このシンポで、僕は「学習英文法の歴史的意義と今日的課題」と題してプレゼンします。
その20分のために、幕末以降の「学習英文法史」をたどる上で、「これだけは欠かせない」という文献をリストアップし、読み直しています。
もちろん、これ以外にも無尽蔵と言っていいほどあるのですが、「最低限これだけは」というリストです。
まずは、戦前編。*以下はごく簡単なコメントです。
まずは、戦前編。*以下はごく簡単なコメントです。
日本における学習英文法 関連年表(作成・江利川春雄)
1795:寛政7年 L. Murray. English Grammar. *日本の初期英文法研究に影響大
1804:文化元年頃 中野柳圃(=志筑忠雄1760~1806)がオランダ語文法を大成。
1814:文化11年 本木正栄ほか『諳厄利亜語林大成』 *日本最初の英語品詞論を記載
1866:慶應2年 足立梅景編述『英吉利文典字類』 *『英吉利文典』解読用の参考書で冠詞、名詞、形容詞、三単現、過去分詞、関係代名詞などの文法用語を和訳
1870:明治3年 大学南校助教訳『格賢勃斯(カッケンボス)英文典直訳』(2冊) *官学系文法書
1871:明治4年 青木輔清編述『英文典便覧』忍(おし)県洋学校〔埼玉〕。 *日本人が執筆した日本人用英文法書の第1号。
1875:明治8年 ブリンクリー『語学独案内』 *お雇い外国人による日本人向け文法書
1880:明治13年 W. D. Cox. A Grammar of the English Language for Japanese Students.(全2巻) *のちに文部省検定済教科書に
1891:明治24年 斎藤平治『英文法講義』有朋堂 *本格的な邦語英文法書
1906:明治39年 関露香『受験応用英文法辞典』臼井書店 *日本初の英文法辞典
1913:大正2年 山崎貞『自修英文典』(→1922年『新自修英文典』) *文法参考書の代表格
1915:大正4年 入江祝衛編『作文本位 英文法辞典』博育堂 *語法辞典の先駆
1917:大正6年 細江逸記『英文法汎論』文会堂 *体系的な科学文法書
1924:大正13年 H. E. Palmer, A Grammar of Spoken English. *口語英文法
1931:昭和6年 バカーリ『英文法通論』英文法通論発行所 *イタリア人による実用英文典
1936:昭和11年 岩崎民平『英文法の教授と問題』(英語教育叢書)研究社
1937:昭和12年 メドレー・村井知至『三位一体 綜合英語の新研究』泰文堂 *文法+解釈+作文
1939:昭和14年 河合茂『英文法概論』京極書店 *内外の文法理論を包括した大著
1945:昭和20年 海軍兵学校『英語参考書 英文法(前編)』 *敗戦直前の英文法参考書
*最後の海軍兵学校の英文法参考書は、敗戦3カ月前の1945年5月に広島県の江田島で兵学校生徒用に刊行されました。勤労動員のため、一般の学校では英語教育どころではなかった時期です。僕はこの超レアな参考書を、当時の兵学校生徒だった方から頂きました。記してお礼申し上げます。
(戦後編につづく)