希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

マイケル・ジャクソン Black or whiteの深さ

長らく英語の授業では英語の歌や映画を使ってきたが、昨年から「英語の歌と映画だけ」の授業をするようになった。

もちろん、教材はすべて自前。
準備はたいへんだが、やりがいがある。何より、発見が楽しい。

食わず嫌いだったマイケル・ジャクソンの曲の「深さ」も、発見の一つだった。
戦争を止めよう、地球環境を守ろうと歌うHeal the WorldEarth Songなどは、東京電力福島第一原発の大事故の後だと、なおさら心に沁みる。
そして、彼のメッセージを長らく受けとめてこなかった自分を恥じる。

Black or Whiteも「発見」の一つだ。

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歌詞もすごいが、John Landis監督によるプロモーションビデオが秀逸。
アメリカでも日本でも、放送局は世界の民族の顔が入れ替わりつつ曲が終わる部分で切ってしまう。
プロモの後半を流さないのだ。理由は、暴力的だ、卑猥だからだと言う。

しかし、この後半部こそ必見である。
そこに込められたメッセージをぜひ理解したい。

布石は歌詞にも込められている。
たとえば、I ain't scared of no sheets.
DVDの日本語字幕では「シーツなんか怖くない」訳されている。

おいおい、誰だってベッドのシーツなんか怖くないだろう。

プロモの映像にもかすかに映るが、このsheetsは白人優越主義の人種差別集団KKKクー・クラックス・クラン)のこと。
頭からすっぽり白い布(シーツ)をかぶっていることに由来する。

マイケルは、人種差別主義者なんか恐れないぞ!と歌っているのである。

さて、プロモーションビデオの後半。
まず収録が終わったスタジオに突然、黒い彪が現れる。
それが、マイケルに化身する。

黒い彪を英訳すれば、Black Panther.
アメリカの急進的な黒人解放運動組織を連想させる。

人間に変身したマイケルは、ゲットーを思わせる汚れた街で自動車の上に乗り、いろいろなものをぶち壊す。

これが暴力的だ、破壊を扇動している、という浅薄な理解で放送局は映像を流さないのだが、よく見てほしい。
マイケルが壊しているのが何かを。
画面では一瞬なのでスロー再生をお勧めする。

まず側面のガラスには、HITLER LIVESヒットラーは生きている)と書かれている。
おまけにナチスのカギ十字(ハーケンクロイツ)まで付けられている。
ネオナチのしわざだ。

後部のガラスには、NIGGER GO HOMEと書かれている。
差別語を使っての「黒んぼは出て行け」というスローガンなのである。

フロントガラスには、NO MORE WETBACKS.
Wetbacksとは、米国に不法入国したメキシコ人労働者への差別語。

これら3つの差別落書きを、マイケルはたたき割ったのである。

続いて車のハンドをはずし、近くの家の窓ガラスに投げつける。
激しく割れるガラス。

しかし、その窓にはKKK Rules と書かれていた。
「このあたり一帯は、KKKが支配している」というわけだ。

マイケルが激しい怒りの形相で打ち壊そうとしたのは、こうした人種差別主義だったのである。

かくして、破壊を終えたマイケルは再び黒豹(ブラックパンサー)に変身して去っていく。

以上が、DVD「マイケル・ジャクソン・グレイテスト・ヒッツ~ヒストリー」でのBlack or Whiteの後半の映像。

他にもメッセージが隠されているかもしれない。ご存じの方はご教示を。

このプロモ、必見ですよ!