ゼミ生たちに<プロ教師を超える>授業実践課題を課しました(ちょっとオーバーですが)。
まずは、附属中学校の研究協議会で行われた現職教諭による協同学習を取り入れた授業を、そのまま再現する模擬授業を学生に行ってもらいます。
その上で、改善点を徹底的にあぶり出し、それにもとづいて修正を加え、再び模擬授業で検証します。
もちろん、プロ教師による授業設計があったからこそバージョンアップが可能なのですが、それでも一歩先へと進めることで、学生たちは自信がつきます。
今回の再現授業では、最後のライティングの部分(比較級を用いた表現)で、特定の1人だけで課題をやってしまうことが可能であり、全員の関わり合いが弱い、という問題点が抽出できました。
そこで、全員が関わり合い、みんなの力で英文を創るという活動に変えました。
1.自分を主語に、ほしい物や人を書きます。ただし、wants と than はあらかじめ与えられています。
たとえば、Miyuki wants a ( ) boyfriend than ( ).
2. 次の人が、最初の ( ) に任意の言葉を書き込みます。
たとえば、Miyuki wants a ( taller ) boyfriend than ( ).
3. さらに次に人が、than 以下に任意の言葉を書き込みます。
たとえば、Miyuki wants a ( taller ) boyfriend than ( Takeshi ).
これなら、いかにもありそうな文章です。
ところが、少し意地悪をすれば、
ところが、少し意地悪をすれば、
Miyuki wants a ( taller ) boyfriend than ( Tokyo Sky Tree ).
などと、意味的に「あり得ない!」文章になります。
こうした協同作文によって、自分が思いもかけなかった文(メッセージ)が生まれ、ことばの不思議さに気づきます。
また、文法や文構造が正しいだけでは「意味的な逸脱」が起こることもあるのだと生徒たちは気づきます。
want は、dream や think などと同様に「世界創造動詞」(world-creating verb)ですから、現実世界とは別の、想念の世界を作り出せるので、意味的な矛盾の存在が許されるのです(安藤貞雄『現代英文法講義』579頁)。
ことばは、ときに実態を正確に表すとは限らず、あり得ない世界を創造したり、事実を隠蔽したりできることも学びます。
たとえば、広島に落とされた原子爆弾は Little Boy(おちびさん)、長崎に落とされたのは Fat Man(太っちょ)という罪のない名前でしたが、実態は人類史的な悲劇を招きました。
そうした「ことばの深さ、不思議さ」に気づかせるようバージョンアップしました。
そのあとの山本君の模擬授業も秀逸でした。
詳細は、山本君の報告をご覧ください。