希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

安井稔先生ののTOEIC論

安井稔先生(東北大学名誉教授)といえば,日本英語学会初代会長を務められた英語学の泰斗として,紹介するまでもないでしょう。

先生は1921年のお生まれですから,90歳を超すご高齢です。
それでも,私たちが慶應義塾大学で行った「英文解釈法再考」(2010)や「学習英文法:日本人の英語学習にふさわしい英文法の姿を探る」(2011)などのシンポジウムには欠かさず出席され,貴重なコメントをいただきました。

大津由紀雄さんのブログから教えてもらったのですが,その安井先生が『Web英語青年』4月号にTOEICの賢い利用法」という論考を寄稿されました。
http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/03_webeigo/webeigo/prt/12/EigoSeinen1204_3.pdf

大津さんは次のようにコメントされていますが,同感です。

「この論考はTOEIC問題に悩んでいるお方にとって必読ともいえるものです。
安井先生の着眼点と鋭い分析に圧倒されます。」

たとえば,以下の記述です。

○ 全国の大学の4割で,TOEIC 600点以上あれば4単位を与えているが,「愚挙の極みである」。

○ 「TOEICの得点は全世界に通用するグローバルスタンダードであると考えている向きが多いと思われるが,それは虚妄である。」

TOEICの点数が高ければ,それだけ英語の実力が身についている度合いも高いといえるのかというと,「この相関関係は成立しない」。

○ 「英語力はテストによって身につくようになるものではない。」

そして,最後の一文です。

○ 「英語という言語は,みかけより,ずっと難しい言語であるからだ。」

まさに,圧巻の文章です。