「受験界の権威者」によるトピック方式の英作文
○ 須藤兼吉『英作文新講』中大出版社、1950(昭和25)年4月発行。3+1+334頁。英文タイトルはThe Standard English Composition.
写真は1952(昭和27)年9月10日第4版(刷)
須藤兼吉は1888(明治21)年に長野県に生まれ、1911(明治44)年に東京外国語学校英語科を卒業。東京高等商船学校(現・東京海洋大学)や神奈川大学の教授を務めた。旺文社顧問。英文学研究のかたわら戦前から検定教科書や参考書を数多く著し、『英文解釈の徹底的研究』(欧文社、1932)は150版以上、『和文英訳の徹底的研究』(欧文社、1933)は80版以上も版を重ねた。
この他、『高等英作文』(四條書房、1935)、『須藤新上級用英作文』(全3巻、北星堂、1941)、『英文解釈新講』(中大出版社、1951)、『日米会話必携』(J.A.サージェントと共著、旺文社、1947)などがある。
この他、『高等英作文』(四條書房、1935)、『須藤新上級用英作文』(全3巻、北星堂、1941)、『英文解釈新講』(中大出版社、1951)、『日米会話必携』(J.A.サージェントと共著、旺文社、1947)などがある。
1936(昭和11)年の欧文社の広告は、須藤を「日本の受験界否語学界の権威者」として紹介し、あの原仙作『英標』の上に載せている。
著者の考えはPREFACE(序)によく示されている。
この「序」に続き、「英作文十則」が提示されている。
「(1)英文法に注意を払うこと」、「(2)冠詞に特別の注意を払うこと」から始まり、「(7)文はできるだけ易しく書くこと」などを経て、最後は「(10)一人の立派な文学者の文をmodelとすること」まで。
どれも「そう、そう」とうなずきながら読める。
以上の基本原則を確認した上で、いよいよ本編に入る。
全体は14章で、「天候」「運動」「健康」「病気」など、すべてトッピック別の構成である。
各章とも、まず「予備知識」として、基本的な例文を解説付きで提示している。
「完全に暗記しておく必要がある」とクギを刺すことも忘れない。
「had betterの後ろにはtoなどを入れない」とか、「umbrellaのspellingに注意せよ」とか、受験生がミスしがちなポイントを的確に押さえている。
次いで「問題」が提示される。そのあとの「研究」では、例題に関連した豊富な例文がヒントとなっており、それらを自分でよく考えて活用すれば「問題」の英文が書けるように工夫されている。
安易に語句の英訳を付けるよりも、よほど実力が付き、達成感がある方式だといえよう。
安易に語句の英訳を付けるよりも、よほど実力が付き、達成感がある方式だといえよう。
「訳例」は必ず2つずつ付いており、しかもかなりタイプの違う英文を提示している。
各章末には当時の進学適性検査問題や入試問題から採られたと思われる「設問」が付けられている。ただし、単純な文法、語法、アクセント等に関する平易なもので、本文の和文英訳問題とどう関連するのかわからない。不可解な「設問」だ。
巻末には31頁におよぶ詳細なINDEX(索引)が付けられており、一種の「英作文辞典」としても使える。対応する英語を添えてくれればもっとよかったが。
この参考書のようなトピック別の構成は、当該分野に関する英語表現を集中的に学べるので、自由英作文などへと発展させやすい。
ある程度の基礎ができている中・上級者向けの指導法であるといえよう。
おおまかに言えば、英作文参考書は以下の4つのタイプに別れるような気がする。
(1)文法規則の応用として英作文につなげる「文法文型タイプ」。
(2)文の表現形式や構造理解に中心を措いた「公式応用タイプ」。
(3)須藤のような「トピック別タイプ」。
(4)以上をとり混ぜた「アラカルト・タイプ」。
(2)文の表現形式や構造理解に中心を措いた「公式応用タイプ」。
(3)須藤のような「トピック別タイプ」。
(4)以上をとり混ぜた「アラカルト・タイプ」。
どのタイプかについては、必ずしも時代の流行があるわけではなさそうだ。
著者の好みで左右されるのかもしれないし、英作文指導には「これ!」といった決まったスタイルがないのかもしれない。指導の難しい領域なのだ。
著者の好みで左右されるのかもしれないし、英作文指導には「これ!」といった決まったスタイルがないのかもしれない。指導の難しい領域なのだ。
結論をあせらず、もっと個別の観察を続けよう。