真等が掲載されています。
  http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/09/post-ff39.html

(情報提供 メルマガ金原No.581)