希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

実用英語講座(1928年開講)

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戦前、エリート教育だった中等学校に進めなかった人たちに英語を学ぶ機会を提供した通信教育。
この埋もれた歴史を発掘したい。
そんな思いで、資料を集めている。

新着資料は、東京外語の片山寛が主幹となった「実用英語講座」(1928:昭和3年1月開講)。

「わずか1ヶ年で日常必須の英語を完全に習得させ直に之を実生活に応用せしめる」ことを謳い文句にしている。
なにやら、昨今の財界や文科省が唱道する「英語が使える日本人」の育成策と同じだ。
EFL(日常生活で英語を使わない「外国語としての英語」)の環境にある日本では、しょせん甘い幻想なのだが。

さて、この通信講座の教授陣が例によってスゴイ。
片山が主幹だけあって、東京外国語学校(東京外大の前身)の教授陣がどっと名前を出している。
その他、錚々たる人たちの名前が続く。

通信教育の「講師陣」には、こうしたビッグネームがよく顔を出すのだが、はたして指導の実態はどうだったのだろう。
名義貸しが多かったのではないかと思う。

「英作文練習欄」では、三省堂の英語参考書で有名になった「荒牧鉄雄」が赤ペンで添削をしている。
明治からの講義録と、昭和の「発明品」である(?)通信添削とがミックスされた過渡期の講座だといえよう。

本ブログでも紹介した欧文社の通信添削が開始されたのは、3年後の1931(昭和6)年だ。
こうした「添削」方式が、やがて爆発的に人気を博するようになる。
ということは、中等学校在校生が受験準備のために通信講座を利用することが主流になったことを意味する。

そうした流れの中に位置づけたとき、この赤ペン添削を売り物にした「実用英語講座」は歴史的な意義をもつようだ。