個性あふれる多角的な英作文指導書
○ 花園兼定『総合的研究 英作文の根底から』北星堂、1928(昭和3)年3月4日発行。英語のタイトルは、EXPRESSION IN WRITING.
序論14+目次14+本論346=374頁。
*写真は1928年4月1日発行の第4版。
花園兼定(はなぞの・かねさだ)は、プロの英文ライターである。
1886(明治19)年に東京浅草に生まれ、1910(明治43)年に早稲田大学英文科を卒業。
『ジャパン・タイムズ』記者などを経て、1919(大正8)年に東京日日新聞社ニューヨーク特派員。帰国後は『英文毎日』の編集に従事し、早稲田第二高等学院教授となった。
号は緑人。著作も多く、生徒向けの『英作文の先生』(1917)、『英文法の先生』(1920)、『英語会話と随筆』(1925)、『英語の童謡と童話』(1927)、さらにジャック・ロンドンの『荒野の呼声』(1932)、ラフカディオ・ハーン『日本瞥見記』(1934)などの訳註書もある。
また、洋学史や英学史の造詣も深く、『異人の言葉』(1934)、『洋学百花』(1939)なども著した。1944(昭和19)年没。
1886(明治19)年に東京浅草に生まれ、1910(明治43)年に早稲田大学英文科を卒業。
『ジャパン・タイムズ』記者などを経て、1919(大正8)年に東京日日新聞社ニューヨーク特派員。帰国後は『英文毎日』の編集に従事し、早稲田第二高等学院教授となった。
号は緑人。著作も多く、生徒向けの『英作文の先生』(1917)、『英文法の先生』(1920)、『英語会話と随筆』(1925)、『英語の童謡と童話』(1927)、さらにジャック・ロンドンの『荒野の呼声』(1932)、ラフカディオ・ハーン『日本瞥見記』(1934)などの訳註書もある。
また、洋学史や英学史の造詣も深く、『異人の言葉』(1934)、『洋学百花』(1939)なども著した。1944(昭和19)年没。
『総合的研究 英作文の根底から』の内容は以下の通り。
章番号は付いていないが、便宜的に通し番号を付けておいた。
章番号は付いていないが、便宜的に通し番号を付けておいた。
序論(INTRODUCTION) 1-14頁
1. 目次〔索引を兼ね詳細〕 1-44頁
2. 練習本〔音読用例文集〕 1-6頁
3. 英作文文典 7-24頁
4. 総合的研究
6. 添削百題〔答案の添削・解説〕 235-280頁
7. 英作文講話〔14講話〕 281-346頁
1. 目次〔索引を兼ね詳細〕 1-44頁
2. 練習本〔音読用例文集〕 1-6頁
3. 英作文文典 7-24頁
4. 総合的研究
〔例題→生徒の草稿→訂正文→発音→文法→会話→練習問題から構成〕 25-138頁
5. 公式五百〔基本例文集500〕 139-234頁6. 添削百題〔答案の添削・解説〕 235-280頁
7. 英作文講話〔14講話〕 281-346頁
このように、たいへん多角的・「総合的」に英作文指導を展開しており、「英作文ハンドブック」といった趣がある。
特徴的な点を見ていこう。
特徴的な点を見ていこう。
まず序論の中で、自著の概要を以下のように述べている。
「反復による記憶のための部分、一般的英語の知識のための部分、理解と判断とに依る部分、作文を中心にしたる文法の説明、言語発想の機会の説明等である。英作文という一つの構築物を立てるために、構成主義の建築を試みたのである。そして『英作文の根底から』の名称の如く、基礎的工事に力を入れたのである。」(7頁)
本体部分である「総合的研究」は、まず短い例題を与え、次に「生徒の草稿」を示し、どこがどう間違っているかを丁寧に説明していく。
それを踏まえて、「訂正文」(正解)を示し、「発音」を添える。正しい発音で何度も音読させるためである。
次に、関連する「文法」解説に移る。
初歩的な事柄から懇切ていねいに説いている。
面白いのは、これまで習ったことを応用して「会話」に移ることである。
全文の発音記号も明記され、音読・暗誦させ、口頭英作文の訓練へとつなげていく。
最後に「練習」に移る。
入試問題も豊富である。
入試問題も豊富である。
「公式五百」は、暗誦用の基本例文集である。複数の英訳例を載せている場合も多い。
英作文は、まずは「英借文」であるから、基本例文の暗記は不可欠である。
こうした基本例文集を載せる発想は、戦後の佐々木高政『和文英訳の修業』(1952)や毛利可信『新自修英作文』(1967)、あるいは駿台予備校の鈴木長十・伊藤和夫『基本英文700選』(1968)などに引き継がれた。
「添削百題」は生徒が誤りやすい英文を100題選び、添削とていねいな解説をほどこしている。
第3回で紹介した岡田実麿『英作文着眼点』(1921)のように赤刷りではないが、訂正した語句を太字で示すなど、分かりやすい工夫を凝らしている。
第3回で紹介した岡田実麿『英作文着眼点』(1921)のように赤刷りではないが、訂正した語句を太字で示すなど、分かりやすい工夫を凝らしている。
本書は通読しても面白い。
花園は浅草生まれのチャキチャキの江戸っ子。
歯に衣を着せぬ物言いが痛快だ。
「今の試験問題出題者は、英語の表現の苦しみをあまり知っていないと思われるように、idiomatic過ぎる題を出しすぎる。」(序論11頁)
「第一は入学試験問題のペテンということである。/今の入学試験は、入学させる試験でなくて、ふるい落とすための試験である。だから、皆がよく出来てくれれば困るのである。(中略)それで問題にペテンを設けることがある。」(305頁)
このあとに、実際の入試問題の「ペテン」ぶりが学校名を明記して示されている。(恐いな~)
僕も入試問題を出題する立場だが、「ペテン師」にならないよう、気を引き締めようっと。
でも、気を「引き締める」ためには「ゆるめる」必要がある。