希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英語教育史料

戦時下における女学生の英語学習記録を入手

韓国のソウルでの大学院生との研修旅行から戻ると、資料が届いていた。 太平洋戦争期に高等女学校の生徒が書き残した日記帳の原本である。 内容を分析した限りでは、埼玉県立熊谷高等女学校(熊谷女子高等学校の前身)に通っていた生徒のものだと思われる。 …

英語都々逸の魅力

ずっと欲しかった「英語都々逸」(えいごどどいつ)の本を入手した。 ウィキペディアによれば、都々逸(どどいつ)は、江戸末期に初代の都々逸坊扇歌(1804年-1852年)によって大成された口語による定型詩。 七・七・七・五の音数律に従う。五字冠りと呼ばれ…

「日本人の英語学び史」史料目録(2)

11月13日、ついに新著『協同学習を取り入れた英語授業のすすめ』(大修館書店)が発売になりました。 Amazonでは、即日完売! がんばれ! (^_^ さて、2012年10月20~21日に、和歌山大学教育学部で開催された日本英学史学会第49回全国大会(和歌山大会)での…

「日本人の英語学び史」史料目録(1)

2012年10月20~21日に、和歌山大学教育学部を会場に、日本英学史学会第49回全国大会(和歌山大会)が開催されました。 その企画の一環として、資料展観「日本人の英語学び史」を開催し、300点の資料を展示しました。 →過去ログ その折には、学生・院生に手伝…

英学史学会での展観資料(7)辞書

「辞書」というのは、語学屋にとって同志であり戦友であり神様です。 そんな辞書の中から、歴史的な価値の高いものだけを厳選して展示したいと思います。 といっても、この分野では愛知大学の早川勇先生や、香川大学の竹中龍範先生がすごいコレクションをお…

英学史学会での展観資料(6)英語の受験参考書

日本人の英語学び史を考える上で、「受験参考書」の役割は欠かせません。 なのに、これまでまとまった研究書はありませんでした。 なので、昨年に『受験英語と日本人:入試問題と参考書からみる英語学習史』(研究社)を出版しました。 おかげさまで様々な反…

英学史学会での展観資料(5)敗戦直後の墨ぬり英語教科書

しばしば誤解されていることが多いのですが、太平洋戦争下でも英語教育は続けられていました。 敗戦前年の1944(昭和19)年にも、国民学校(小学校)高等科用の国定教科書『高等科英語』(全1巻)や、中学校用および高等女学校用の準国定教科書『英語』が刊…

英学史学会での展観資料(4)敗戦直後の英語ブーム

1945(昭和20)年8月15日の敗戦。 アメリカを中心とする連合軍(占領軍)が日本に進駐すると、それまでの「鬼畜米英」から一転して、空前の英語ブームが起こります。 日本英学史学会第49回全国大会での「資料展観 日本人の英語学び史」では、そんな激動期の…

英学史学会での展観資料(3)初期の英語独習誌

日本英学史学会第49回全国大会での「資料展観 日本人の英語学び史」では、英語独習用の雑誌・通信教育教材も展示します。 明治10年代末は世に言う「鹿鳴館時代」で、極端な欧化政策がとられていました。 そのため、明治17-18年頃から英語ブームが沸き起こり…

英学史学会での展観資料(2)

10月20(土)~22日(月)に和歌山大学教育学部で日本英学史学会第49回全国大会が開催され、幕末以降の英学・英語教育関係資料が展示されます。 今日も学生・院生らとあれこれ議論しながら、展示すべき資料を選定しておりました。 そうした中で、昨年度から…

英学史学会での展観資料(1)

前回ご紹介したように、2012年10月20(土)~22日(月)の日程で、和歌山大学教育学部において日本英学史学会第49回全国大会(和歌山大会)が開催されます。 会員以外の一般参加者は無料ですので、この機会にぜひお越しください。 大会では、幕末以降の日本…

神戸港に英語学校を設立(明治12年)

すごい雨でしたね。 和歌山市では和田川が氾濫し,周囲6㎏圏内が水に浸かっています。お見舞い申し上げます。 私の地域では被害はありません。 さて,レアな資料が届きした。 1879(明治12)年に,兵庫県令が神戸港に英語学校の設立を認可した公文書です。 …

田中菊雄『入門英文法』(1956):なつかしの英文法参考書5

アップルの創業者、スティーブ・ジョブス(56歳)が亡くなった。 年齢的には、僕の同級生だ。 我が家にはアップル社のマックが7台。 僕はMacBook Proを毎日使い、出張では軽いMacBook Airを使う。 電話はiPhone、通勤途中にはiPad、テーブルの上にはiPad。 …

明治6年「外国語学校教則」

今日のお昼も美味いラーメンを食べてきたのですが、「原稿の神様」を引き降ろすために、ラーメン・ネタは後回しにして、英語にちなんだことを書きます。 で、9月17-18日に県立広島大学で開催された日本英語教育史学会全国大会の資料展観(写真)の中で最古の…

黒田巍・吉田正俊『全講英文法』(1957):なつかしの英文法参考書4

前回紹介した太田朗『英文法・英作文ー整理と拡充ー』(1956)では、「文章論〔統語論〕を先に展開し、文構成の要となる動詞について徹底的に分類・解説し、それから名詞に始まる品詞論を展開している。/この点でも、本書は明治期・岡倉由三郎以来の東京高…

