希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

3.13京大国際シンポ「大学における外国語教育の目的」予稿集(6)

3 月13 日(火)に京都大学人間・環境学研究科で開催される国際シンポジウム「大学における外国語教育の目的」の「予稿集」の続きをお送りします。訳文は「予稿集」のままです。

Barry Jones教授の要旨の最後の部分です。

バリー・ジョーンズ(Barry Jones) ケンブリッジ大学

英語学習プログラムにおける多様な目的:言語能力,言語的および文化的気づき,学び方,そして複言語能力の開発

もし,そのエッセイ集の付録として様々な印刷物や音声が付いていて,その付録の言語は学習者たちの母語であっても英語の説明的なメモがあれば,受け取った学習者はなじみのない言語とその文化の側面を経験することができる。付録は,絵付きのメニュー,新聞,絵葉書(町の様子,国や地方のイベント,観光客用のアトラクション,地方の景色,民族衣装などがわかるもの),スポーツ,雑誌,広告,また他の工芸品などが考えられる。このような交流は学習者の好奇心を増したり,動機づけになることはよくあることだ。なぜなら,学習者たちは他の人の生活やその言語の働きについてもっと知りたいと思うからである。この経験は,文化を伴わないリンガフランカを使う限界や他の言語を学ぶと何の側面が失われているのかをも教えてくれる。

ささやかな始まりではあるが,その例は,言語が文化とどのように関連し,言語が切り離されたものとして存在するわけではないことを示してくれる。最初に出会う別の言語は,異質で理解不能と見えるとしても,すべての学習者は知っている知識を利用して,わからないことを理解することを奨励される。学習者たちは質問すること,差異性や類似性を探すことを巧みな配慮のもとに奨励される。その言語との短い出会いの後で,学習者たちは,固有の文化の枠組みの中に各々の言語の作動システムが埋め込まれていることに理解し始める。

もし,教師がこのような経験が導入として価値があると信じたら教師たちは学習者たちの他の言語に触れることを増やすだろう。学校は言語に関する短期間の学習コースを作ることができる。英国の学校ですべての17歳の学習者には,基礎的な中国語,イタリア語,ウルドゥー語スペイン語,日本語の3日間の集中学習コースが提供されている。学習者は学びたいと思う言語を選ぶ。レッスンはその言語の大人の母語話者によって指導される。どの言語でも話し言葉と書き言葉に焦点が置かれる。3日間の体験には,国民的食事を料理したり,食べたり,国民的な祭りについて知ったり,なじみのない書体で書かれた新聞や,場合によっては,文学作品を見たりする文化的な面も含まれる。もう少し高度な言語学習体験も可能である。自習コースは,旅行したいとか外国語環境で働きたいと希望する大人たちに人気がある。

これらの言語学習体験の目的は学習者たちが,他者とのディスカッションの中で,他の言語を学ぶときに必要なストラテジーでもって,英語を身に着けるときに使ったストラテジーを調べることである。学習者たちは言語学習の中の気づきを認識してきたかを省察すべきである。その気づきとは,たとえ間に合わせであっても,何の規則を自分たちは公式化したか,どのようにして学んだことを思い出すか,そして何を思い出すことが難しいのか,どの音が問題でどの音は問題ではないのか,どの言葉を他との交流で使ったか,何を学ぶことが自分たちの進歩のためには必要か,どの文化的な面を自分のものと感じてきたか,何を発見しさらに追及したいかを突き止めたいか。

これらは,討議する価値がある。複言語的なアプローチを採用することによって,学習者たちは,言語と文化がいかに関係しているか,言語同士が切り離されたものではないということを体験できる。複数の言語は学習者の伝達能力を高め,どのように言語が働くのかについて深い理解を助長する。(酒井志延 訳)

References

CCC (Council for Cultural Co-operation) (2001) Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment (CEFR). Cambridge Cambridge University Press

Jones, B. and Jones, G. (2001) Boys’ performance in modern foreign languages: listening to learners. Centre for Information on Language Teaching and Research

QCA (Qualifications and Curriculum Authority) (2006) Pupil views on language learning. London Qualifications and Curriculum Authority