希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

東京の教育を考える校長・教頭(副校長)経験者の会の声明

8月30日の安保法制反対の国会周辺および全国の取り組みから、たっぷり勇気と元気をいただきました。

僕自身、30日は雨の中、和歌山市内の行動に参加し、スピーチとデモを行いました。

帰宅すると、インターネット経由で東京での歴史に残る集会・デモの動画を何度も見直し、興奮してしまって、締切せまる原稿が手につきませんでした。

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本日も、すばらしい声明文が届きました。

「東京の教育を考える校長・教頭(副校長)経験者の会」からです。(転送・転載大歓迎)

「私たちの呼びかけ」

子ども・若者を再び戦場に送らないために
安全保障関連法案の衆議院での強行採決に抗議し、廃案を求めます

2015年7月16日に行われた安全保障関連法案の衆議院での強行採決は、戦後教育に携わってきた私たちの教職人生そのものをも否定するものであり、教育に携わり、学校教育に責任を負ってきた者として絶対に認めるわけにはいきません。

強い憤りをもって抗議し、再び参議院において強行採決をせず、廃案にするよう、心を込めて呼びかけるものです。

私たちがこの法案に反対するのは次の点からです。

第1に、「立憲主義」を破壊し、憲法そのものを否定する「違憲立法」法案だからです。

今まで政府は、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない」という1972年政府見解の結論を踏襲してきました。
さらには、自民党自身が「憲法は、主権者である国民が政府・国会の権限を制限するための法であるという性格を持ち、その解釈が、政治的恣意によって安易に変更されることは、国民主権の基本原理の観点から許されない」(2009年 月)と国民に説明してきました。

この自らの見解をも踏み越え、覆し、立憲主義国民主権を破壊するのが今回の法案です。

衆議院憲法調査会では参考人として呼ばれた3人の憲法学者全員が「法案は違憲である」と明確に述べ、朝日新聞憲法学者へのアンケートでは、回答を寄せた122人の学者の内「憲法違反には当たらない」と答えたのはたった2人しかいませんでした。

今、憲法を否定する「違憲立法」の道に進むのか、「憲法の民主主義的原理」を守るのか、重大な岐路に立たされていると考えています。

第2に、国民の声、専門家の声には全く耳を貸さずに強行採決するやりかたは、「国民主権」の民主主義を破壊する国への道になるからです。

どの世論調査でも、「法案に反対」、「衆議院での採決は問題だ」、「法案の今国会での成立に反対」が賛成(肯定)を大きく上回り、どれも6割~7割になっています。

こういった圧倒的多数の研究者、司法界、国民の意見には全く耳をかさずに国会で多数を握れば何でも強行採決して決められるということ自体が、まさに、「国民主権」を破壊する憲法違反そのものであり、「民主主義」を破壊する「新たなファシズム」と言えるものです。

戦後すぐ文部省から発行された『民主主義』(1948年)では、ナチス党が「国会の多数決を利用して」独裁政治を確立していった例を挙げて、「多数決という方法は・・民主主義そのものの根底を破壊するような結果に陥ることがある。なぜならば、多数の力さえ獲得すればどんなことで もできるということになると、・・いっさいの反対や批判を封じ去って、一挙に独裁政治体制を作り上げてしまうことができるからである。」と警告しています。

安倍内閣のやり方はまさにここで警告されたとおりの「新たなファシズム」の手法そのものになってしまうのではないでしょうか。

第3に、安全保障関連法案は、真に「こどもたちの未来の平和と安全を守る」ものではなく、かえって危機にさらすものになるからです。

政府・与党は北朝鮮や中国の脅威を言いたて、日本の今までの平和と安全はもっぱら「日米安保条約」と「自衛力の強化」という軍事同盟と武力こそが国民の生命と安全を守るものだと言っています。

事実はどうでしょうか。戦後日本の自衛隊は、どの戦争にも、戦闘にも参加せず、一発の弾丸も撃たず、一人も殺さず、一人の戦死者も出していませんでした。

それは、戦後年間、「国の交戦権は、これを認めない」という憲法9条こそが「抑止力」になっていたからであることは明白な事実です。
戦争の真の「抑止力」は武力ではなく、この憲法9条です。

ところが、その真の「抑止力」が今回の法案で危機に陥っています。

この事実を6月日発表された「国際協力NGO(非政府組織)・JVC(日本国際ボランティアセンター)からの提言」ではこう言っています。

「これまで日本は自衛隊を含めて非軍事に徹した国際平和協力を行ってきました。これは、他国にできない日本の独自性であり、これにより日本が国際的な信頼を獲得してきたことは、紛れもない事実です」。

