そんな折に,奥様の松村惠美子様より,3人のお子様と一緒に編纂された『私の歩んだ軌跡ー英語教育への道ー』(全84ページ)と『別冊 私の歩んだ軌跡ー英学史論考集ー』(全356ページ)の2冊(いずれも私家版の非売品)をお送りいただきました。
日本の英語教育史研究にとりまして,たいへん貴重な文献ですので,感謝を込めて紹介させていただきます。
本書の「はじめに」によれば,松村先生は亡くなられる少し前に,「幾つかの原稿をまとめて簡単な冊子を作り,お世話になった方々にお渡しするように」と家族に言い残されたそうです。
その遺言を忠実に守られた「子どもたち三人が,毛利元就の三本の矢の如く,協力し分担して作業を行った結果,完成に至りました」とのことです。
最後まで学界への献身を忘れなかった松村先生のご人徳と,その遺志を実行されたご家族の皆様のご努力に,胸が熱くなります。
『私の歩んだ軌跡ー英語教育への道ー』は全4章からなります。
第1章 英語教育研究」私の歩んだ軌跡
*自伝的な2篇の原稿で,松村先生の英語教育学および英学史・英語教育史との関わりを自ら書いておられます。
*自伝的な2篇の原稿で,松村先生の英語教育学および英学史・英語教育史との関わりを自ら書いておられます。
第3章 広島大学定年退官以降(平成7年~)の著作一覧
*退官以前の著作一覧は,退官記念論集である『英語教育学研究』(渓水社,2005)に掲載されていますので,これで松村先生の著作一覧が完成したことになります。激務の中にあって,よくぞこれほどの論考を発表されたものだと感嘆いたしました。
*退官以前の著作一覧は,退官記念論集である『英語教育学研究』(渓水社,2005)に掲載されていますので,これで松村先生の著作一覧が完成したことになります。激務の中にあって,よくぞこれほどの論考を発表されたものだと感嘆いたしました。
第4章 随想
*(1)学生時代の思い出,(2)折りおりの記,(3)次世代へのメッセージ,からなるエッセイ集です。
*(1)学生時代の思い出,(2)折りおりの記,(3)次世代へのメッセージ,からなるエッセイ集です。
余談ですが,研究に没入していると,ときに資料や人物が先方から呼びかけてくることがあります。
幻の資料が学会発表直前に手に入ったり,『受験英語と日本人』の脱稿直前には,伊藤和夫の元同僚として横浜の予備校で教えていた人が偶然に懇親会で隣に座っておられました。
こうして,伊藤和夫の知られざる写真やエピソードを巻頭に載せることができたのでした。
こうして,伊藤和夫の知られざる写真やエピソードを巻頭に載せることができたのでした。
伊藤和夫といえば,書斎で別の本を探しているうちに伊藤の『予備校の英語』や雑誌の伊藤和男特集が気になって,ふと時計を見ると伊藤の命日の3分前だったこともあります。そのときは命日を知らなかったのですが。 →過去ログ
そして今回は,松村幹男先生の貴重な遺稿集が奥様から届いたのです。
実は,私が勤務する和歌山大学の大学院には,珍しく英語教育史をやりたいという院生が他大学から入学してきました。
熱心な学部4回生も交え,本年後期の「英語教育特論」の演習では松村幹男先生の英語教育史研究をテーマに取り上げることを決めておりました。
熱心な学部4回生も交え,本年後期の「英語教育特論」の演習では松村幹男先生の英語教育史研究をテーマに取り上げることを決めておりました。
松村先生の大量の論文を,演習に参加する3人分コピーしました。
すると,その翌日に,奥様から『私の歩んだ軌跡』2冊が届いたのです。
まるで松村先生から,「私の最後の研究もぜひ加えてください」と言われたような錯覚にとらわれました。
まるで松村先生から,「私の最後の研究もぜひ加えてください」と言われたような錯覚にとらわれました。
松村先生の日本英学史・英語教育史研究を改めて学び直そうと思っていた矢先に,このたび『私の歩んだ軌跡』が届きましたことに,なにか運命のようなものを感じています。
『別冊 私の歩んだ軌跡ー英学史論考集ー』については,あらためてご報告します。
(つづく)