希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

3.10長崎英語教育シンポでの講演要旨

シンポジウム「日本の英語教育の現状と課題」~新学習指導要領・入試改革と向き合う

日時: 3月10日(土)13:00~17:00

場所:長崎大学文教キャンパス 文教スカイホール
  (長崎大学グローバル教育・学生支援棟4階)

講師:江利川春雄、鳥飼玖美子、大津由紀雄斎藤兆史

懇親会:
場所:フラワーメイト (https://www.hotpepper.jp/strJ000032819/appearance/)
時間:18:30〜2時間程度
会費:3,500円

要申込: シンポは参加無料、先着200名まで

連絡先:長崎大学言語教育研究センター
(TEL 095-819-2077 EMAIL: gengo_c@ml.nagasaki-u.ac.jp)
* c の前に_ があるので、要注意!

ご案内↓


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4人の講演要旨をお送りします。(登壇順)

新学習指導要領の問題点

江利川 春雄(和歌山大学教育学部

 政府の教育政策の基調は、「結果の平等主義から脱却し、トップを伸ばす戦略的人材育成」(教育再生実行本部、2013)であり、上位1割の「グローバル人材」育成に特化している。
 この路線に沿って、新学習指導要領(外国語)は、①小学校英語の早期化・教科化、②中学校語彙の実質2倍化と内容の高度化、③中高での英語による授業、により英語格差を早期化し、エリート抽出機能を強化した。史上最悪の学習指導要領である。
 私たちは、①主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を、全員に豊かな学びを保障し、自律学習者=批判的主権者を育成する「協同学習」に組み替え、②小学校英語を国語教育と連携した「ことばの教育」に置き換え、③反知性主義的な政策に学理と検証で反論し、④次の指導要領で英語を教科から除外させ、⑤官邸主導の政策決定システムを民主的に再編させよう。技能主義と競争主義を超え、心豊かな人間を育てる外国語教育を追求し続けよう。


大学入試改革について

鳥飼玖美子(立教大学名誉教授)

 高大接続という名の下に計画された大学入試改革は、現行のセンター入試を廃止し、新たな共通テストが2020年より開始される。その中で深刻なのが、英語に民間試験を導入する案である。
 なぜ民間試験なのか。文科省の説明によれば、学習指導要領で英語の「4技能」を指導するのだから大学入試で「4技能」を測定するのは当然である、しかし数十万人に及ぶ受験生の「話す力」を測定するのは共通テストでは開発に時間がかかり難しいので民間業者のテストに委ねる、という理屈である。
 この問題について、「民間試験とは何か」という説明から始め、「どうして民間試験は大学入試に不適格か」という理由を、教育の質、経済格差、公平性、透明性などの面から論じる。さらに、「4技能」を総合的に考えず、入試という特殊な場で「話す力」を個別に測定することの弊害も論じる。
 大学入試とは、高校教育と大学教育を繋ぐ重要な存在である。受験生の一生を左右する存在でもある。教育的な視点に立ち、大学入試のあり方を慎重に議論することを提案したい。


英語教育と国語教育の連携

大津由紀雄明海大学副学長)

 さまざまな問題を含んだ次期学習指導要領ではあるが、演者は、中長期的視点に立ったとき、この学習指導要領には、英語教育の将来に向けて新たな一歩を踏み出すための萌芽的要素が(密かに)埋め込まれていると考えている。それは複言語・複文化主義の視点であり、具体的には、「英語教育と国語教育の連携(関連)」に向けた動きである。この講演では、① なぜ連携なのかという基本的問いに答えたあと、② どんなイメージを思い浮かべればよいのかについてできるだけ具体的に述べることにしたい。


学校英語教育の可能性と限界

斎藤兆史東京大学大学院教育学研究科)

 日本の学校における従来の英語の指導法が他教科にない批判の的になる大きな理由の一つは、それが「失敗」であると認識されているためである。筆者はこれを、日本の英語教育に関する「失敗仮説」と名付けた。失敗であるとすれば、その原因を突き止めなければならない。そして、その原因としてその都度槍玉に上げられてきたのが、文法・訳読式教授法、教師の英語力、英語教育の開始時期、教授言語としての日本語、そして今度は大学入試である。
 しかしながら、学校という枠組みとその役割を考えた場合、そこでの英語教育にはできることとできないことがある。そして、できることは極めて限られている。拙話では、「失敗仮説」を批判的に検証し、限られた範囲内で学校英語教育に何ができるかを論じたい。


このあと、フロアを交えて全体討論です。

ぜひ、お越しください。

また、拡散していただければ嬉しいです。