希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

伊藤和夫『新英文解釈体系』(1964)を読む(10)

前回このシリーズを掲載したのが3月8日。
3月11日の大震災をはさんで、日本の歴史は大きく転換してしまった。
なんと長い1週間だったことだろう。

復興支援のために関西に住む私たちとしても、出来る限りのことをしたい。
和歌山大学教育学部でも、20日に予定していた退職教員の送別会をホテルではなく学内に切り替え、浮いた資金を復興支援にまわす。
職場でのカンパ活動も本格化する。

他方で、過度に萎縮せず、平常の活動を平常通り行うことも大切だと思う。

本日、地震による後期入試の追試が終わり、ようやく入試の全日程が終了した。
ということで、元気を出して伊藤和夫『新英文解釈体系』の紹介を続けていきたい。

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第5章 同格

冒頭の「この章の課題」では、前半でこれまでのまとめを行っている。
その中で、前置詞と結びついていない名詞は文の基本要素であるという命題を確認している。

ところが、前置詞の付かない名詞が「文の基本要素」にならない事例がある。
たとえば、Freddie had something that I didn't haveーan idea.などの文である。
それが同格だ。

伊藤は同格の定義を「名詞が前置詞の助けをかりずに前の名詞を説明する形は同格関係と呼ばれる」とした上で、「基本原則に対する例外」と規定している。

このあたりの記述は、例文も含めて、『英文解釈教室』Chapter 6 の「同格構文」とほとんど同じだ。
H(<Head:主要語)とA(<Apposition:同格語)についての説明も同じだ。

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伊藤は同格構文を8パターン挙げている(後述)。これは『英文解釈教室』の倍である。
最初は【1】H + Aで、続いて【2】H + A + A + と展開されていく。

【3】H ・・・・・・・・ A(1)は、先行する名詞(H)と、これを説明する名詞(A)の間に語句が入っているパターンで、関係を正しく捕捉することが難しい構文である。

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すべてを紹介する余裕はないが、【7】A = that-clauseでは、(a) The news that he was coming home gave us pleasure.などの例を挙げ、以下のように説明している。

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いずれも、同格の接続詞の後ろがS + V + 〔X + X〕になっている複雑な、かつ入試頻出の構文である。

これらを経て、例によって章末で全体をまとめている。

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同格関係を、1)Hになるものは何か、2)Aになるものは何か、という観点からまとめている。
ここでも、体系的な記述を追求していることがおわかりだと思う。

(つづく)