希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英学史学会での展観資料(6)英語の受験参考書

日本人の英語学び史を考える上で、「受験参考書」の役割は欠かせません。

なのに、これまでまとまった研究書はありませんでした。
なので、昨年に『受験英語と日本人:入試問題と参考書からみる英語学習史』(研究社)を出版しました。

おかげさまで様々な反響をいただき、受験英語参考書を学問的に再評価しようという動きや、絶版参考書を復刻する動きも出てきているようです。
(「お前の本のおかげで、オークション価格が上がってしまった」というお叱りも受けましたが・・・すみません・・・僕も困っています。)

ということで、10月20-21日の日本英学史学会全国大会では、代表的な受験参考書も展示することにしました。

とはいえ、膨大な参考書の中から選りすぐるのはたいへん。
悩んだ末に、50点ほどに絞ろうと思います。
(なお、いくつかはこのブログでも紹介してきました。)

まずは、やはり明治末期の「南日」でしょう。

南日恒太郎、神田乃武校閲 難問分類 英文詳解 1903.06.26(初版発行日、以下同じ)
南日恒太郎、神田乃武校閲 英文解釈法 1905.06.09
南日恒太郎 増訂 和文英訳法 1907.02.03

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南日に続くのは、やはり大正期からの山崎貞でしょう。

山崎貞 公式応用 英文解釈研究(初版) 1912.10.01
山崎貞 新自修英文典 1922.02.25
山崎貞 新々和文英訳研究 1925.05.10

写真は、お馴染み「新々英文解釈研究」の出発点となった初版初刷本です。

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大正後期に華々しく登場し、一気に受験生の心をつかんだのが、小野圭次郎。
さまざまなバージョンがありますが、状態のよい戦後版を展示する予定です。

小野圭次郎 改訂増補 新制 英文の解釈研究法 1921.09.05
小野圭次郎 新制 英語の文法研究法 1928.05.25
小野圭次郎 最新研究 英語の単語 覚え方と適訳の仕方 改訂増補(昭和20年版) 1931.01.11
    *なんと、1945年の敗戦の年に出たレア本です。
小野圭次郎 改訂増補 新制 英語の作文研究法 1938.05.23
小野圭次郎 改訂増補 新制 英語の熟語研究法 1948.12.30改訂初版
小野圭次郎 改訂増補 新制 英語のアクセント 発音および読み方研究法 1949.05.25

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戦前から戦後まで多数の参考書を世に送り、日本英学史学会の会員でもあった荒牧鉄雄先生の参考書も敬意を込めて展示いたします。

荒牧鉄雄 参考書 現代英文解釈 新版 1 1934.05.18
荒牧鉄雄 参考書 現代英文法 新版〔第3版〕 1 1951.03.20
荒牧鉄雄 参考書 現代英作文 新版〔第3版〕 1 1951.03.30

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めずらしいものでは、東大生が作った下の参考書なんてどうです。

東大学生文化指導会編、朱牟田夏雄監修 大学への英文解釈 1953.08.25

坪内逍遥に続いてシェイクスピアの全戯曲を翻訳した英文学者の小田島雄志氏が、東大の学生時代に参加しています。

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僕の大好きな美しすぎる参考書も手にとってご覧ください。

河村重治郎、吉川美夫、吉川道夫 新クラウン英文解釈 1969.06.10

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日本統治下の韓国で発行された以下の本も注目したいです。

金東成 速成 英語独学 The English-Korean Handbook 1926.08.20

発音カードや単語カードなどで学んだ歴史も忘れてはなりません。

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このほか、森修一、岡田実麿、竹原常太、赤尾好夫、海軍兵学校柴田徹士らの参考書も展示します。

受験英語参考書を手に取ると、「本音の英語学び史」が見えてきます。

キレイゴトではない、リアルな学びの実態をつかむことこそが、今後のリアルな政策の基礎なのです。

(つづく)