希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

近刊紹介『受験英語と日本人』研究社(1)

みなさんから教えていただいて、僕の近著がすでに研究社のホームページで予告されていることを知りました。ドジな話ですみません。(^_^;)

ということで、実はいま妊娠中なんです。
3月に出産予定。単著としては第4子です。どの子も可愛いですよ。

隠すことでもないので、ちょっぴり照れくさいですが、ご紹介します。

タイトルは受験英語と日本人:入試問題と参考書からみる英語学習史』です。

四六判 並製 300頁/人物誌・図版多数/予価2,100円(本体2,000円+税)
ISBN 978-4-327-41076-6 C0082
研究社から2011年3月22日発売予定

このブログでも「英語教育史料」コーナーで明治期からの受験参考書を多数紹介してきました。
その作業の中で、学習参考書、さらには「受験英語」が日本人(日本に住む人々という意味で、国籍は問いません)の英語学習に果たしてきた役割を光と影の両面からきちんと総括する必要があると思うようになりました。

さらには、予備校や講義録などの通信教育が果たしてきた役割をも正当に評価しなければなりません。

受験英語を抜きに、日本人の本音の英語学習史は語れないのです。
もっと言えば、受験英語を抜きに、日本の英語教育の未来は語れないのではないでしょうか。

たとえば、新高校学習指導要領で「授業は英語で行うことを基本とする」としましたが、もしこの方針を本気で貫く気ならば、「受験英語」(大学入試)とどう折り合いを付けるかを具体的に提示しなければなりません。

現場はキレイ事では動かないのです。

財界や文科省は、英語をグローバル化戦略の一環だとして位置づけています。
しかし、大半の中学生・高校生にとって、英語学習の最大の動機は、試験に合格することではないでしょうか。

英米の植民地にもならず、日本語だけで何不自由なく生活できる日本という環境で暮らす子どもたちにとっては、当たり前の学習方略です。

ですから、明治以来の「受験英語」と、それを支えてきた明治期の南日恒太郎の『難問分類 英文詳解』(1903)、大正期の山崎貞の『公式応用 英文解釈研究』(1912)や小野圭次郎の『英文の解釈』(1921)、戦後の伊藤和夫の『新英文解釈体系』(1964)や『英文解釈教室』などの歴史的意義と限界を総括する必要があるのです。

イメージ 1イメージ 2

こうした受験参考書は、独創的な工夫をこらして、英語をいかにわかりやすく効率的に学習できるかを追求しています。受験参考書こそは、日本人にふさわしい英語学習法の宝庫だともいえます。日本人の英語力向上に果たした役割は計り知れないほど大きいのです。

にもかかわらず、参考書は受験が済めば資源ゴミ。所蔵する図書館はあまりないのが現状です。
まるで、この世に存在しなかったかのように、多くは戸籍謄本も墓碑銘もないのです。

そこで、本書では歴史的な価値の高い英語参考書を豊富な図版やエピソードとともに紹介しました。一面では、このブログの書籍版でもあります。

それらの参考書たちは、日本人の英語学習史を雄弁に物語ってくれると同時に、今日の英語学習にとっても役に立つヒントや勉強法を提供してくれるでしょう。

と、語り出したら熱くなるので、今回はここまでとします
(下の写真は山手英学院時代の伊藤和夫;1952年頃)。

イメージ 3イメージ 4

(つづく)