5月27日(日)に専修大学生田キャンパスで開催された日本英文学会第84回全国大会のシンポジウム「英語の学び方再考:オーラル・ヒストリーに学ぶ」で私が発表した「日本人の英語学習史から学ぶ」のハンドアウトを一部解説付きでお示しします。第3回です。
明治前期までの英語学習では,漢文訓読法のような方法がとられていました。
1872(明治5)年に刊行された英語リーダー準拠の参考書『英学捷解』を見てみましょう。
英文の各単語の下に番号を付けて,その順番に呼んでいけば日本語になるというワケです。
最初の文では,「汝は 輪を 追いやる ところの この 子どもを 見 なすか」という次第です(表記は現代風にアレンジ)。
こんな学習法を余儀なくされていた人たちにとって,理路整然とした英文法の登場はどれほど有りがたかったことでしょう。
英文法は19世紀の初めから一部で研究されていましたが,一般の学習者に広まったのは幕末からです。
このあたりについては,2011年9月に慶應義塾大学で開催された[「学習英文法を考えるシンポジウム」でも報告しましたし,もうじき研究社から大津由紀雄編著『学習英文法を見直したい』(仮題)も出ますので,簡単に述べるにとどめます。
こうして日本人が英文法を学ぶ中で,「使役動詞」「知覚動詞」「分詞構文」「部分否定と全否定」などの文法概念が日本で独自に発展していきました。
この分野では,若き友人である斎藤浩一氏(東京大学大学院生)が精力的に研究を進めています。
その代表作は,Practical English Grammar (1898・99:明治31・32年)です。
ただし,全4巻計1064頁の英文による著作ですので,このままでは普及が困難でした。
ただし,全4巻計1064頁の英文による著作ですので,このままでは普及が困難でした。
この参考書で文法を学んだある中学生は,「僅か一ヶ月にして驚く程,読書力の増進したのを感じて居ります」との感想を述べています。
こうして明治後半期に確立した「学習英文法」は,西洋のGrammar Translation Methodを日本風にアレンジした「日本人の偉大な発明品」と言われる英文解釈法を生み出しました。
こうして,日本人の英語学習は大いに進歩し,入試に出題される難解な英文を読み解くことも可能になりました。
そうした英文解釈書の代表作が,南日恒太郎『難問分類英文詳解』(1903)や『英文解釈法』(1905),そして山崎貞『公式応用 英文解釈研究』(1912)です。
(つづく)