今年2月に放映されたNHK(ETV)の番組「歴史は眠らない」で放映された「英語・愛憎の二百年」]で、その事実をお話しした。
鳥飼玖美子先生(立教大学)との対談形式で、実際の資料を交えながらの楽しい時間だった。
当時の英語教材を西條ディレクターにお貸ししたところ、テキストにカラーでたくさん載せていただいた。→過去ログ
しかし、しばらくすると「しまった、あれも渡せばよかった、これも渡せばよかった」と悔しい思い。
戦争の火の粉をくぐり抜けてきた資料だけに、大切にし、広く公開したものだ。
さて、そんな心残りの資料として、今回は英語通信社が出していた THE SCHOOL WEEKLY を紹介しよう。
その名の通り週刊の英語学習用の英字新聞。B5版で裏表2面だけの小さな新聞だ。
当時の少なからぬ中学生が、上級学年になるとこうしたWEEKLYを購読して「生きた英語」を勉強していた。
こうした学習用英字新聞としては、現在でも ASAHI WEEKLY や MAINICHI WEEKLY などが発行されている。
戦時下、さすがに記事は戦時色一色だ。
1943(昭和18)年2月15日号は、陸軍の東條英機と山下泰文(ともゆき)を写真入りで紹介し、「最も豪の者は誰か」という記事で始まる。
豊富な註釈を付けて、辞書なしで英文が読めるよう工夫されている。
「記事応用練習問題」では、「わが国民がかかる難局(difficult situation)に直面(to face)したことは有史以来かつて無かった」などの英作文が出題されている。
裏面は、小倉陸軍病院に抑留されているアメリカ人捕虜の書簡文で、「アメリカの人々よ、日本を理解せよ!」と言わせている(容量の関係で省略)。
3月1日号での巻頭論文は WAR AND REVOLUTION、3月8日号は全部が「大東亜共栄圏英語主要地名集」(ともに裏面省略)。
しかし、何のための、誰のための英語教育だったのだろうか。
スキルだけに目を奪われることなく、題材論が大切だ。
英語は単なる技能教科、実技教科ではない。
改めてそう思う。