希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英語教科書 修正の歴史(戦後70年の英語教育を考える・1)

今年は戦後70年。

明治初期に誕生した陸軍と海軍は1945(昭和20)年の敗戦とともに約70年で終焉したから、戦後70年とは近代日本のちょうど「後半部分」ということになる。

現政権が「積極的平和主義」を掲げて、日本国憲法が理想とした平和主義とはかけ離れた方向に日本をもっていこうとしているいま、日本近代140年の歴史のなかで、後半70年の意味を再考する意義は大きい。

私の今年の目標の一つは、英語教育史に即して「戦後70年」の意味を考えることである。

そのための基礎作業は、「戦前70年」の英語教育史を「戦争」をキーワードに再考することだと思っている。

そのため、いま戦前の日本陸海軍の(特に士官養成教育における)英語をはじめと外国語教育の実態を調べている。

それと同時に、英語教科書を主な材料に、戦前の日本の学校英語教育は「戦争」をどう教えたのかを調べている。

これらの基礎作業を、日本の英語教育界はどこまで真剣に行ってきたのだろうか。

真剣にはやってこないまま、封印し、あるいは忘却しているだけではないのか。

しっかり総括しないまま、とりあえず蓋をし(あるいは占領軍に蓋をされ)、「戦後70年」を過ごしてきたから、またぞろゾンビのように軍国主義の亡霊が復活するのではないか。

調べれば調べるほど、そんな思いに駆られる。
先行研究があまりに少ないのだ。

今ごろ、なんで戦前の墓を暴くのか、と言われるかもしれない。

しかし、調べれば調べるほど、また、ほのかに死臭が漂うような昨今の政治的空気に触れるにつけ、嫌な仕事ではあっても、研究者の責務として「ゾンビの墓あばき」をしなければならないと思う。

そんなことを考えていたら、共同通信社から取材があった。

担当者は極めて有能かつ誠実な人で、「戦後70年 ゼロからの希望」シリーズの第3回として、見事な記事を配信してくださった。

少なくとも全国の25紙が掲載した(する)という。

手もとには共同通信や友人知人経由で送っていただいた大分合同新聞(1月24日)、信濃毎日新聞山形新聞(以上1月26日)、茨城新聞愛媛新聞(以上1月27日)があるが、本文は同じでも見出しや写真のレイアウトが違うのが面白い。

大分合同新聞ーー修正された英語教科書
信濃毎日新聞ーー価値観投影 英語の教科書 修正の歴史
愛媛新聞ーーーー不遇の英語教育
などなど。

他の新聞ではどんな見出しなのでしょう?
ご存じでしたら、教えて下さい。

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【参考資料】 文部省検定で Japanese が Nipponese に修正された実業教育振興中央会編『英文通信』(1943年4月5日検定済)。

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敗戦直後の「墨ぬり英語教科書」等については、大修館書店『英語教育』2006年12月号に掲載した「墨塗り英語教科書と戦後の教材・題材史」や拙著『日本人は英語をどう学んできたか』(研究社、2008)を参照してください。