希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英語科における協同学習の原理と実践(8)実践のまとめ

 このブログ連載(6)(7)で展開してきたShow & TellやTriangle Discussionなどの活動をふまえて、英語科における協同学習の効果について、簡単にまとめておきたい。

 高校における授業実践を通して、協同学習における効果を生徒の変容を中心に考察してきた。協同学習を効果的に授業に取り入れることにより、生徒の学びに対する姿勢に肯定的な変化が見られたことがわかる。生徒の実態を正確に把握し、学びが深まるような課題を設定することがfacilitatorとして教師に求められているのである。

 2つの実践を通して明らかになった英語科における協同学習の効果について、以下にまとめてみよう。

 (1) 生徒の学びが深まる
 協同学習では「背伸びとジャンプ」の高い課題設定が求められている。Show & TellやTriangle Discussionなどのような、一人では到達することの困難な目標に向かって他者と協力しながら学び合いを進めていく活動は、一斉型授業よりも学びが深まることが授業観察および生徒の感想から明らかになったと思われる。ただし、これを数値的・客観的に証明することは難しい。

 (2) 学習動機が高まる
 困難な課題を仲間との協力を通してやり遂げることによって達成感や信頼感を味わい、次の活動への動機が高まった。

 (3)学習方略を習得することができる
 英語学習に対して苦手意識を持っている生徒からよく耳にするのが、英語の勉強の仕方がわからないという声である。協同学習を取り入れることにより、他者の多様な学びのスタイルに触れ、自らの学習方略を身につけようとするようになった。

 (4)主体的に学ぶ姿勢が身につく
 自らの学びに責任を持ち、頻繁に辞書を引くなど主体的に学ぼうとする姿勢が見られた。仲間と主体的に進めていく活動を取り入れることにより、自律した学習者へと近づくと思われる。

 以上、良いことばかりのようだが、中西佐江教諭が実施した和歌山県立高校の生徒を観察する限り、良いことばかりなのである。さらに実践を進め、問題点や課題なども明らかにしていきたい。

 なお、(6)Show & Tellのところで紹介できなかった「協同学習(CL)を取り入れた実践の4技能別、学年別、原理別一覧」を中西の修士論文(2009)より紹介しておきたい。
 図中の◎は強い関係、○はある程度の関係を表す。

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(つづく)