希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

広島で出会った懐かしい参考書

9月18日、英語教育史学会に先立って友人たちと広島で呑んだ。
いつもとは違う店だったが、これがピンポ~ン ♪♪
おさかなも酒も、とても美味しかった。

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絶品だったのは、生け簀から出したばかりのモンゴウイカのお造り。
まだ生きていて、「ごめんなさい」といいながら美味しくいただきました。(^_^;)

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アカデミー書房では懐かしい参考書に出会った。
武藤たけ雄の『英単語連想記憶術』青春出版社)である。

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英単語を日本語の語呂合わせで覚えてしまおうというもので、たとえばabandon「あ、晩だと勉強捨てる」、algebra「主(あるじ)ブラブラ代数をとく」となる。

毎ページに単語のイメージに合わせたマンガが付いている。
軽妙な、ときに苦しまぎれの語呂合わせにマンガ付きとくるから、思わず笑ってしまう。

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記憶術をウリにした英語参考書は、鳥海岩松『英語記憶術』(1911)をはじめ明治期からあった。
戦後も、岩田一男の『英単語記憶術:語源による必須6,000語の征服』(1967)などが出ていた。

しかし、これらの本にしても、「豆単」や「シケ単」にしても、単語を覚える作業は禁欲的な苦行だった。
ところが、この『英単語連想記憶術』は単語の勉強にバラエティーショーのような笑いを持ち込んだ。
それが、灰色の受験生心理をつかんだのではないだろうか。

実際、クラスの友だちはマンガを読むかのように、この本のページをめくりながら笑い転げていた。
つられて僕も買ったのが1974(昭和49)年の増補改訂版で、1980年には153刷を数えている。大ベストセラーだ。

単語の見出し語は1ページに2語。応用文も付き、関連語句も合わせると約4000語が覚えられるという触れ込みだ。副題には「心理学が立証した、必須4000語の獲得」とある。くすぐるな~。

好評につき第2集も出て、副題には「笑いながら獲得する必須3000語」と書かれている。
第1集と合わせると7000語だから、これで大学入試は万全という気分になる。

1981(昭和56)年には『英熟語連想記憶述』(副題は「面白いくらい頭に入る絶対の1500句」)まで出た。

1988(昭和63)年には単語編の第3集も出て、副題は「10倍速く覚える忘れない2500語」。

第1集と2集は二色刷になるなど改訂され、「デラックス版」と銘打っている。
これらは現在でも書店に並んでいる。

こんな語呂合わせは邪道だ、というのは簡単だ。
たしかに、日本語の語呂を覚えるより、単語そのものを覚えた方が早い、ともいえる。

しかし、難行苦行に疲れ、目前に迫る試験に追い詰められると、人はこういう本にすがりたくなる。
僕もそうだった。

40年経った今も売れ続けているのには理由がありそうだ。