2012年の読書初め。
どうせなら重厚な本を読んでやれ、とばかりに選んだのが野中正孝編著『東京外国語学校史:外国語を学んだ人たち』(不二出版、2008)。
1,606頁もある大著だから、相手にとって不足はない。
英語教育史を学ぶものとして、読まずに済む本ではない。
などと気負って読み始めたら、これがなんとも、やめられないほど面白い。
その後の展開でも、事実関係の考証が実に丹念で信頼できる。
制度史的な記述だけだと退屈しがちだが、随所に外語ゆかりの人物が登場する。
登場するどころか、むしろ人物誌が中心といってもよい。
各学科、各卒業年ごとに卒業生の略歴やエピソードが記されている。
登場するどころか、むしろ人物誌が中心といってもよい。
各学科、各卒業年ごとに卒業生の略歴やエピソードが記されている。
人間がもっとも興味を寄せるのは人間だから、こうした人物誌が多いと飽きが来ない。
そうした登場人物の数が半端ではない。
英語関係者だけでも、神田乃武、浅田栄次、細江逸記、石田憲次、片山寛、岩崎民平、大橋健三郎など、貴重な伝記情報やエピソードがたっぷりだ。
ちなみに、初代英語科主任教授だった浅田栄次(1865-1914)だけでも19頁を費やしている。
その意味で、日本における外国語教育発達史を知る上で第一級の文献であると言えよう。
ところで、この貴重な労作は、あやうく陽の目を見ないところだった。
そのため、同窓会関係者からさまざまな資料や手記の提供があったようだ。
しかし、2005(平成17)年9月、東京外語会理事会において「外語会事業としての同窓会史出版を中止する」、「個人の作品として(中略)自費出版することは自由である」との決定が下された。
このとき、すでに「草稿」の印刷指定済み原稿は印刷所に渡されていたのにである。
その後、ぜひ出版してほしいとの関係者の勧めもあり、同窓の女性からは匿名を条件に資金提供もあったという。
かくして、本書『東京外国語学校史』は陽の目を見た。
もともと「同窓史」として企画されていたために、「人物誌」が豊富なのだ。
謎が解けた。
謎が解けた。
同大学には本編1巻・資料編3巻からなる公式の『東京外国語大学史 : 独立百周年(建学百二十六年)記念』(1999-2002)があるが、本書に独自の価値があることは間違いない。
さあ、続きを読もうっと。