希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英語受験参考書の歴史を訪ねて

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hn2043さんのコメントにありました「英語受験参考書と銘打ったものが何時から始まったかの研究」については、たいへん興味があります。
日本英語教育史がぜったいに避けて通ることのできない「本音の歴史」だからです。

しかし、いざ調べるとなると、なかなか難しそうですね。

英語参考書自体は「独案内」(ひとりあんない)などの形で幕末・明治初期からあります。

「入学試験」という言葉が文部省法令に登場するのは1894(明治27)年とされています(江利川春雄『日本人は英語をどう学んできたか』研究社、20ページ)

英語を含む入学試験用の参考書では、ぼくが知る限り、以下のものが早い時期のものです。(2009.11.6改訂、2010.8.29追補)

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島野広治編『官立学校師範学校試験問題新報 第1号』浩学社(千葉県)、1883(明治16)年6月発行

橋本銀蔵編『官立学校入学試験問題集』島村利助(東京)、1884(明治17)年1月発行

スゥイントン原著、小島守気抄訳、福井彦次郎閲『斯因敦万国史難句解』小島守気(高知)
  1886(明治19)年5月1日発行。 *「難句」を初めて銘記。

矢橋裕編『諸官立学校入学試験問題集』開進堂・十字屋、1886(明治19)年6月発行

岡本信抄訳『英文漢訳和訳即席綴成自在』金松堂、1886(明治19)年8月出版
 *例題には逐語的に発音と意味が付き、和訳、漢訳、訓解と続く。

北畠浄著『和文英訳標準』東京:加藤鎮吉、1887(明治20)年10月出版。
 *表紙の書名:「語学新法応試和文英訳標準」 *「和文英訳」を初めて銘記。

稲葉金次郎編『官立学校試験問題答案』集成社、1888(明治21)年8月17日出版
 *「答案」とあるが、実際には答案(解答)は付いていない。

西田富衛著『明治二十二年実行 各官立学校入学試験問題』有斐閣、1889(明治22)年11月発行

斎藤平治著『難文難句英語詳解』敬業社・丸善商社、1890(明治23)年4月14日発行
  『ユニオン第4読本』『ラセラス』など、8つの出典別解説。
   *タイトルに「難文難句」「詳解」を銘記。

村松直一郎(玄々隠士)『諸官立学校受験者必読入学試験問題答案』博文館、1890(明23)年11月発行

石川雅二『商業学校入学試験問題答案 附商業辞書』博文館、1891(明治24)年4月30日発行

田村左衛士編『官立学校英語科入学試験問題答案』図書出版会社、1891(明治24)年9月発行

谷口政徳編述『諸官立学校受験用新書 及第 上巻』博文堂、1893(明治26)年10月1日発行

新楽金橘『英文和訳五百題』金蘭社、1894(明治27)年1月30日発行

井上十吉英訳・磯辺弥一郎註釈『実用和文英訳教授書』(全2巻)国民英学会、1894(明治27)年3月5日発行

橋本本蔵著『和文英訳法.1の巻 試験問題附録』数理書院(岡山)、1896(明治29)年9月発行
  *岡山の予備校が発行した参考書。

香川初太郎著『英文試験問題答案』武蔵屋、1897(明治30)年11月(受験叢書 第4編)

中村宗次郎著『新式和文英訳秘訣』東京英語学会、1897(明治30)年11月(英語学自修全書 第7編)

田村左衛士『英文難句難語詳解』三省堂、1897(明治30)年12月4日発行

武蔵屋『官立学校入学試験問題 明治三十一年度』武蔵屋、1898(明治31)年(明治33年版は図版参照)

中村宗次郎『受験必携 英和難句詳解 全』東京英語学会、1898(明治31)年6月5日発行

越山平三郎編纂『和訳指針英文問題集』積善館、1898(明治31)年9月19日発行

井上歌郎『英文和訳例題集』岡崎屋・修学堂、1898(明治31)年12月11日発行

こうして、本格的な受験用英語参考書の代表格となる次の本が出されます。

南日恒太郎『難問分類英文詳解』ABC出版社、1903(明治36)年6月26日発行(図版参照)

*ただし、「英文解釈」と銘打った参考書の始まりは、梅沢寿郎『英文解釈法(How To Paraphrase)』大日本図書、1903(明治36)年1月13日発行、です。(2010.1.4追記)

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大正期にはいると、『受験英語』という雑誌が1916(大正5)年9月に創刊されます。主幹は明治大学教授の山崎寿春で、翌年には東京高等受験講習会を開設し、のちに駿台予備学校へと発展します。

その大正以降の受験英語参考書といえば、なんといっても小野圭次郎の「小野圭シリーズ」でしょうね。これはスゴイです! (図版参照)

いつか、新書版のような手軽な装丁で「受験英語の歴史」のようなものを書いてみたいですね。
図版をいっぱい入れて!