希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考える、和歌山大学江利川研究室のブログです。

英学史学会での展観資料(1)

前回ご紹介したように、2012年10月20(土)~22日(月)の日程で、和歌山大学教育学部において日本英学史学会第49回全国大会(和歌山大会)が開催されます。

会員以外の一般参加者は無料ですので、この機会にぜひお越しください。

大会では、幕末以降の日本人がどのように英語を学んできたのかを跡づける基本資料を展示する資料展観「日本人の英語学び史」が開催されます。

資料展観の日時は、10月20日(土)が10:30~17:30、21日(日)は9:00~15:30までです。

資料は以下のジャンルに分けて展示する予定です。

1. 幕末~明治初期の英学文献
2. 和歌山ゆかりの英語教材
3. 英語関係学校資料
4. 英語教授法・指導書
5. 英語辞書
6. 英語学習参考書
7. 英語雑誌・通信教育テキスト
8. 明治前期の舶来英語教科書
9. 明治後半~大正期の文部省著作・検定済英語教科書
10. 小学校用の英語教材
11. 戦時下~敗戦直後の英語教材
12. 周辺諸国の英語教科書(参考)

私の所蔵資料ですので、すべて手にとってご覧いただけます。
一部を除き、写真撮影も可能です。

このブログでも、展示予定の資料をレアなものを中心に、随時紹介していきます。

今回紹介するのは、大阪外国語学校『中学校に於ける外国語に就いて』(1924年3月刊)

現在、拓殖大学附属図書館に1冊所蔵されているのみで、国会図書館にもないレアな資料です。

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大阪外国語学校は1921(大正10)年に官立学校として設立され、現在の大阪大学国語学部の前身です。

この時期の中学校の外国語は、法令上は英語、仏語、独語と定められていましたが、実際には「独語又は仏語を教授する中学校は漸く其数を減じ、現在僅に各一二校に止まり、他は挙げて英語を教授するの実況なり」といった実情でした。

そうした実情をふまえて、この20ページほどのパンフレットには、同校の5人の教官による文部大臣への「中学校ニ於ル独逸語及仏蘭西語ノ学級増設ノ建議」や統計資料・補足意見などが収録されています。

「序」では、同校校長の中目覚が、「全国中学校中に独逸語仏蘭西語の学級を増置して中学校に於ける外国語教授を英語のみに限るか如き偏傾的状態を漸次改新するの必要を認め理由を具して文部大臣に建議せり」と力強く述べています。

学校設立から3年足らずで文部大臣に堂々たる意見書を公開で提出したとは、実にあっぱれです。

今日でも、日本の外国語教育政策は世界に例がないほど「英語一辺倒」です。

限定された範囲ではあれ、1920年代に「外国語教授を英語のみに限るか如き偏傾的状態」に対する是正を求める意見書が文部大臣に提出されていたことは記憶されるべきでしょう。

ぜひ和歌山大学で、現物を手にとってご覧ください。