集団的自衛権の行使は、この日本の「国際的信頼」を失わさせ、敵意とテロの対象国にしてしまいかねません。
「戦争をしない国」から「戦争をする国」になることは、子どもたちの未来の平和と安全を守る「抑止力」になるどころか、「子どもたちの未来への命と希望・平和と安全を危機にさらす」もの以外ではないと考えます。

第4に、戦争ができる国の「人材育成教育」へと、権力によって教育が歪められていくからです。

第一次安倍内閣が先ず手がけた「教育基本法」改定は、「真理と平和を希求し」の「平和」を削除し「正義」にかえ、愛国心等人間像まで教育の目標化し、行政が教育施策を策定する等、「理念法」を国による「統制法」に変えてしまいました。

第二次安倍内閣になると、この改悪に基づいて、「教科書採択への直接介入」を強め、首長権限を強める「教育委員会制度改定」、政府見解を踏まえる等、まるで国定教科書化するかのような「教科書検定基準改定」を行いました。

さらには、戦後文部省が「やってはならない」と言っていた「道徳の教科化」に踏み切るとともに、教師を専門職から国家の官吏にする「教員資格を国家免許にする」という内閣教育再生実行会議提言まで出されました。

このように教育制度・内容にわたり、国策教育へと変えられつつあるあることを危惧します。

教育は、子どもたちの未来を生きる命と希望を育む営みです。

私たちは平和と民主主義を担う子どもたちの未来をつくる教育に責任を負ってきた者として、再び戦争をする人間に育てるようなことに手をかすようなことは決してできません。

あらゆる手立てを尽くして安全保障関連法案を廃案にするよう心から呼びかけます。

2015年8月5日

東京の教育を考える校長・教頭(副校長)経験者の会

代表 茂木俊彦都立大学総長

「私たちの呼びかけ」に私も賛同します

青木英二 元私立高校副校長
池上東湖 元私立高校校長
石垣忠昭 元都立高校校長
伊藤辰久 元公立小学校校長
石平快三 元都立高校校長
猪又和子 元公立小学校校長
上田 悌 元公立小学校校長
大崎 玄 元公立小学校校長
岡田光好 元都立高校教頭
奥井利一 元都立高校教頭
奥田 勲 元私立高校教頭
小川恭光 元公立中学校校長
小澤重雄 元公立中学校校長
小澤拓美 元都立高校校長
小野忠光 元都立高校校長
鍵山充尚 元都立高校校長
金子広志 私立高校校長
金崎 満 元都立養護学校校長
金本武光 元公立小学校校長
加納 暁 元公立中学校校長
菅野亨一 元私立高校校長
北村 廣 元私立高校校長
葛岡 隆 元私立専門学校校長
桑原徳治 元都立高校教頭
河野 正 元公立小学校校長
功力俊文 元私立小学校校長(*元公立を訂正)
行田稔彦 元私立小学校校長
小宮 誠 元公立小学校校長
齋藤教子
酒井 巌 元都立高校教頭
坂根信義 元私立中学高校校長
坂本 功 元都立高校校長
佐々木美鈴 元私立高校教頭
佐藤正男 元公立小学校校長
佐藤正広 元公立小学校校長
佐藤睦郎 元公立小学校校長
志田春一 元公立小学校校長
城 善範 元都立高校校長
白川茂一 元公立小学校校長
鈴木貞雄 元都立高校教頭(特認校長)
鈴木 茂 元都立養護学校校長
鈴木 淳 元都立高校校長
鈴木昭二 元私立高校校長
鈴木良雄
澄川宏三 元公立中学校校長
瀬川 寛 元私立高校教頭
仙仁 宏 元公立小学校校長
高田岩男 元都立高校校長
高橋昭一 元公立小学校校長
竹浪隆良 元都立高校校長
田村利樹 元公立小学校校長
立川禮子 元公立小学校校長
東谷 仁 元私立高校校長
土肥信雄 元都立高校校長
中村俊一 元公立小学校校長
中野 章 元都立高校校長
平山耕佑 元北海道立高校校長
原口宇平 元都立高校教頭
藤巻宏三 元公立中学校校長
真壁茂樹 元公立小学校長
増島髙敬 元私立高校副校長
宮城島勝史 元公立小学校校長
三上 満 元看護学校校長
峰岸純夫 元都立高校校長
森 孝 元公立小学校校長
宮澤春好 元都立盲学校校長
望月道子 元私立高校教頭
矢沢幸一郎 元公立小学校校長
山野井髙男 元都立高校校長
山口 勇 元都立養護学校校長
山田 功 元看護学校校長
山本千尋 元公立中学校校長
渡部謙一 元都立高校校長

その他の賛同者
元公立小学校校長 8名
元公立中学校校長 3名
元都立高校校長 7名
元都立高校教頭 1名
元都立養護学校校長 1名

以上93名