希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

赤尾の豆単

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11月15日の英語教育史学会月例研究会で欧文社(旺文社)に関連した発表をした。
その折に、「この中で『赤尾の豆単』を使ったことのある人は手を挙げてください」とお願いしたところ、40代以上の方の大半がサッと手を挙げられた。

そう、僕も1971(昭和46)年の高専入学とともに、この「赤尾の豆単」を購入した。
当時の僕は、いつも学生服の右ポケットに「赤尾の豆単」、左に「毛沢東語録」を入れていた。
どちらも装丁は赤だった。
(*当時は中国の文化大革命の真っ最中で、日本でも「毛沢東語録」が流行っていた。造反有理!)

僕が愛用した「豆単」は、その他の参考書、教科書などとともに、すべて大検を受ける友人にあげてしまった。
だから、英語教育史を専攻して1970年代の教材を調べるにも、自分が使ったものは1冊もない。

そこで、オークション経由で1971年発行の「豆単」(6訂版)を購入した。
うれしい再会だった。

赤尾好夫の「はしがき」にはこう書かれている。

「本書は昭和17年初版発行以来じつに30年間、学徒の圧倒的支持を受けて文字どおりベストセラーとして洛陽の紙価を高め、かつて書店の全国連合会主催の読者投票による全国良書コンクールで第1位に入賞した。また、新聞・雑誌などにロングセラーのトップ書としていくたびか紹介され、すでに770万部にのぼる諸君に愛読された。」

まさに、怪物のようなベストセラーなのだ。

まずポケットにすっぽり入るサイズがいい。
だから、いつでもどこでも辞書代わりに引けた。

また、ソーンダイクの頻度調査を活かし、さらにこの1971年版ではコンピュータ分析により入試出題頻度が示されている。まさに、「豆単」全盛期の作品だ。

ところが、このころから画期的な単語集が「豆単」を脅かすようになる。
そう、森一郎の『試験に出る英単語』(青春出版社、初版は1967年)だ。
関西では「シケ単」、関東では「でる単」と呼ばれた。

「豆単」のようなABC順の配列ではなく、大学入試に出る単語から順に並べている。1語1訳主義で、試験に出ない訳は載せていない。こうした徹底した効率主義で人気を博した。
もちろん、僕も使った。刺身のつまのように付いている語源の記述が好きだった。

ところで、僕が入手した1971年版の「豆単」を読むと、冒頭のあたりにあったはずのabdomen(腹部)がない。おかしい。

と思って奥付をよく見たら、1971(昭和46)年12月1日の発行(6訂版)。
僕が入学したのは同年の4月だから、そのとき買ったのはこの直前の5訂版だったのだ!

ああ、かくして古書探しの旅はつづく。

だれか、止めて!