希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

第2期の教育振興基本計画の愚

2013年6月14日、第2期の教育振興基本計画閣議決定された。
http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/

さすが安倍政権。
なんとも恥ずかしい内容である。

何が恥ずかしいか。
まず、肝心の教育予算が増えていない。

文部科学省の原案で「経済協力開発機構OECD)諸国並みを目指す」とした教育予算の上積みは、歳出を抑えたい財務省の反発で見送られた。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201306140035.html

他方、「国土強靱化」を進めるため、公共事業費は当初予算で4年ぶりに増額に転じ、5兆2853億円を盛り込んだ。前年度比で7119億円(15・6%)増の大盤振る舞いである。

政策は予算で決まる。
安倍政権が、どこに向けて政治をしているのかは明らかである。

基本計画の一つの柱は、大学改革である。

しかし、予算を増やさずにどんな改革をするというのか。
いま、日本の高等教育予算が世界各国と比べ、どれほど深刻な状況になっているかは、下のグラフを見れば明らかである。

イメージ 1

イメージ 2

これほど情けない予算状況にもかかわらず、「グローバル人材」を育てるのだという。

なので、英語教育の強化。
しかし、中身は例の「大学入試にTOEFL等」というお粗末さ。

本ブログで一貫して批判してきた内容が、ズラリと並んでいる。

いったい、どこまで教育破壊をすれば気がすむというのか。
アホとしか言いようがない。

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第2期教育振興基本計画(2013年6月14日閣議決定)の外国語教育政策

2.未来への飛躍を実現する人材の養成

成果目標5(社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成)

 「社会を生き抜く力」に加えて,卓越した能力※を備え,社会全体の変化や新たな価値を主導・創造するような人材,社会の各分野を牽引するリーダー、グローバル社会にあって様々な人々と協働できる人材,とりわけ国際交渉など国際舞台で先導的に活躍できる人材を養成する。
これに向けて,実践的な英語力をはじめとする語学力の向上,海外留学者数の飛躍的な増加,世界水準の教育研究拠点の倍増などを目指す。
(※能力の例:国際交渉できる豊かな語学力・コミュニケーション能力や主体性,チャレンジ精神,異文化理解,日本人としてのアイデンティティ,創造性など)

【成果指標】
<グローバル人材関係>

①国際共通語としての英語力の向上
・学習指導要領に基づき達成される英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上,高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上)を達成した中高校生の割合50%

・卒業時の英語力の到達目標(例:TOEFL iBT80点)を設定する大学の数及びそれを満たす学生の増加,卒業時における単位取得を伴う海外留学経験者数を設定する大学の増加

②英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級,TOEFL iBT80点,TOEIC730点程度以上)を達成した英語教員の割合(中学校:50%,高等学校:75%)
③日本の生徒・学生等の海外留学者数,外国人留学生数の増加(2020年を目途に日本人の海外留学生数を倍増など)
④大学における外国人教員等(国外の大学での学位取得,通算1年以上国外で教育研究に従事した日本人教員を含む)の全教員に占める比率の増加
⑤大学における外国語による授業の実施率(外国語による授業/全授業数)の増加
⑥大学の入学時期の弾力化状況の改善(4月以外で入学した学生数の増加)

基本施策16 外国語教育,双方向の留学生交流・国際交流,大学等の国際化など,グローバル人材育成に向けた取組の強化

【基本的考え方】
グローバル化が加速する中で,日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成が重要である。

○ このため,「社会を生き抜く力」の確実な養成を前提とし,英語をはじめとする外国語教育の強化,高校生・大学生等の留学生交流・国際交流の推進,大学等の国際化のための取組(秋季入学に向けた環境整備,海外大学との国際的な教育連携等)への支援,国際的な高等教育の質保証(単位の相互認定,適切な成績評価等)の体制や基盤の強化等を実施するとともに,意欲と能力ある全ての日本の若者に,留学機会を実現させる。

【主な取組】
16-1 英語をはじめとする外国語教育の強化

・ 新学習指導要領の着実な実施を促進するため,外国語教育の教材整備,英語教育に関する優れた取組を行う拠点校の形成,外部検定試験を活用した生徒の英語力の把握検証などによる,戦略的な英語教育改善の取組の支援を行う。また,英語教育ポータルサイトや映像教材による情報提供を行い,生徒の英語学習へのモチベーション向上や英語を使う機会の拡充を目指す。大学入試においても,高等学校段階で育成される英語力を適切に評価するため,TOEFL等外部検定試験の一層の活用を目指す。

・ また,小学校における英語教育実施学年の早期化,指導時間増,教科化,指導体制の在り方等や,中学校における英語による英語授業の実施について,検討を開始し,逐次必要な見直しを行う。

・教員の指導力・英語力の向上を図るため,採用や自己研鑽等での外部検定試験の活用を促すとともに,海外派遣を含めた教員研修等を実施する。また,国際バカロレアの普及のためのフォーラムや教員養成のためのワークショップを開催するとともに,ディプロマプログラム(DP)(※)の一部科目を日本語で行う日本語デュアルランゲージディプロマプログラム(日本語DP)の開発を行う。
※ 国際的な大学入学資格を得ることができる,16~19歳を対象としたプログラム。

16-2 高校生・大学生等の留学生交流・国際交流の推進

・日本人の海外留学者数の大幅な増加(2020年を目途に日本の海外留学生数を倍増(大学等:6万人から12万人,高校:3万人から6万人))を目指し,高校,大学等における留学機会を,将来グローバルに活躍する意欲と能力ある若者全員に与えるため,留学生の経済的負担を軽減するための寄附促進,給付を含む官民が協力した新たな仕組みを創設する。また,地域や高校,大学等における留学情報の収集・提供等の強化を実施するとともに,関係府省と連携し,就職・採用活動開始時期を変更し,留学しやすい環境を整備する。
 さらに,様々な交流機会の提供(外国人留学生と日本人学生・若手社会人との知的交流の促進等)や,子どもたちに国際的な視野を持たせ,留学への機運を醸成する取組の充実等を図る。

・ 「留学生30万人計画」の実現を目指し,大学等の国際化に向けた体制整備,奨学金等の経済的支援,海外拠点を活用した留学フェア等の実施,外国人留学生に対する生活・就職支援等の充実による戦略的な外国人留学生の確保を推進するとともに,留学経験者の把握等ネットワークを強化するなど,優秀な外国人留学生の受入れを促進する。

16-3 高校・大学等の国際化のための取組への支援

グローバル化に対応した教育を行い,高校段階から世界で戦えるグローバル・リーダーを育てる。このため,語学力とともに,幅広い教養や問題解決力等の国際的素養を身に付けさせる教育を行う新しいタイプの高校(スーパーグローバルハイスクール)を創設する。

・グローバル社会に対応するため,我が国の大学等の徹底した国際化を広く促進し,国際通用性の向上を図る。特に,国際通用性の高い教育組織・環境を備え,国際競争力を有する拠点大学を形成するため,英語での授業の実施,外国人や海外で学位を取得した若手の積極的採用などに取り組む大学への重点的な支援を行う。また,国際化や多様な体験活動の促進に資する秋季入学について,各大学における検討状況を踏まえた環境整備に係る支援を行う。さらに,海外大学との共同プログラムの構築等の多様な連携を促進する。

・大学・短期大学,高等専門学校,専門学校等における職業教育の質を保証し,国際的な通用性を確保するため,学修成果を海外で証明できる仕組みの構築や,海外の学校との共同プログラムの実施等を行う。

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これが「政策」と呼べるだろうか。

日本の自己植民地化と沈没を憂える。