30回以上にわたって、明治から昭和までの「英文解釈」に関する参考書を紹介してきた。
もっと紹介したいものも少なくないが、きりがないので、ひとまず終了としたい。
もっと紹介したいものも少なくないが、きりがないので、ひとまず終了としたい。
ここで、ちょっと休もうかなという気もした。
でも、書庫で眠る参考書たちから、「ぼくもステージに上げて」と言われているような気がして、なんだか寝付きが悪い。
でも、書庫で眠る参考書たちから、「ぼくもステージに上げて」と言われているような気がして、なんだか寝付きが悪い。
という次第で、今度は「英作文」を取り上げることにした。
ついでに、旧タイトルの「懐かしの・・・」もやめよう。
明治の参考書を懐かしがる人なんていないし・・・
明治の参考書を懐かしがる人なんていないし・・・
ということで、「英作文参考書の歴史」とした。
もとより体系的な記述ではないが、今度はおおむね古い順に紹介したい。
もとより体系的な記述ではないが、今度はおおむね古い順に紹介したい。
南日恒太郎の『和文英訳法』(1904)
○ 南日恒太郎著・神田乃武閲『分類詳解 和文英訳法』有朋堂、1904(明治37)年5月10日初版発行。本編105頁+別冊「英文之部」(解答)58頁。索引等はない。
英文タイトルはHelps to Translation from Japanese into English.
明治期を代表し、英語参考書の「南日時代」を告げた『難問分類 英文詳解』(1903)の翌年に出た姉妹編である。
南日恒太郎の人物誌については「懐かしの英語参考書(24)南日恒太郎『難問分類 英文詳解』(1903)」参照。
構成は以下の通り。
第一編 Tenseの用法
第二編 句法及構成法
第三編 雑纂
英文之部
第二編 句法及構成法
第三編 雑纂
英文之部
英文を構成する要は、動詞(南日は「働詞」)だ。
その動詞の活用でまず出くわす難問が、英語特有の豊富な時制。
だから、南日は最初に時制(tense)の練習から入っている。
現在形(進行形を含む)から未来完了まで進み、最後に「Tenseに於ける和英の差異」を詳しく述べているのも卓見だ。
各文法項目とも、簡潔で要領を得た文法解説の後に、10題ほどの豊富な例題を通じて理解を深めさせようとしている。註釈も親切だ。
なお、本書の総例題数はちょうど300である。
第二編「句法及構成法」では、「・・・・なりと云ふ」「・・・・と云ふ話だ」「・・・・ださうです」といった日本語の言い回しを「分類」し、それぞれに対応する英語表現を練習する。
いわば本書の中核部分だ。
いわば本書の中核部分だ。
第三編は「雑纂」と、そっけないタイトルが付けられているが、内容は「応用練習問題」。
短文練習と長文練習から成る。
短文練習と長文練習から成る。
そのため、「緒言」の末尾には「帝国聯合艦隊大挙して旅順の敵艦隊に逼り其の旗艦を轟沈したる後一週日」とある。
本書の例文も「題の軍国に関するもの多き」(緒言)となっている。
たとえば、最後の2つの例文(299と300)は、いずれも日露戦争の戦況を伝える「公報」からのもの。
「廣瀬中佐の戦死」は同年3月27日、つまり刊行の1カ月ちょっと前だったから、きわめて臨場感のある教材となっている。
たとえば、最後の2つの例文(299と300)は、いずれも日露戦争の戦況を伝える「公報」からのもの。
「廣瀬中佐の戦死」は同年3月27日、つまり刊行の1カ月ちょっと前だったから、きわめて臨場感のある教材となっている。
南日はこの参考書の「増訂版」(1907)で、さらに忠君愛国主義を強めていく。