希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

『英語教育のポリティクス』(三友社出版、2009)

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2009年8月に『英語教育のポリティクス:競争から協同へ』(三友社出版、本体2,200円)を上梓しました。
いま政府や財界が進めている<競争と格差>の教育政策を、<協同と平等>の教育政策へと転換させる必要があるとの思いで執筆しました。


《書評・紹介》 *とても感謝しております。

○ 小山内洸氏 『新英語教育』(三友社出版)2009年12月号、pp.60-61
「一読して啓発された。わが国の外国語(特に学校英語)教育政策はどうあるべきかを論じた労作である。」

○ 綾部保志氏 『英語教育』(大修館書店)2009年12月号、p.12 
文科省により進められている外国語教育政策、特に、新指導要領の内容(小学校への外国語活動導入、高校でのオール・イングリッシュの授業など)についての問題点が浮き彫りにされている。」「豊富な資料を用いて論拠を示しているので説得力がある。」
 *この論文は、「英語教育ニュース」(電子版)に全文紹介されました。→英語教育ニュース

○ 三浦孝氏『英語教育』(大修館書店)2010年1月号、pp.91-92
「日本の英語教育を、その背後に働く政治的動きと圧力で切ってみせたのが本書である。非常に豊富なデータ・資料・文献を根拠として提示した、見事な切り口である。」
「本書を読めば巨大なポリティクスが、国民のニーズを無視して英語教育を、日本の環境に合わないESL型の少数エリート育成の方向にまい進させつつあることがよくわかる。」

○ 柳瀬陽介氏『英語教育』(大修館書店)2010年10月増刊号。「英語教育図書:今年の収穫・厳選12冊」(82頁)。
「事実・論理・信念に基づいているから主張に説得力がある。」
「大規模社会での諸権力は緊張的均衡にあるべきだ。これが民主主義の精髄である。英語教育界も緊張的均衡が必要だ。そのためにも本書は必読。」

○ 奥侑樹氏(広島大学)の「奥ISM」


『英語教育のポリティクス』 目次

はじめに

第1章 <競争と格差>から<協同と平等>の英語教育へ

1. 下がる英語力、増える英語ぎらい
2. 「第二言語」(ESL)と「外国語」(EFL)の混同
3. 「授業は英語で」の危険性
4. 競争と格差の英語教育政策
5. 財界の多国籍企業化と「英語エリート」育成
6. 子どもの実態に即した授業改善を
7. 小学校英語という「無理難題」を乗りこえるために
8. 目的論の大切さ
9. 人間性を育む教材・ことばへの気づき・学びの共同体を
10. 新自由主義が破綻した今がチャンス

第2章 英語教育の<いま>を問いなおす
     ―英語教育時評2005~2009―

1. 2週間に1つの言語が消滅
2. 「英語戦略構想」の中間総括を
3. 英語科教育と歴史認識
4. 習熟度別編成の再検討を
5. コミュニケーション重視と学力低下
6. 迷走する小学校英語
7. 過労死線上の教師たち
8. 世界史未履修問題対岸の火事
9. 格差社会の英語教育
10. 広がる「学びの共同体」
11. 恥ずべき教育予算
12. 新学習指導要領の危うさ
13. 文科省の「完敗」と新指導要領の迷走
14. 小学校外国語活動と言語意識教育
15. 財界主権下の高校新指導要領

第3章 英語教育の<政策>を問いなおす

1. 「英語が使える日本人」育成計画への異論
英語教育の迷走と「戦略計画」/学習指導要領との不整合/教員の点数管理と強制研修の問題/英語エリートの育成に特化/戦略計画の経緯と背景/問われる英語教員の教育観
2. 「英語が使える日本人」育成計画と集中研修の問題点
「行動計画」の研修講師を体験して/集中研修の問題点/教員の研修権を活かすために/研修を教育統制の手段にさせない
3. 学習指導要領から見た授業の変化と展望
週6時間・30名以下を主張した第一次指導要領/コース分割と文法・文型学年指定の失敗/「週3」とコミュニケーション重視/学力低下と教科書の内容/2008年の新学習指導要領と教育再生懇報告/今後への要望と展望
4. 英語至上主義政策で進む少数言語の危機
グローバル化の陰で/言語帝国主義論/少数言語の絶滅問題/言語政策研究と多言語主義/教材と言語観の吟味を

第4章 英語教育の<歴史>を問いなおす

1. 英語教科書は韓国・朝鮮をどう扱ってきたか
教科書に映し出された日韓関係(明治・大正期)/KoreaからTy??senへ(昭和戦前期)/沈黙から反省へ(戦後期)
2. 日本軍中国占領地の英語教科書
中国占領地の統治と教育政策/占領地での外国語教育政策/占領地で刊行された英語教科書/日本軍占領地の教科書が提起するもの
3. 敗戦占領下の国定教科書Let's Learn English
誕生の秘密が明らかに/敗戦前後の英語教科書と時代背景/LLEの執筆者と編集過程/LLE誕生の歴史的意味

第5章 英語教育の<名著>を読みなおす

1. 中村敬著『英語はどんな言語か:英語の社会的特性』
2. 高梨健吉著『日本英学史考』
3. 宮崎芳三著『太平洋戦争と英文学者』
4. 斎藤秀三郎著『齋藤和英大辞典』(新版・CD-ROM版)
5. 寺田芳徳著『日本英学発達史の基礎研究:庄原英学校、萩藩の英学および慶應義塾を中心に』
6. 斎藤兆史著『英語達人列伝:あっぱれ、日本人の英語』
7. 山口誠『英語講座の誕生:メディアと教養が出会う近代日本』
8. 伊村元道著『日本の英語教育200年』
9. デイヴィッド・クリスタル著『消滅する言語:人類の知的遺産をいかに守るか』
10. 三浦孝・中嶋洋一・池岡慎著『ヒューマンな英語授業がしたい!:かかわる、つながるコミュニケーション活動をデザインする』
11. 中村敬・峯村勝著『幻の英語教材:英語教科書、その政治性と題材論』
12. 奥野久著『日本の言語政策と英語教育:「英語が使える日本人」は育成されるのか?』

英語教育改革関連年表
主要参考文献
初出一覧
あとがき
索引