5. 入試語彙の減少
戦後の入試問題が一貫して長文化してきたことは前回述べましたが、使用される語彙はどんどん減少していきました。
つまり、易しい単語の英文が増えたのです。
つまり、易しい単語の英文が増えたのです。
1950年代や60年代には8千~9千の語彙力が受験生に求められていました。
旺文社の「傾向と対策」でも、「少なくとも1万語をマスターしなければならない」と述べていました。
旺文社の「傾向と対策」でも、「少なくとも1万語をマスターしなければならない」と述べていました。
そうした語彙減少の背景には、文部省の学習指導要領が戦後一貫して語彙を削減してきたという「行政指導」がありました。
中高合わせた語彙の上限は、1950年代初めに6,800語でしたが、改訂のたびごとに減少し、現行(1998・99年)の指導要領では、合計2,200語まで下がりました。
(かつては2,700と言われていましたが、最近の文科省の公式見解では2,200だそうです。)
(かつては2,700と言われていましたが、最近の文科省の公式見解では2,200だそうです。)
いずれにせよ、英語が「長文化」し、語彙が「平易化」していきました。
この変化は、おのずと参考書の変化を招きます。
この変化は、おのずと参考書の変化を招きます。
旺文社の『傾向と対策』を例に見てみましょう。
このように、戦後直後は「英語の傾向と対策」でしたが、1958年発行の昭和34年版から『英文解釈の傾向と対策』と『英作・文法の傾向と対策』に二分されます。
ところが、1991年受験用から「英文解釈」の文字が消え、『英文読解ベスト30』となります。
明治以来の「英文解釈」が、ついに消えたのです。
解釈や和訳をせずに、「読解」するというわけです。
明治以来の「英文解釈」が、ついに消えたのです。
解釈や和訳をせずに、「読解」するというわけです。
翌年の1992年受験用からは、読解用が『英語長文読解』と『必読英文30選』になります。
「長文」が明示されたわけです。
「長文」が明示されたわけです。
ついでに、『英文法・作文』の方も『英文法・語法・作文』になり、「語法」が追加されました。
こちらも入試傾向を反映しているわけです。
こちらも入試傾向を反映しているわけです。
2001年受験用からは、ついに「読解」さえ消え、『英語長文問題(国公立大2次・私大傾向と対策)』になりました。
読解に偏らず、総合問題として多様な設問を課すようになったのです。
読解力の低下が進んだのも当然です。
読解に偏らず、総合問題として多様な設問を課すようになったのです。
読解力の低下が進んだのも当然です。
1912(大正元)年に初版が出た山崎貞の『新々英文解釈』(研究社)にも変化の波が押し寄せました。
過去ログにも書きましたように、共通一次試験が導入された1979(昭和54)年の9訂版(最終版)では、これまでの短文の和訳にとどまらず、第2部として「長文問題」編を新設したのです。
過去ログにも書きましたように、共通一次試験が導入された1979(昭和54)年の9訂版(最終版)では、これまでの短文の和訳にとどまらず、第2部として「長文問題」編を新設したのです。
しかし、この弟分とも言うべき平易な中原道喜著『基礎英文問題精講』(1982)と、長文対策用の『基礎長文問題精講』(1994)が出され、現在ではこちらの方が売れているようです。
さて、こうした英語入試の変化は、なぜ起こったのでしょうか。
次に、その背景を考えてみましょう。
(つづく)