希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

『淺田榮次追懷録』の魅力

昨日『東京外国語学校史』(2008)をご紹介したが、その中で英語科主任教授だった浅田栄次のことを読んでいたら、この本が読みたくなった。

『淺田榮次追懷録』である。
1916(大正5)年に浅田みか子夫人が自費出版した非売品。

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たいへんレアな本で、僕は故・高梨健吉先生(慶應大)からお借りして、コピーさせていただいた。

ところが、この幻の名著が皆川三郎氏らの「東京外語会有志」によって1996年に復刻された。
実にありがたい。

今では「日本の古本屋」サイトなどでもヒットするので、ほしい人は今のうちにどうぞ。

本文は、日本文が720ページ、英文が227ページもある。

内容は、家系および履歴、伝記およびその材料、遺稿、教育上の意見、書簡、さらには交流のあった知人・親戚・家族からの寄稿文などからなる。
たいへん充実した文献だ。

英語教育史的に特に注目されるのは「田舎めぐり」(pp.127-236)だ。

これは、浅田栄次が1909(明治42)年2-3月に、文部省視学委員として神奈川および静岡の中等学校23校を視察した報告書で、「英語教授法に就て普通一般の欠点」を16点にわたって指摘している。

この中には、「練習の不十分なること」、「教師のみ活動して、生徒は静粛謹聴すること」、「変化少なきこと」、「暗誦の不足なること」、「学力劣等の生徒に不親切なること」、「授業中英語を用ふること尚ほ少きこと」など、今日でも示唆に富むものが少なくない。

この他、英文の論文としては以下の2つが特に面白い。

English Teaching in the Middle Grade Schools North of Tokyo.(1908:明治41年7月の東北の中等学校視察報告)

How to Teach English in Japanese Schools.

今度、ゼミで学生と読んでみようか。