希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

今日の朝日新聞は英語教育特集!?

本日(8月4日)の朝日新聞は必読だ。

大阪本社版の第1面は「英語授業 助手と連携『偽装請負』」

以前、このブログで紹介した「読売新聞」の小学校外国語活動における「業者委託」の問題性を、さらに深く追求した秀逸の記事。
過去ログ参照

第2面にも請負ALTの実態が詳細に書かれている。

業務委託(請負)を行っている市町村教育委員会の割合は、文科省の調査(2010)で、11都県で半数を超えている。

こうした学校では、法令上、担任教師とALTとが相談もティーム・ティーチングもできないわけだ。

単年度契約で、給料も低く抑えられているなど、ALTの待遇も劣悪きわまりない。

この問題は、小学校だけの問題ではない。
中学校でも高校でも、同じ問題が浮上するだろう。

教育予算をけちった「教育改革」の歪みが、またしても噴出した。
当面、この問題から目が離せない。

もう一つ、朝日は「オピニオン欄」で「授業は英語で」などの問題に関する論争を大きく取り上げている。
題して「これでいいのだ 学校英語」バカボンみたい!)

1面を割いて、右に松本茂・立教大学教授、左に大津由紀雄慶應義塾大学教授を配置し、それぞれ「
英語で表現してこそ身につく」、「文法・解釈・作文が能力を築く」の見出して、意見を闘わせている。

7月11日に僕らが慶應義塾大で行った「英文解釈法再考」のシンポの成果が、大津さんの発言を通じて、さっそく全国誌に掲載された意義は大きい。

この特集を組んで下さった編集委員の刀根立館正明氏は、慶應シンポにも来ておられ、懇親会までお付き合いくださった。そうした丹念な取材に基づく紙面作りである。

松本さんはいつもの調子だが、彼は文部官僚と財界の思いをこう代弁している。

「先生の意識を変えることが求められます。」

彼らに共通するのは、「先生が悪い」という思い込み。
「50分の授業で話すのはほとんど先生、しかも大半が日本語、読むのは教科書の半ページ。」

おいおい! どんな現状認識をしているのだ!?
これでは、ほとんどデマゴーグではないか。

現場で苦闘する教員の実態を正視しようともせず、上から目線で、命令を出してくる。
条件整備のない精神主義
実態を無視した思いつきの方針提起。

昔の大本営参謀と同じだ。

現場を信用せず、バッシングを繰り返す。
専門家委員会の議論も経ずに、英語オタクの学者と教科調査官らだけで打ち出した「授業は英語で行う」。

ただ、松本氏はさんざん批判を浴びたせいか、方針を転換している。

「どうしても必要なら、先生は日本語を適宜使ってもいいと思います。」だって!

なら、指導要領に「授業は英語で行う」などと偉そうに書くな!

事実上の敗北宣言と受けとめたい。

「歴史の審判」のために、今日の記事は切り抜いておこう。