希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

根岸恒雄先生の新刊『楽しく英語力を高める“あの手この手”』

埼玉を拠点に、英語科における「学びの共同体」づくりなどの卓越した英語教育実践を展開している根岸恒雄先生が、待望の新刊『楽しく英語力を高める“あの手この手”:教科書の扱い・協同学習』を8月に三友社より刊行されました。
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依頼されて書きました拙い推薦文が、「学びの共同体」を提唱されている佐藤学先生の推薦文とともにオビに掲載されており、なんだか気恥ずかしいです。

ですが、まずその推薦文を紹介しましょう。

 オーセンティックな学びを実現する協同的な学び
根岸さんの実践は、英語という言葉を豊かにすることによって、人としての共感能力を高め意味のある世界を開くオーセンティックな学びを実現し、協同的な学びによって生徒達が高まり合う学びの共同体を教室に築いている。これからの英語教育の進むべき道を明快に示した画期的実践である。英語教育に携わるすべての教師に推薦したい。
                 佐藤 学(東京大学大学院教授)

協同的な学びで全員の学力と人間力を伸ばす。そのノウハウが詰った本書は、英語教育の未来を拓く卓越した実践書です。
             江利川春雄(和歌山大学教授)

そうです。
根岸さんのこの本には、協同学習を取り入れて、できる子も苦手な子も全員を伸ばすことで、「英語が楽しくなった」、「学校に来るのが楽しみになった」という子どもたちの喜びがあふれています。

教科書の効果的な活用法や、生徒と一緒にウキウキできる英語の歌など、具体的な授業のヒントと素材がふんだんに収められています。

内容は次の通りです。

「まえがき」では、かなり具体的に本書の特徴と使用上の注意が述べられています。

(1)英語(外国語)教育の目的と私の授業方針 
(2)前著『世界が見える“英語楽習”』の特徴
(3)「楽しく、英語の力を高める」ために進化・発展する実践を紹介
(4)英語科で協同学習を進め、その質を高めるために
(5)教師としての実践力をさらに高める方法は?
(6)英語の歌の扱い方と「お勧め24曲」の歌詞プリント

本編は全8章です。

第1章 授業を始めるにあたり
 (年間見通しや授業方針、授業開き、等)

第2章 Warm Upのヴァリエーションとその効果
 (各種インプット、日常会話、英語の歌、単語テスト、その理論的根拠等)

第3章 教科書を使ってどう教えるか
 (基本文と単語の学び方の具体例、教科書本文の学習法)

第4章 英語の歌は「授業を楽しくさせる“魔法”」
 (英語の歌の効果、使う目的、声を出して歌わせる工夫、歌の導入法:特に
  Reading-Listening方式のやり方・具体例、私が授業でよく使う63曲の紹介)

第5章 協同学習(「学びの共同体」づくり)を進める
 (「学びの共同体」づくりの協同学習とは?、協同学習の意義と要点、取り組んでの

  効果、生徒の声。グループ学習を入れた具体的取り組み。学校全体で協同学習:
  「学びの共同体」づくりに取り組む、2008年度、2009年度の取り組み、先生方の
   声、生徒達の声)

第6章 「世界が見える“英語学習”」Part2
 (自己表現の取り組み、「平和と友好のメッセージ」、「不都合な真実」を扱う、私たち
  らしい「セヴァン・スズキ」をめざそう、4人グループで「火垂るの墓」の多読に挑戦、
  ALTの国への旅行を楽しむ(ALTが作る教材で)、生徒に見せたいビデオ(DVD)
  一覧、スピーチコンテスト参加者の指導を楽しむ、等)

第7章 3年間の授業を生徒はどう思ったのか?
 (アンケート結果、生徒の声)

第8章 英語教師の実践力を高めるために
 (実践力は高まる、私自身の取り組み、実践力を高める「お勧め十カ条」)

資料 そのまま授業で使える「英語の歌」24曲

「あとがき」では、新英研などの民間教育研究団体の取り組みと「学びの共同体」づくり
の取り組みをつなげた意図などが述べられています。

図版や授業プリントなども豊富で、明日からの授業にも活用できるでしょう。

しかし何よりも私が感動したのは、根岸さんの生徒への温かい眼差しです。
「どんな生徒も絶対に英語が好きになる」、「全員が伸びる」という思いがあふれ、本当にそれを実践してしまっていることです。

たとえば、英語が「分からない」と回答した中学3年生は、全国平均で28.3%(2005)ですが、根岸さんの学校では11.8%だけでした(2007)。*本書96頁

ほかにも、驚くことだらけです。

とりわけ、英語科における協同学習の威力をここまで実証した本は他にないでしょう。

本書を自信を持ってお勧めします。

それとともに、根岸実践の種子が、タンポポの綿帽子のように、全国に広がることを願っています。