最近の政府や文科省関係文書を読むと,「協働学習」とか「協働的な学び」という表現をよく目にするようになった。
協同学習(協同学習)は,野党から与党の地位に就いたのか。
例を挙げてみよう。(強調は江利川)
① 2010年6月に閣議決定された政府の「新成長戦略」には,「子ども同士が教え合い、学び合う『協働教育』の実現」が盛り込まれた。
② 2011年8月26日,文科省の「学校教育の情報化に関する懇談会」が「教育の情報化ビジョン(骨子)」を発表した。
そこには「21世紀にふさわしい学び」として,次の一文がある。
「子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学びを構築していくとともに、子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学びを創造していくこと」
③ 2012年6月25日に発表された中央教育審議会教員・資質能力向上特別部会の「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(審議の最終まとめ(案))」にも,次のように書かれている。
今後の教員養成にとって重要な文書なので,少し詳しく引用しておこう。
Ⅰ.現状と課題(抜粋)
○ これに伴い、21世紀を生き抜くための力を育成するため、これからの学校は、基礎的・基本的な知識・技能の習得に加え、思考力・判断力・表現力等の育成や学習意欲の向上、多様な人間関係を結んでいく力や習慣の形成等を重視する必要がある。これらは、様々な言語活動や協働的な学習活動等を通じて効果的に育まれることに留意する必要がある。
○ 今後は、このような新たな学びを支える教員の養成と、学び続ける教員像の確立が求められている。
○ これらを踏まえ、教育委員会と大学との連携・協働により、教職生活全体を通じて学び続ける教員を継続的に支援するための一体的な改革を行う必要がある。
1.これからの社会と学校に期待される役割
○ これに伴い、21世紀を生き抜くための力を育成するため、これからの学校は、基礎的・基本的な知識・技能の習得に加え、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の育成や学習意欲の向上、多様な人間関係を結んでいく力や習慣の育成等を重視する必要がある。これらは、様々な言語活動や協働的な学習活動を通じて効果的に育まれることに留意する必要がある。さらに、地域社会と一体となった子どもの育成を重視する必要があり、地域社会の様々な機関等との連携の強化が不可欠である。
以上は一例にすぎない。
これらは,新自由主義による競争と格差の教育政策が行き詰まりを見せている下で,その対極にある「協働的な学び」(協同学習)を推奨する方向へと転換し始めたことを示しているのかもしれない。
いずれにせよ,いま「協同学習」(協働学習)は旬なのだ。