前回、岡田実麿の『英作文着眼点』(1911)を紹介し、赤字による添削指導が大きな特長であることを示した。
そうなると、時代は遡るが、やはり日本の英作文参考書で本格的な「添削指導」を最初に取り入れた『和文英訳添削実例』(1899)を紹介しないわけにはいかない。
井上十吉は1862(文久2)年に阿波藩(徳島)に生まれ、1873(明治6)年に英国に留学。小学校から大学までの教育を英国で受け、1882(明治15)年に王立鉱山学校を卒業し、翌年帰国した。
1886(明治19)年に第一高等中学校教授。以後、東京高等商業学校、学習院、東京専門学校、東京高等師範学校で英語を教えた。
1894(明治27)年に外務省翻訳官となり、その後は各種の英語教科書、参考書、講義録、辞書の編纂に従事した。1929(昭和4)年逝去。
1886(明治19)年に第一高等中学校教授。以後、東京高等商業学校、学習院、東京専門学校、東京高等師範学校で英語を教えた。
1894(明治27)年に外務省翻訳官となり、その後は各種の英語教科書、参考書、講義録、辞書の編纂に従事した。1929(昭和4)年逝去。
(1)「課題」として、日本の歴史上の人物に関する邦文が提示される。いくつかに細分化され、それぞれに番号が付けられている。
(2)「訳例」として、井上による課題文の英訳(模範文)が続く。邦文に対応した番号も付けられている。
それにしても、漢文調の日本語が難しい。英語を読んで、初めて意味がわかる言葉もある。
(日本語を添削してくれ~)
(3)「注意」として、各部分の英訳にあたっての文法的、語法的な注意事項が述べられている。
と、ここまでは一般の英作文参考書と同じである。
問題はこの先だ。
(4)「添削」。最初の課題文を例にとると、「甲」「乙」「丙」の順で、合計26もの不完全な答案が示され、どこがどう間違っているかが細かく記されている。
こうした課題文が合計12題とり上げられ、それぞれにつき、上記のような丹念な添削が施されている。
まさに添削に徹した参考書である。
こうした「添削」方式は注目を集めたのか、翌1900(明治33)年8月にはイ-ストレ-キ著『英作文添削詳解』が大学館から刊行されている。
僕も授業で英作文の添削を何度もしてきたし、つい先日も学生の英文添削で髪の毛を掻きむしった。(あの仕事は、ホント毛髪によくない・・・)
英作文の指導には添削が付きものであろう。
英作文の指導には添削が付きものであろう。
でも、いつも思うのは、添削指導は相手がかなり上級者でないと効果が薄いということだ。
せっかく苦労して赤ペンを入れても(すごい労力!)、もらった方はあまりありがたそうにしない。
せっかく苦労して赤ペンを入れても(すごい労力!)、もらった方はあまりありがたそうにしない。
初級者には基本例文の理解と暗記の方が効果的である。
英作文は「英借文」とはよく言ったものだ。
英作文は「英借文」とはよく言ったものだ。
井上の『和文英訳添削実例』のありがたさを実感できるためには、かなり基礎訓練を積んでいなければならないと思う。
型を覚えずに剣道をやったり、コード進行を覚えずにギターを弾いても、なかなか上達しないのと一緒だ。
英作文は特に基本に忠実でありたい。