希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

受験英語と参考書の歴史2:戦後の英文解釈を中心に(その1)

幾人かの方からリクエストをいただきましたので、日本英語教育史学会第26回全国大会(2010.5.16 秋田市)で発表した「受験英語と参考書の歴史(2)戦後の英文解釈を中心に」のハンドアウトを、簡単な解説を付けて、数回に分けて掲載いたします。

イメージ 1

本発表は、2010年3月に院生の松田佳奈さんと県立広島大学で発表した「受験英語と参考書の歴史(1)明治期を中心に」に続くものです。

前回の発表では、主に明治10~30年代の受験英語と参考書の生成期を扱いました。
そこでの結論をまとめると以下の通りです。

イメージ 2

本来でしたら、このあと大正、昭和戦前期へと続くはずですが、今回の発表ではあえて戦後(1950年代~80年代)の大学入試を対象とし、英文解釈に焦点を当てて考察しました。
この時期の先行研究がたいへん少ないからです。

発表の概要は以下の通りです。

イメージ 3

この時期の受験英語の研究には、少なくとも以下の4つ材料を調査する必要があります。

なお、4の「受験参考書の内容分析」については、本ブログで50回以上にわたって連載してきました。(新学期の膨大な仕事量で、最近ペースが落ちていますが、続けますよ!)

イメージ 4

戦後の入試問題の分析に重宝なのが、いわゆる「電話帳」と呼ばれた過去問集です。

旺文社の『全国大学入試問題正解』各年版
研究社の『英語入試問題の徹底的研究』各年版

イメージ 5

写真は、僕の研究室に置いてあるもので、自分で持っていたものや、予備校講師時代の同僚から送られたもの、退職した高校の先生からもらったものなどで、ほとんど揃っています。
(なお、この「電話帳」は、古書市やオークションで1冊1万円ほどの値が付くことがあり、今では貴重なものです。)

続いて、旺文社の『傾向と対策 英語』各年版が重要です。
毎年の出題傾向を分析しており、それらを経年的に調査すると出題傾向の変遷がわかります。

イメージ 6

ただ、この本も他の受験参考書と同様に、図書館にはほとんどなく、またオークションでも高値が付けられており、研究者泣かせです。
(現在、ヤフー・オークションで1冊5万円もの値段が付けられているものもあります。これは法外だと思いますが)。

今回、僕がもっていない分は、国会図書館本をコピーしてもらいました。
発行元の旺文社で調査させてもらおうと思ったのですが、ほとんど所蔵されていないとのことでした。

それにしても、参考書を投機の対象にするようなことは絶対にやめてほしいです。
不要なものは、ぜひ僕らのような研究者に寄贈してください。(^_^;)
必ず社会に還元しますから。
<m(_ _)m>

さて、こうした材料をもちいて分析した結果は、次回にお示ししましょう。

(火曜日は阪大外国語学部の授業のため、往復6時間通勤で、へとへとなのです・・・おやすみなさい。zzz...)