日本における学習英文法史の戦後編となると、抽出が実に難しいものです。
なんせ数が多いから。
なんせ数が多いから。
それに、各自の「思い入れ」もあるでしょうから、「なんで、あの本がない!」というお叱りも受けるでしょう。
ということで、あくまで江利川の独断に基づく、「これだけは欠かせない」と思われる本やシリーズに限定させていただきました。
また、1人の著者につき原則として著書は1点としました(シリーズものの編集等は別です)。
また、1人の著者につき原則として著書は1点としました(シリーズものの編集等は別です)。
ああ、怖い!
日本における学習英文法 関連年表(戦後編)
1949:昭和24年 吉川美夫『英文法詳説』文健書房 *型・用法・意味から詳解
1951:昭和26年 荒牧鉄雄『現代英文法』三省堂 *動詞・構文に力点を置いたロングセラー
1954:昭和29年 大塚高信ほか編「英文法シリーズ」(全14巻25分冊、研究社、~1955)
*後に3巻本の「特装版」も。
*後に3巻本の「特装版」も。
1956:昭和31年 太田朗『英文法・英作文:整理と拡充』研究社 *文法と作文を有機的に統合
1957:昭和32年 金口儀明ほか「現代英文法講座」(全11巻、研究社、~1959)
1958:昭和33年 中学校学習指導要領、文法・文型を学年別に固定、法的拘束力を持たせる。
1958:昭和33年 江川泰一郎『英文法解説』金子書房 *学習文法に科学文法を加味
1959:昭和34年 皆川三郎ほか「実践英文法シリーズ」(全8巻、泰文堂)
1961:昭和36年 江川泰一郎ほか「教室英文法シリーズ」(全8巻、研究社、~1969)
1966:昭和41年 井上義昌『詳解英文法辞典』開拓社、1966 *諸説を集大成した辞典
1967:昭和42年 大塚高信編「英語の語法・表現篇」(全12巻+語彙篇1巻、研究社出版、~1969)
1967:昭和42年 杉山忠一『英文法の完全研究』学研 *レベルに合わせて学べる
1970:昭和45年 高梨健吉『総解英文法』美誠社 *親切で詳細な記述
1976:昭和51年 荒木一雄ほか編「現代の英文法」(全12巻、研究社出版、~2001)
1978:昭和53年 荒木一雄ほか著『学習英文法』(現代の英語教育 第7巻)研究社出版
1978:昭和53年 高校学習指導要領告示、検定英文法教科書が消える。
1982:昭和57年 荒木一雄監修「講座・学校英文法の基礎」(全9巻、研究社出版、~1985)
1985:昭和60年 山口俊治『英文法講義の実況中継』語学春秋社 *数百万部突破
1986:昭和61年 臨時教育審議会第二次答申が中・高の英語教育を「文法知識の習得と読解力の養成に重点が置かれ過ぎている」と断罪、コミュニケーション重視を要望
1986:昭和61年 黒川泰男『英文法再発見:コミュニカティヴ グラマーへの道』三友社出版
1998:平成10年 中学校学習指導要領、英文法指導についての記載なし。
2000:平成12年 経団連「グローバル時代の人材育成について」で英会話中心の授業を要求
2005:平成17年 安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社 *畢生の大著
2007:平成19年 中学校学習指導要領、文法は「用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう配慮し、実際に活用できるように指導すること」(高校も同じ)
<所感>
文部省は1958(昭和33)年の中学学習指導要領で文法・文型を学年別に固定し、法的拘束力を持たせたかと思ったら、1978(昭和53)年の高校学習指導要領では検定英文法教科書を廃止し(関係者は「自由化」だと言うが)、一転して文法軽視に。
文部省は1958(昭和33)年の中学学習指導要領で文法・文型を学年別に固定し、法的拘束力を持たせたかと思ったら、1978(昭和53)年の高校学習指導要領では検定英文法教科書を廃止し(関係者は「自由化」だと言うが)、一転して文法軽視に。
1990年代からのオーラル「コミュニケーション」ブームで、文法はさらに日陰の地位に転落した。しかし、英語の学力は著しく低下し、2007(平成17)年の指導要領では「文法については,コミュニケーションを支えるものであることを踏まえ,言語活動と効果的に関連付けて指導すること」として、文法を復権させた。その都度、現場は引き回され、あるいは地下非合法の「オーラルG」で危機をしのいだ。
いま大切なことは、(1)日本人EFL学習者にとっての学習英文法の意義を再確認し、(2)現代的な用法・語法に即して学習英文法を吟味・精選し(けっこう古い用法・語法も混在している)、(3)ライティングや会話などでの運用と結びつけて定着を図ることではないか。
ああ、9.10慶應シンポが楽しみ!