希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

大学におけるアクティブ・ラーニング

教師が大量の受講生を相手に一方的に行う「講義」。
その限界が指摘されて久しい。

そんな折り、文部科学省の科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会が2013年8月に「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」を発表し、学生同士が協同的・能動的に学ぶアクティブ・ラーニングの本格導入を促している。(安達理恵先生のFacebookから教えてもらいました。感謝!)

必要とされる予算措置などの面で課題も多いが、大学の授業スタイルを転換する必要があることだけは確かだ。

キーワードは「アクティブ・ラーニング」。

答申では、「アクティブ・ラーニングの推進により、各教科の内容だけでなく、情報リテラシーやICTリテラシーのほか、批判的思考、問題解決力が身に付き、コラボレーション〔協働〕やチームワークと言った21世紀を生き抜いていく力が養われる」として、各大学は「ニーズや特性等の状況に応じて、ユニークで効果的なアクティブ・ラーニングのための基盤整備を展開すべきである」としている。

この点については異議はない。

すでに2012年8月の中央教育審議会答申では、「従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要」と、授業改革の方向性を提案している。

その方向性は、2013年6月の「教育振興基本計画」でも継承されている。

アクティブ・ラーニングの実施のためには、図書館等の条件整備や、人的な支援体制、情報ネットワーク・システムなどのICT活用が不可欠だ。

ただその前に、予算が乏しいというなら、せめて固定式に机と椅子を可動式に変えてほしい。
実にささやかな要求だ。

私が勤務する和歌山大学教育学部では、大教室を除いては固定式の机・椅子がどんどん可動式に置き換えられ、机を合わせての協同学習にすぐ移行できるようになった。

ただし、多くの大学ではまだまだ固定式の机・椅子も多いようだ。
名前を出して恐縮だが、非常勤で出講している大阪大学の外国語学部では、ほとんどが旧式の固定机・椅子ばかり。

私はすべての授業を少人数のグループによる協同学習を取り入れているため、毎年のように可動式机の教室をお願いし、暗に改修工事をお願いしているが、いっこうに改まらない。

国語学部こそ少人数での対話や討論の機会を設けて積極的にコミュニケーションを図らせる必要があると思うのだが、現実は厳しい。

固定机でも無理して協同学習を取り入れ、グループ討論、班別の模擬授業や成果発表会などを行っている(下図 *なお、空席があるのは学生の半分を空き教室に移しているためで、実際の受講生は満杯状態。)。
実にやりにくいが、一方的な講義よりもはるかに学生たちは生き生きと活動し、学習効果も高い。

イメージ 1

大学の教室から固定机の一掃を!

現実的には、まずこれが急務だと思う。

もちろん、政府は大学予算をせめてOECD並みに増やすべきだ。
竹槍ではB29と戦えないのだから。