ぜひ、意見を寄せましょう。
小学校英語の早期化・教科化、中学校でも「英語で授業」、中学・高校の語彙数の急増と言語活動の超高度化など、1割のグローバル・エリート育成に特化した新学習指導要領案(審議のまとめ)はあまりに危険です。
とりわけ危険なのは、小学校英語の教科化です。
日本の言語環境では、英語は早く始めた方が効果が高いなどとはとても言えません。
英語の学習で大切なことは、早期に始めることではなく、指導内容の質と学習時間の量です。
つまり、児童英語教育に熟達した教師が指導し、1500~2000時間以上をかけない限り、有意な効果は期待できないのです(バトラー後藤裕子『英語学習は早いほど良いのか』岩波新書、2015)。
小学校英語の早期化・教科化は、理論的な裏付けも、実践的な検証も無いまま、財界と政府主導で進められています。
しかし、小学校などの入門期の英語は特に指導が難しく、教員には高い技量が求められます。
単語も文法も知らない子どもに、もっぱら音声で指導しなければならないからです。
単語も文法も知らない子どもに、もっぱら音声で指導しなければならないからです。
ですから韓国では、小学校教員に120時間以上の研修を課しました。
しかし日本では、小学校教員に対するまともな研修がほとんど実施されないまま、見切り発車で強行されようとしています。
全国の小学校は約2万1千校もあり、中学校の2倍、高校の4倍です。
小3以上を担任(つまり英語を指導)する教員は約14万4千人もいます。
小3以上を担任(つまり英語を指導)する教員は約14万4千人もいます。
ところが、国が研修を課す小学校の「英語教育推進リーダー」は2018年度までに全国で1000人だけで、その推進リーダーから研修を受ける「中核教員」は19年度までに2万人(各校に1人程度)にすぎません。
残り12万人以上の研修計画は無いに等しく、大半の教員がまともな研修も受けずに外国語活動や教科としての英語を担当させられるのです。
さらに、教科としての英語は当初は週3コマの予定でしたが、授業時間の確保が困難なため週2コマに減らし、しかも1コマ分は15分×3回程度の短時間学習(帯活動)で埋め合わせようとしています。
これでは学習効果が低い上に、教員の負担が著しく、小学校教育全体を危機に陥れかねません。
英語塾だけがはやり、英語格差が早期化するでしょう。
英語塾だけがはやり、英語格差が早期化するでしょう。
そのため、高学年を担当する小学校教員100人のうち、45人が正式教科化に反対し、賛成は29人しかいませんでした(毎日新聞2016年9月17日)
政府・文科省は、こうした学校現場の声に謙虚に耳を傾けるべきです。
(*9月29日追記 寺沢拓敬先生から、毎日新聞の記事に関して、以下のコメントを頂きました。「毎日新聞の100人アンケートは社会調査としてはかなり怪しいのであまり引用しないほうが良いように思います(今回は反対派多数だったので良いですが、こんなデザインの調査だったら簡単に「操作」されかねません)」。
コメントに感謝いたします。なお、寺沢先生のご意見の詳細は、以下を参考にしてください。)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/terasawatakunori/20160918-00062330/
コメントに感謝いたします。なお、寺沢先生のご意見の詳細は、以下を参考にしてください。)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/terasawatakunori/20160918-00062330/
教科化は実施前から破綻しています。実施すべきではありません。
小学校英語の影響は中学校・高校にも及びます。
新指導要領案では、小学校英語の早期化・教科化を踏まえて、中学校英語の語彙数を現行の1200語程度から1600~1800語へと3~5割も増やす計画です。
その上で、「短い新聞記事を読んだり、テレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができるようにする」といった無謀すぎる目標を盛り込もうとしています。
しかも「授業は英語で行うことを基本とする」との方針を中学校にも押し付けようとしています。
こうした方針を指導要領に盛り込むことは、理論的にも実践的にも誤りですから、やめるべきです。
このままでは、教科書を消化することすら難しくなり、英語ぎらいが増え、小学校からの英語格差が一段と拡大するでしょう。
高校でも語彙数を現行の3千語程度から4千~5千語程度へと大幅に増やし、言語活動を高度化し、しかも「授業は英語で」を継続する方針です。あまりにも無謀です。
新学習指導要領の内容は、明らかに一握りのグローバル・エリート人材育成に重点を置き、大多数の切り捨てと英語ぎらいを加速させかねない危険な方針です。
黙っていられますか?
パブリックコメントは実際にほとんど無視されるのが現状かもしれません。
しかし、記録として残され、情報公開され、政策に一定の影響力を与える可能性もあります。
諦めずに声を上げましょう。