太田朗『英文法・英作文ー整理と拡充ー』(1956):なつかしの英文法参考書3

連載3回目も依頼を受けた本にしました。 今年の3月30日に、慶應大の大津由紀雄さんから要旨以下のようなお尋ねがありました。 (新学期準備と大震災でバタバタしているうちに、お返事が9月になってしまいました。ごめんなさい。でも、ギリギリ9.10慶應大「…

宮田幸一『教壇の英文法』(1961):なつかしの英文法参考書2

連載第1回で紹介した松井孝志さんの御質問に次のような一文がありました。 「『教える』側から文法を見直す際に宮田幸一『教壇の英文法』 (研究社) は昭和の英語教師、英語教育にとって一定の役割を果たしてきたように思うのですが、どうでしょうか?江利川…

毛利可信『ジュニア英文典』(1974):なつかしの英文法参考書1

今日から9月。秋です。 本日9月1日は、本ブログの開設2周年記念。 この間、多くの人たちと交流できて、本当に楽しかったです。 これからもよろしくお願い申し上げます。 さて、9月10日(土)に慶應義塾大学日吉キャンパスで開催される英語教育シンポジウ…

英語通信教育史の新資料

日本における英語の通信教育は、いつから始まったのだろうか。 そんな疑問を抱いてから数年、ずっと資料を追いかけてきた。 この種の資料は図書館にもほとんど無いから、やりがいがある。 本ブログを開設した翌日の2009年9月2日にも、「明治の通信教育資料1…

『阪出譚話会報告』②(1886)

3連休はいかがでしたか? 僕は大修館書店の『英語教育』10月増刊号の原稿に追われ、文字通り缶詰状態でパソコンに向かっていました。(泣) 雑誌の7ページ分というのは、けっこうキツイのです。 昨日(20日)は大形台風の和歌山直撃で大学は休講。 「ヒマだ…

『阪出譚話会報告』①(1885)

自由民権運動の高揚もピークを過ぎ、明治10年代後半は不平等条約改正をめざして「欧化主義」が高まる。 そんな1885(明治18)年、現在の香川県坂出市(当時は阿野郡坂出村)で住民有志が「阪出談話会」を設立した。一種の地域文化サークル活動と言えよう。 …

東京大学予備門の誕生(1877)

1877(明治10)年、東京開成学校などを母体に東京大学が設立される。 だが、まだ中学校や高等学校が整備されていなかった。 そこで、東京大学に入学する者への準備教育機関として東京大学予備門が発足する。 ある意味では、東大が入学者を確保するために自前…

明治6年の英語学習記録

文明開化が国是となり、西洋文明が一気に流入してきた明治初期。 そのころの英語学習はどんな姿だったのだろうか。 その一端を示す史料をこのほど入手した。 第一益所日暦 といい、文庫本ほどのサイズの寫本14 丁。 2533(1873)明治6 年8 月、武州の根岸毅…

明治中期の基本例文集『英文和訳五百題』(1894)

このブログへのコメントでも、鈴木長十・伊藤和夫の『基本英文700選』に対するさまざまな評価が交わされている。 また、『基本英文700選』のルーツについてもご質問をいただいた。 そこで、今回は次のレアな本を紹介しよう。 新楽金橘著『英文和訳五百題』金…

幻の左翼英語教本『プロレタリア英語入門』(1932)

本日6月11日は、脱原発世界同日アクションの一環として開催される「原発いらん!関西行動 第2弾―関電は原子力からの撤退を」の日。 御堂筋をデモするのは学生時代以来。わくわく。 で、出発前に大急ぎでレアな資料を紹介します。 松本正雄著『プロレタリア英…

太平洋戦争下の英語教材 THE SCHOOL WEEKLY

太平洋戦争下でも英語教育は続けられていた。 今年2月に放映されたNHK(ETV)の番組「歴史は眠らない」で放映された「英語・愛憎の二百年」]で、その事実をお話しした。 鳥飼玖美子先生(立教大学)との対談形式で、実際の資料を交えながらの楽しい時間だっ…

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(16)

昨日は愛知県半田市での講演で、「協同と『学び愛』でよみがえる英語授業」と題してお話ししてきました。 駅の売店ででNewsweek (ニューズウィーク日本版) 2011年 05/25号を見かけたました。 特集は「日本人と英語」。明治以降の日本人と英語との関わりをふ…

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(15)

新緑の美しい季節になりました。 明日からゼミの無人島サバイバル合宿(とは言っても、和歌山市の友が島)ですので、取り急ぎ伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読むの第15回目をお送りします。 今回は第9章 共通関係で、この後が最後の第10章 挿入と基…

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(14)

新学期の慌ただしさの中で間が空いてしまいましたが、伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読むの第14回目をお送りします。 例によって、容量の限界まで画像をアップし、解説は最小限にします。 この間、いくつかのご質問を頂いていますが、回答するにはか…

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(13)

第7章 副詞的修飾語 伊藤和夫の『新英文解釈体系』(1964)は本文593ページ大冊で、「あとがき」を含めて302ページの『英文解釈教室』(1977)の2倍近い。 修飾関係についての記述も豊富で、「第6章 形容詞的修飾」は64ページ(『英文解釈教室』では18ペ…